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PPAで識別された無形資産の事例
PPA(Purchase Price Allocation)において、識別される無形資産についての事例調査を行いましたので、その結果を記載します。
■前提
会計上、取得価額から純資産額を差し引いた差額は一般に(広義)のれんとして識別されることとなります。
PPAは、取得企業が被取得企業を買収し、連結財務諸表に取り込む際に(広義)のれんの全部又は一部を無形資産に振り替えるプロセス等をPPAといいます。
なお、この無形資産は被取得企業のBSには計上されておらず、次のような無形資産を新たに識別することとなります。
・顧客関連資産
・商標権
・技術資産
・受注残
・その他
これら新たに識別する無形資産はM&Aの際に、被取得企業を買収した目的を財務諸表上に表現することとなり、例えば被取得企業のブランド取得が主な目的であれば商標権が計上されることになりますし、技術力ということであれば技術資産が計上されることになります。また、主要な目的ではなくとも被取得企業のクライアントの顧客を入手することの金額的影響が大きいものであれば顧客関連資産が認識されることとなります。
■事例の母集団
本題の事例ですが、こちらは2024年度の上場企業の有価証券報告書より、以下の条件でデータ取得しています。また、負のれんが発生している案件については除外し、結果として119件を抽出しています。
・決算日:2023/4/1以降2024/3/31以前
・企業結合日:2023/4/1以降2024/3/31以前
・抽出範囲:「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項 企業結合等関係」
・抽出キーワード:「無形」
・上記に該当した取得のうち、無形資産の配分が完了していないものを除く
■識別された資産および分配率
識別された資産およびその識別率、平均分配率は下表の通りとなります。
また、それぞれの定義は次の通り。
識別率:119件の事例のうち何%の事例で識別されたかを示す
平均分配率:(広義)のれんのうち何%の金額が各資産に分配されたかを示す
ポイントとしては次の通りと考えています。
当然ながら個々の案件やインダストリーでベンチマークは異なるので、あくまで平均です。
・顧客関連資産については68.9%の案件で識別されていること。また、(広義)のれんの平均して36.3%が分配されていること。
・次いで商標権、技術資産が15%の案件で識別されていること。
・一部の案件では、のれんが0になるまで全て無形資産に配分されていることと、のれんは54%が平均して残っていること。
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■識別資産数
Transaction毎に識別された無形資産の数(のれん除く)は次の通りです。
基本的には1件、多くて2件というのが現状のようです。
実務上、多期間超過収益法(MEEM)はできる限り複数の無形資産の算定に適用しないようにするため、MEEMで算定した顧客関連資産とロイヤルティ免除法で算定した商標権あるいは技術資産を識別するという状況が多いということなんだろうと考えられます。
個人的な実務経験からしても特に違和感ない結果でした。
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以上となります。
ベンチマーク分析をするなかで全体としてどうか気になりデータ取得したため記事にした次第です。
ブラックキャピタル
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