大和ハウス工業
~内部で起きた巨額横領と裏金受領事件~
住宅事業を中心に、マンション、アパート、リゾートホテル、ビジネスホテル、ゴルフ場など幅広く展開する大手住宅メーカー「大和ハウス工業」は、連結で4万5千人の従業員数と4兆円超の売上高を誇る東証一部上場企業。かつて上場していた「コスモスイニシア」(旧・リクルートコスモス)や、準大手ゼネコンの「フジタ」なども同社の子会社のひとつだ。
規模の大きい企業であるがゆえに、不祥事も度々報道されている。古くは、2011年に発覚した「サービス残業による賃金未払い問題」だ。これは、同社本社とグループ会社15社において、2009年~2010年の間に32億円にものぼる残業代未払いがあったことで、大阪・天満労働基準監督署の是正勧告を
受けたものである。勧告を受けて同社が調査したところ、当時の従業員約2万5千人の約4割に当たる9387人の残業代が未払いであることが判明したというものであった。
最近では、2019年の「中国関連会社における巨額横領事件」が挙げられる。
これは、同社の中国合弁会社である「大連大和中盛房地産」(遼寧省大連市)において、合弁相手企業から派遣された3名の社員(うち2名は取締役)が不正に会社資金を引き出し、発覚時点において総額14億1,500万元(約234億8,800万円)もの金員が横領されていたという事件である。
3人のうちの出納担当者が、会社書類を無断で持ち出そうとしたのを他の従業員が気づき、預金残高と帳簿に差異があることから調査したところ判明したものだ。その後の更なる調査によって、発覚時からさかのぼること4年前より、ネットバンキングを通じて不正に会社資金が引き出されていたことが明らかになった。
取締役2人は合弁相手企業の元董事長(日本における代表取締役にあたる)とその息子で、出納担当者は元董事長の姪だった。合弁企業の業務は彼ら派遣者にほぼ依存していたことから、発覚が遅れたようだ。ただ、外部への送金は2015年から約5000万元(約8億2500万円)ずつ20回以上に分けておこなわれており、中国の会計監査では銀行口座と突合するため、そのような原始的手法が発覚しないとは考えにくい。ということは、少なくとも数年間にわたって会計監査が機能していなかった可能性も考えられる。ちなみに、不正をはたらいた3名は業務上横領などの疑いで刑事告訴されている。
また同年発覚した事件で、上記横領事件ほど巨額ではないが、同社の組織的な問題点が露呈した事案があった。その件は私も解決サポートに動いた経緯があるため、この機に詳説していきたい。
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