2024J1注目選手① 森田晃樹
こちらのタイトルでは、J1リーグを戦う20チームの選手で、特に気になったり注目したいと思ったりした選手をピックアップして紹介したいと思います。第一回目は今季久しぶりにJ1の舞台に帰ってきた東京ヴェルディのキャプテン、森田晃樹。
コレクティブな良チーム、東京ヴェルディ
私はサンフレッチェ広島のファンをしている関係上J1ばかり観戦してしまうので、森田はもちろんのことヴェルディのサッカーについても全くの無知でした。そのため、開幕戦のマリノスとのゲームを観て驚きました。
442の3ラインを中心にコレクティブな守備を見せ、J1チーム相手にも怖がらずにしっかりとラインを上げる。そして、収まりの良い2トップに主に斜めに中長距離のボールを入れる得意な形を押し出しながらボールを前に進め、しかし蹴ることだけに拘らず個々がボールを大事にすることもできる。結果が伴ってきませんが、開幕3試合はここ2年上位を争うJ1常連チームが相手でしたし仕方ない側面もあると思います。2トップの代えが利きそうになく後半時間が深まるにつれて攻守ともにパワーが落ちてきて押しきられるというところを何とか解決していければ、残留どころか上位も狙えるポテンシャルがあると思います。
442でありつつ2トップはかなり前がかりに守備を行う傾向があり、サイドの選手も中に絞る形は保持非保持ともにあまり取りません。となると、非保持時には広い範囲をカバーする必要があり、保持に転じるとその広い範囲でボールに関わり前線に張る2トップと接続する必要がある、ボランチの選手には負担の大きなタスクが与えられることとなります。
ヴェルディを支えるボランチコンビ
そんなヴェルディのボランチを担うのは、森田晃樹と見木友哉のコンビ。まずは見木に少し触れましょうか。見木は本来は442のボランチよりは前のポジションを本職とするのかもしれません。狭いところでもボールをキープでき、ボールを運ぶスキルもあり決定的な仕事が出来そうな技術を有していることは伝わります。そして移籍初年度ながら既にキッカーを務め、特にCKでは良いボールを供給しています。4試合で既に2発直接FKを沈めた山田楓喜の左足と見木の右足、得点力が相対的な課題となりそうなヴェルディにこの2つの武器があることはこれから活きてくるのではないでしょうか。
想像よりはボールを奪うスキルもあり、十分にオールマイティで能力も高い見木ですが、非保持ではやや不安なところを見せているほか、少々リスキーな選択をすることもありドイスボランチの一角としては危なっかしさが拭いきれません。それをカバーしつつ独自の持ち味も出しているのが、相棒でキャプテンの森田晃樹です。
森田の守備は気が利くなというのがまず大きな印象です。自分と反対側のサイドまで勇気を持って出ていくことができ、しっかりと周りを見て常に警戒しながらプレーしているというのが伺えます。しかも無謀だと思えるような飛び出し方突っ込み方もしないですし、かわされてピンチ!という場面もまだないように感じます。周囲をよく見て考えて判断できているのでしょうね。
そういった認知や判断を中心とする部分のみならず、森田は球際のところも非常に強い。相手に体を当て、しっかりとボールを奪ったりフィフティのボールを自分のものにしたりできます。浦和レッズ戦ではフィジカルに優れた伊藤敦樹がボールを持ちだすところで複数回奪い取っています。森田が特別にフィジカル的な特長を有しているようには見えないので、体の当て方や守備者として仕掛けるタイミングの取り方や駆け引きが上手いのでしょう。
非保持で力を発揮できるファイタータイプのボランチなのかと思いきや、森田の良さはむしろ保持時に発揮されると言ってもよいでしょう。相手が近くにいても落ち着いてボールを触れ、推進力もあります。アルビレックス新潟戦だったかと思いますが、相手をかわしながら繊細なボールタッチでボックス近くまで運び味方の決定機を演出したシーンがありましたね。ああいうこともできる選手が非保持でも隙を見せないというのは、J1ではなかなかないオールマイティさだと思います。
2トップを走らせボールを入れるというヴェルディのスタイルに忠実に、長いボールを出すこともできますが、状況に応じて相手を引きつけながらショートパスを選択しチームを落ち着かせることもできます。さらに気持ちを押し出しながら戦うこともできる選手のようですし、どんなチームにも欲しい貴重な選手だなと本当に思います。
ヴェルディを前に進めるために
上でも少し触れましたが、ヴェルディの弱点は大きく3つかなと思います。
1つ目は2トップの代えの利かなさ。かなり彼らに負担をかける戦い方ですし、当然ですが消耗も早くなります。交代で入る選手は正直染野と木村のコンビに勝る部分を見つけることが難しいですし、染野を引っ張ったとしても終盤のプレーの質はかなり落ちます。これは2トップの能力の問題というよりは、サッカーというスポーツの原理的にどうしようもないことなので交代という方法で乗り越えるしかないと思います。それかやり方を変えるか。
2つ目は1つ目とも関連しますが、一度押し込まれた時の打開のできなさ。我らがサンフレッチェにもドウグラスヴィエイラというポストプレイヤーがいて、彼を使うことで強引に前進も可能なのですが、あのタイプは極端に押し込まれると途端に打開への貢献度が落ちます。個人のスピードや突破力はないですし、当然押し込まれれば守備への負担の大きさも変わり保持に転じた際に必要な余力を残した上で適切な場所にいるというのはかなり難しいことになります。
ヴェルディは上手くボールを逃がしながら、良い角度良いタイミングを見つけて早めに前にボールを流すことで2トップのスキルを活かしながらチームとして前進します。押し込まれた状態から苦し紛れにボールを放っても、万全の状態なら染野も木村もある程度は戦えるでしょうがそこから個人で打開するほどのスキルは持ちませんし、システム的に2トップと他の選手との距離も長く、なかなかチームとして押し返すには至りません。
そんなヴェルディの課題は、終盤に3試合連続で失点するという最悪の形で露呈し、逆に終盤に取り返した新潟戦を含め未だ勝ち星を掴めていないというのが現状です。が、こうした課題をボランチの質によって乗り越えるということも可能だと思います。ボールを奪ったら時間を作り、2トップに入ればしっかりと近くでボールに絡みそこでも時間を作る。それを終盤だけでなく試合の序盤から、ボランチを中心にボールを前進させる機会を増やすことで、2トップの消耗を軽減する。そうしたことも、森田というスーパーなボランチと見木という魅力あふれるゲームメイカーのコンビはやってくれる可能性はあるのではないでしょうか。
あとは、出ている選手が変わっても同じようにコレクティブさを保てるか。2トップが交代した後はもちろんのこと、昨季の主力選手が出られずに個人としての能力不足も露呈した感のあるSBのところ。そうしたことにも、キャプテンとして、ボランチとして、森田は寄与できると思いますし、同時に寄与していかなければならないと思います。
ヴェルディはこれから中期的にJ1の上位クラスを狙っていけるチームだと思いますが、現実的にまず大事になってくるのは、今季残留することです。そうすることで、主力にレンタル選手が多いという持続的には見えないチーム構成も解決される可能性というのは高くなります。より短期的には早く初勝利を挙げること。1つ勝つのとそうでないのとは大きな差があると思います。
正直なところ、大きな困難が伴うと思います。しかし、熱いキャプテンとしての顔も持つ森田を中心に、ヴェルディは壁を乗り越え目標を達成してくれるはず。私は他チームのファンですが、そう思っています。
(サンフレとの試合以外では)今後もヴェルディと森田を応援します!