【東京アングラ・スペシャル】「ペニバン・フィロソフィー」前編──「現代の若者の性」取材班
僕の取材が甘かったようだ。
現代の若者の性のカオス(混沌)は、僕の想像をはるかに超えているのかもしれない。
今回は、東京アングラ・スペシャルと題した、「現代の若者の性」取材班のレポートをお届けする。
◆新橋のアイリッシュパブにて
数日前の夜、友人と2人、新橋で飲んだ。
「まん防」が明けたので、馴染みの店を応援しようという趣旨である。
1軒目は、蕎麦と小料理の店。店内の雰囲気と料理が小気味いい。店主は元編集プロダクションの社長さんで、僕が昔、よくお世話になった人だ。
2軒目は、行き始めて10年ほどになるアイリッシュパブ。カウンターだけの小さな店で、元AV男優のマスターがおもしろい。
アイリッシュパブに着いたのは、夜9時頃である。L字型のカウンターの手前には30歳前後の女性、中央には若いカップルがいる。3人とも見知らぬ顔だった。
僕らは、マスターに無沙汰を詫びて、窓を背にした奥へと陣取る。店に来るのは1年ぶり。なかなか新橋で飲む機会がなかったのである。
マスターと店を実際に見て、近況が聞ければ、もう目的は果たしている。
男2人で話すのも飽いたので、まずは30歳前後の女性に話しかける。ボーイッシュな格好をした、二階堂ふみさん似の女性である。
そのうち、若いカップルも巻き込んで、「若い女性がセクシーと思う40代以上の男性俳優は誰か」という話になった。西島秀俊、竹野内豊、ディーン藤岡、浅野忠信、井浦新など、様々な名前が出て、それぞれ好みが違い、盛り上がった。
僕が推す渡部篤郎は「おじさん過ぎる」と支持が集まらず、年齢差を感じた。マスターが推す真田広之については、女性2人とも「むしろ苦手」と全否定で、おもしろかった。
途中、30歳前後の二階堂ふみさん似の女性は、駆け出しのカメラマンであることが判明した。今日の僕の連れは、ベテランのカメラマン。報道写真からスタートし、今は広告やグラビア、美術写真など多方面で活躍している。
「それはそれは……」
という話になり、彼女が彼の隣に。
連れは、多分このまま、写真の話にかこつけて口説くだろう。
それもよい。
◆女子大生 スズちゃん
僕は、彼らを邪魔しないように、若いカップルの近くに移動して、女性に話しかけた。
最初は、なるべく邪魔をしないようにしていたのだが、先ほどの「40代以上の男性俳優談義」で、「この子、話し合う!」と思ったのである。
彼女は、吉本興業のお笑いコンビ「スパイク」の小川暖奈さんに少し似ている。小川さんは、吉本坂48の一員でもあった美人芸人である。
彼女は、まじめそうな彼氏と2人で静かに飲んでいた時は分からなかったのだが、みんなで盛り上がってみると、すごくノリが良く、しかも、かなり「おきゃんな子」だった。
ギャルっぽい感じもするが、それよりスナック寄りである。
そして、すごく「アングラ臭」がするのである。
店に入った時は、ちゃんと座って、姿勢よく飲んでいたのに、いつの間にか背もたれに肩をかけ、足を組み、「ギャハハハ。そうっすよね! マジで!」などと、昔の「ヤン女」を彷彿とさせる感じになった。さっきまでと全然ちゃうやんw
ただし、これだけなら、ただの「おきゃんなギャル」。楽しくはあるが、驚きはない。
僕の古里の山の方には、まだ大量に生息する生き物である。
彼女は、僕の想像のはるか斜め上を行っていたのである。名前は、仮にスズちゃんとしよう。
20歳の女子大生とのことだった。
◆若い2人の関係性
スズちゃんと連れの彼氏は中学・高校の同級生で、全くの友達だそうだ。彼氏ではなく、そういう相手でもないらしい。確かに、さっきまではカップルに見えたが、近くで2人のやり取りをみていると、全くそういうのではなさそうである。
彼(ユウキ君)は、本当にまじめそうな塩顔男子。スズちゃんに童貞だとばらされていた。スズちゃんは彼にパンチしたり、やりたい放題である。彼は、スズちゃんに少し気を遣っている。
驚いたのは、「バーに行ってみたかったから、時給を払って彼に一緒に来てもらってる」と聞いた時である。
は?
時給を払って来てもらっている……? (@_@)
元同級生の友達なのに? そんなに仲が良さそうなのに? 意味わからん。
人間関係にもpayが発生するという、ちょっと現代風の友人関係だと思った。無料だと、「誘えない」「落ち着かない」ということだろうか。
スズちゃんは、大学生になってからずっとコロナ禍で友達ができないとは言っていた。コロナ禍に入ってから新学生、新社会人になった人達は本当に可哀そうである。今日はそのストレス発散で、彼を誘って夜遊びに──ということだったそうだ。
このときは「若い子の人間関係は訳わからん」と、少し首を傾げる程度だったが、ここからのスズちゃんがすごかった。
「突っ込まれたちんこの数より、突っ込んだちんこの数のほうが多い」
僕が思わずメモを取った、スズちゃんの名言である。次回の後編は、そこにたどり着くまでのやり取りを紹介しよう。
新橋の夜。続きます。