2024サンフレッチェ広島全選手レビュー➀ GK&CB
終盤にかけて尻すぼみになり最終節で大敗北を喫して優勝を逃したチームのレビューを書いてもですね、悪いことばかりになっちゃいそうなんですよ。2位なのに。
だから、選手個人がどうだったか、ということを3回に分けて書こうと思います。
メインポジション別で3つに分けていて、当然分け方は主観に基づきますのでご了承ください。
また、筆者はリーグ戦全試合を観戦し、数試合をエディオンピースウイング広島で生観戦、カップ戦も半分以上は観ているものの抜けている試合があり、キャンプや普段のトレーニング、トレマ等は確認しておりません。
という人が記しているレビューだということを前提にお読みください。
GK
大迫敬介
1番を背負いベストイレブン!ということでもう一段階上がったシーズンに思えて、実際それは間違いではないとは思うのですが、昨季1年間を通した成長幅には劣っているなというのが正直なところ。昨季の時点で既にJ1トップクラスのGKにはなれていたところに、今季優勝を争った他チームに比べてGKとして一段と貢献したかと言われると、そんなことはないでしょう。
セービングも距離を詰めてのブロックもクロス対応もキックも高水準で揃っているだけに、まだまだ怪しい飛び出しの判断や時折見せる低クオリティのキックが目についてしまい、逆にここがハンパない!という明確な武器もそんなにないのかなあと思ってしまいます。クロスから近距離のシューターに打たれて失点というのは、セットプレー含め今季多かったように思えましたが、より止める可能性を広げることはできるのかな、と。ボールから最後まで目を離さない、という(西川周作も言っている)重要なところとか、適切な距離を取ることとか。
正直、粗探しをしてしまっていますね。でも、チームも3年連続で上位、個人としてもベストイレブンを受賞となると、J1で目指すべきは名実ともにナンバーワンのGKになることくらいでしょう。いつだったか忘れましたが、代表に行った際に「セービングは通用する」的な発言をしていて、いやキックとか飛び出しとかそっちの方が武器じゃないのかよ!と当時思ったのですが、今季を見る限りその分析はあながち間違いではなかったということですね。一森や小島のようなビルドアップの特殊技能が今から身につくとはなかなか考えにくいので、その辺も含めてより高水準になるか、何でも止めるGKになるか。
代表、海外クラブ、大迫がどこを目指してどうなっていきたいかはあまりわかりませんが、そのいずれにもサンフレで最も近い選手でしょうから、それを勘案して今季はやや厳しめにレビューすべきシーズンだったかなと。
田中雄大
ACL2だったかと思いますが、プレー時間を与えられており、セカンドという立ち位置は川浪が絶対的だということを考えても、「ネクスト大迫」をチームが考えようとしていることがわかります。
何かが極端に苦手ということはなさそうで、それこそリーグ戦を任せても他チームのGKと比べて遜色ないレベルにあるのでは?とも思ってしまいます。しかし特別な武器はなさそうで、来季からはサイズに恵まれた若いGKがやってきますので、そことの競争でどうなっていくかは要注目。
川浪吾郎
過去2年と特に変わりませんが、今季もセカンドGKとしてとても貴重な役割を果たしてくれましたね。田中に加え、今季は薄井、来季はヒル選手、そして何と言っても大迫と、自信より若いGKばかりの環境で、普段からポジティブな影響を及ぼしていることは想像に難くありません。
キャリアが終盤に差し掛かる中で、どれくらいサンフレに身をささげてくれるかわかりませんが、あの頼りなかった大迫がJ1でトップを争うスーパーな選手に成長したことにも、大きく影響してくれていると思います。2人のチームリーダーや野津田がチームを離れ、塩谷や佐々木というリーダーも情熱を言葉で示すというタイプではないので、来季以降川浪が果たすべき役割はさらに大きくなりそうです。
薄井覇斗
トレーニングを考えたいわゆる「数合わせ」的にレンタルで確保された薄井ですが、J1という本人にも未知の領域で、同い年の大迫が絶対的な存在としてゴールを守る、非常に良い環境だったのではないかと思います。おそらくヒル選手の加入に伴った形ですが、来季チームを離れることが決定しています。ポジションを考えてもまだまだ先は長いので、また何らかの形でゴールを守る薄井を見たいですね。
CB
山﨑大地
ルーキーイヤーの昨シーズンに頭角を現しさあ今季勝負!というところで、手術によりシーズンアウトとなってしまいましたね。
3バック中央を長く務める荒木が珍しく故障で中期的に離脱したためその穴を中野が埋めた今シーズン、そういった事情込みで終盤は佐々木も塩谷も疲労の色を隠せず、失速の一つの要因ともなってしまったことも考えると、いてくれたら…という思いは隠せません。関係あるかはわかりませんが新井も来て、荒木塩谷を欠いても中央中野に右新井というオプションも誕生し、序列が低下したという見方もできます。
実際、来季の頭では、中央は荒木→中野→山﨑ということになるでしょう。しかし中野はストッパーの方がより持ち味を発揮できると思いますし、新井は対人守備で中野や山﨑には劣ります。何よりキックという武器は他の最終ラインの選手と比べてもトップレベル。
ボールを運ぶということをしっかりこなせるようになれば、来季以降荒木や中野を差し置いて山﨑が起用されても、大きな驚きはありません。来季以降に期待!
荒木隼人
相手のCFを抑えるというところは本当にリーグトップなので、大迫と同様贅沢にプラスアルファを求めたい。神戸はアレですが、シーズンで完敗を喫した鹿島やガンバは最前線の選手が流動的に動き、そこへの対応を苦手とする荒木も苦戦を強いられました。非保持ではそこですね。コミュニケーションを含めてになりますが。
保持は何度も言う通り運び出しのところ。サンフレは前と後ろが分断傾向にあります。特にシーズン序盤は満田や川村といったボランチの選手がバックラインに吸収される形でボールを回すシーンも多く、川辺やアルスランもそういったプレーを見せます。配球に荒木がもっと関与できれば、攻撃をスムーズにというところだけでなく、ネガトラのリスク低減にも寄与するでしょう。
中野は荒木の弱点をカバーできるため、中野に取って代わられる可能性も十分にあるでしょう。持ち味を磨きつつ、さらに全方位的にプレーの質を向上させることを期待します。
後はチームリーダーとしても。年齢のみならず在籍年数的にもかなり古参になりつつあるので、他の選手を引っ張る役割もいっそう大きなものを求めたいですね。
松本大弥
もはやリベロやってるイメージしかないのでこちらで書かせてもらいます。
ボールを動かせるリベロとして期待感もあった彼ですが、中野のリベロ起用により正直完全上位互換が誕生、という感じに近いですすかね。元々ボランチな以上、相手とガツンとぶつかるところで後手を踏むのは仕方ありません。
それこそミシャ札幌とかで見てみたかった選手ですし、人が抜けたボランチにもすぐさま補強が行われる現状、レンタルを含めチームを変えることでチャンスを得ることはまずい選択ではないと思いますが、どうなるでしょうか。
中野就斗
2人いる今季のMVPの一人。運べるフリーランできる、縦に仕掛ける相手についていける、シュートできるクロスできる、空中戦できる。オールラウンドなバックラインプレイヤーは、ルーキーイヤーにWBをこなし持ち味が最大限に発揮できていなかったものの、今季CBとしてのプレータイムを増やして完全に覚醒しましたね。
あれだけ固執した中野のWB起用にもかかわらず、荒木負傷時にはスライドさせずに中野を中央に持ってくるあたり、「中野の持ち味はわかってるんだけど敢えてアウトサイドで使ってるんだよ」と言わんばかりのスキッベ采配。その中央器用では荒木には無い機動力を見せつけ、オプションになるのでは?と思わせるほどのポテンシャルを発揮しました。得点にもよく絡み、WBの選手として突破力に欠けることは事実なのですが、リーグ最多得点の一要因となったことも間違いないでしょう。
WBとしてのプレーでは縦クロスではない中に入ってのプレーの質、CBとしては後ろを向いた相手に対する対応の厳しさといったところは求めたいですが、ステップアップも現実的と思えるほどに素晴らしい選手だと今季1年で示した中野は、来季より一層の活躍とレベルアップを果たしてくれると思います。
佐々木翔
大迫と同じで、「あ、今季がベストイレブンなんだ」という感じですね。2024より2023、2023より2022という存在感だったと思います。しかしそれでもリーグ屈指の存在感なのは事実で、攻守ともに佐々木抜きのチームはなかなか想像できない。森島が抜けて以降ビルドアップの明確な出口の設定がどんどんサイドに追いやられているサンフレでは本当に貴重な選手です。
左利きのイヨハにも、(実質)左利きのCBとしてボールを逃がす極意みたいなものを教えてあげてほしい。そして青山や柏が抜け、本当に数少ない優勝を知るメンバーになりましたので、青山や柏が達成できなかった「もう一度」を達成したいですね。
とにかく、ここ数年圧倒的な存在感の佐々木に一つ個人タイトルがもたらされて本当に良かったと思います。
イヨハ理ヘンリー
満を持しての復帰となった左利きは、期待通り佐々木の代役として左CBを務めましたが、まだまだポテンシャル発揮までは至りませんでしたね。
右からボールを受け取り、体がどうしてもサイドに向くので、ボールを出す先が同サイドWBしかなくなる。「正対」とよく言いますが、相手に対して真っすぐボールを持たなければ、相手はプレスの方向づけが非常に楽になります。佐々木や冨安のように両足扱うことができればそれも苦ではないのですが、とはいえ逆足でCBをやるよりは、順足でやる方がやりやすいはず。ボランチやシャドーが効果的にボールを受けられない現状、左で詰まると確実に狙われますので、ミスを恐れずボールを持って相手に向かったプレーを心がけてほしいですね。
ポジションは違えど同じような課題を有していた東は化けましたので、見習ってやってみても面白いかもしれません。
塩谷司
中野のCB起用に目途が立ったどころか塩谷をもしのぐパフォーマンスを見せどうなるかと思ったら、そうなるとボランチで起用される鉄人。中央でどっしり構えて攻守ともに振る舞える選手が本当に誰もいないサンフレで、貴重なそういうタイプのボランチとしても活躍してくれました。
スピードのところやアジリティには徐々に不安も見せ始め、J1にはそんなに多くはないのですがシンプルなスピード勝負のういんがーには不利を取ることも。ですが体の強さやパスセンスは中野を凌ぎ、全員が万全という状態で来季のレギュラーがどうなるかわかりませんね。
そして何と言ってもチーム最年長。年間通して90分ずっと、というのは難しいかもしれませんが、ピッチ内外でチームリーダーとしてより一層奮起することを期待します。
まとめ:GKとCBに求めること
GKは、サンフレだから特別何かが求められるということはないと思います。ハイライン気味ですが、J1はハイプレス~ミドルプレスがどこも標準装備になってきて、ラインを下げて耐え凌ぐほかないというチームはもはや皆無。しかしチーム設計上被カウンターは必然的に増えているのが現状ですので、数的不利の際に焦らないことと、保持にしっかり貢献できることといった部分はマストでしょう。
CBは色々あります。まずはシュートブロックのところで安易に滑らず壁を最大化すること。塩谷や佐々木は特に上手ですが、根性見せてスライディングしても足の間を抜ければGKにとって非常に厳しいボールになります。その辺をGKとのコミュニケーション含め、担当するコースを分担して守ること。
そして何と言ってもボールの運び出し。プレミアリーグを観ていると刺激的だなと思うのですが、その理由のうち大きなところはバックラインの選手の振る舞い方だと思います。早く前線にボールを送ればよいというわけではなく、来ないのならばどこまでも運び、次にボールを受け取る選手が得になるように運び離す、よりリアクション的な保持の考え方は重要。この点は佐々木はリーグトップレベルな一方、他の選手には不足が見られます。荒木の特性もあって免除されている中央の選手にもここができれば、チームの保持はさらに一つ上のレベルに行けるのではないかと思います。
敗戦した試合の過半数で昨季一度もなかった3失点を喫し、失点数も他の上位のチームに比べるとかさみ、昨季一昨季に比べて守備のところには物足りなさも残りました。新たな選手や復帰陣も加わる来季、さらなるレベルアップが期待されます!
次回はボランチとWBメインの選手!途中退団&途中加入選手にももちろん触れます。