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穴から覗くメイドインアビス
「穴」には魔力とも思えるほど魅力を感じる事が多々あります。
穴といっても種類は様々です。底がはっきりとわかる穴。底が知れぬ穴。貫通している穴。これらには穴の大小に関わらず目も心も惹かれてします。どうもこれは人間の性のような気がします。
想像してみて下さい。四畳半の何もない部屋。目の前にある壁の直径1ミリの小さな穴。どうでしょう、「誰が開けた穴なのだろうか」「覗かれているのではないだろうか」「逆にこちらから覗いてみようか」「いや、覗いたら危ないかも」このように、きっと色んな考えがよぎることでしょう。
つまり「穴」とは未知であり空白なのです。人間の脳はこの空白をひどく嫌います。この空白をどうにか埋めるために、脳は考えるのです。穴の中から生まれ穴の中で死んで行く人間にとって、穴は切っても切れない何かで結ばれているようです。
だから、ドーナツもバウムクーヘンもイカリングもオニオンリングこんなに美味しいんでしょうね。
そんな今にも吸い込まれてしまそうなほどの、魅力に溢れた「穴」を題材にしたアニメ映画を観てきました。その映画は「メイドインアビス-深き魂の黎明-」2017年に放送されたアニメの続編として公開されました。この物語のあらすじは
舞台はアビスと呼ばれる数々のお宝や原生生物が眠る直径1000メートル、深さは誰も知らない未知の大穴。主人公の女の子リコはアビスに潜る伝説の探窟家である母を探すため、記憶喪失でありアビスの深層部から来たと思われるロボットのような体をした少年レグは、自分の記憶を取り戻すために、少年少女のアビスへの冒険が始まる。
といった具合にファンタジー色が前面にでた物語ではあります。しかし、この作品はただのファンタジーでは収まりきらないのです。アビスには「呪い」というものが存在し、それはアビス内を上昇すること(10メートルほどの上り坂など)で発動することから「上昇負荷」と呼ばれています。
アビスの底に近づけば近づくほど負荷は高くなり、最初は軽い目眩や吐き気だったのが、幻覚や幻聴、全身の穴からの流血など生きて帰って来れないような症状まで出てきます。
そして、リコの母がいるとされている深界7層での上層負荷は「確実な死」です。つまり、帰ることができないのです。今まで暮らしてきた街や、アビス内での出会い全てが今生の別れとなるのです。
まだ、幼い少年少女達が母のためや、止めることのできないアビスへの探究心のために別れるシーンはどこか切なく希望に満ち溢れており、涙腺を直に刺激されるようです。
さて、この映画ですが完全なアニメの続編として作られており、また今後続編も決定しているので、物語を理解するにはこの映画は絶対に観なければならないので、
「アニメの続編で小銭稼ぎをするようなマネは如何なものか」
と異論を唱える人もいるでしょう。しかし、作画やシナリオのクオリティはただでさえ高かったアニメを悠々と超え、映画館の大画面、大音量が最高に映える作品にまで昇華しています。
また、この話を映画で上映した理由としてあげられるのは、地上波に流すことができない内容だからとも考えられます。公開1週間前に15禁に引き上げられるほど度し難く罪深い内容となっています。しかし、この15禁とされてしまうような、暴力的な表現や底知れぬ悪意のようなものも全てアビスの中のただの営みや、アビスへの探究心に満ち溢れた愛でしかないのです。
是非機械があれば、こんな話を作れる作者の頭をのぞいてみたいものです。やはりアニメ史に残るような天才達はどこか異常な性癖を持っているのが共通点に思えます。宮崎駿然り、新海誠然り、世界を変えるのが大犯罪者と紙一重の革命家であるように、アニメの世界では大変態にしかたどり着けない域があるのでしょう。この法則が確かならば私は凡作しか作れなさそうです。残念この上ない。