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【MAD】 プロミネンスの再燃 【あくたの死に際】後書き


ニコニコ動画のMADイベント「MADMAX2024」参加作品について書いていきます。


1:MADMAX参加した理由と原作について

AniPAFEとMAXはどちらかにすべき

 前回MADMAXに参加した2022年に強く身に染みたことです。

 時間の融通が利く状態ならまだしも、本業の仕事をしながらは相当しんどい。だから次にMAXに出る時はそれに絞って、参加時点である程度完成の目途が立ってる状態でボタンを押したい。

 そう思っていたはずなのに、なんで今年参加??


 遡ること7月22日。MADMAX締め切り1週間前に有志の方々からいただいた寄せ書きへのお礼メッセージを送っていたところ、こんなお言葉が返ってきました。

いつかMADMAXで戦えたら面白いだろうな〜なんてこっそり考えてました。

 おいおいおい!!あんたMADMAX出るとしたら今年だけとか言うてたやんけ!(当時)
だったら今年出るしかねぇじゃねぇか!!!

 そっから1週間でVコンを埋め切れたら参加ボタン押す!と決めて一気に埋め切りました。

 その本人の参加ボタン後押しの一因にもなったと思うので、そういう意味でも参加してよかったかなと。

 結果として戦えませんでしたが、Visitorの方々が考える対戦カードの面白さは全面的に信頼しています(実際今年も絶妙だった)し、1敗した身でセミファイナル前座という良い位置に置いていただけて感謝しています。

MAXで戦える原作か?

 今回作ったのは、あくたの死に際というマンガワン(裏サンデー)連載の作品です。

 1話のころから惹かれてたんですが、5話くらいで完全にのめり込み、6話(芥川龍之介賞回)読んだ時にMAD作ろう!と思っていました。

 創作系のお話ということもあり、MAD作者が投票者なことが多いMADMAXにおいては共感を得やすいジャンルです。
 後はこちらの調理次第で勝てるとこまで持っていけるかなと思いました。

2:全体の演出

 今回のキーポイントは、黒田(主人公)が小説に本気で向き合うようになる変化をどう見せるかでした。
 大きな演出は以下の2点

・モーションの有無
・コンポの使い分け

主には止まっていた時間が動き出すような疾走感と自分を外の世界にさらけ出す変化を狙いました。

モーションマシマシ

 サビの直前まで黒田のキャラモーションを無くして小説から現実に逃げてずっと止まっている様子を、サビではかなり多めにモーションをさせて一気に動き出した様子を表現しようとしました。

 そのため、Aメロで過去の小説を本気で書いた1カットと内面を吐き出すカットとだけふんわりモーションをさせています。

ちょっとふんわり動かし過ぎてわかりづらくなった…
コンポ分けとモーションの両方が出てくるキーカット

 また、対比として出てくる黄泉野(主人公の後輩)はできるだけキャラモーションさせて、上記の意図が伝わるように意識しました。

髪揺れ大きめなので、ここはわかりやすい

 ためていた分、サビの入りでは特に思いっきりモーションをさせました。

 ただ、そこまでの展開をキャラモーション無しに作っていくのがかなりツラかった。自分がいかに頼っているかを思い知らされました。

フォトリアルとセルルックと

今回は心情や決意に合わせて3段階でコンポを使い分けるよう意識しました。

 ・周りを気にし、合わせている状態:フォトリアル
 ・小説に本気で取り組む:セルルック
 ・自分の世界を表現する者(小説家):自分の色が世界に侵食

フォトリアルのカットではアセットの背景を使ってCyclesでレンダリング→キャラ処理のハイライトとシャドウはブラーをかけて人体の丸みを少しでも持たせるように意識しました。

Cycles久々過ぎてバカみたいに時間かかった…
フォトリアルな川
こっから変わりますよの分かりやすいカット

サビの入りからのカットではセルルックの背景にキャラ処理ではべた塗ハイライト&シャドウ、ハーフトーンでルックの違いを強調するようにしました。

ハーフトーンのフリッカー対処ってみんなどうしてるの??

黄泉野が登場するカットは一貫して背景も含めて一定の色でコンポしています。さすがに後処理だけでは無理なので、素材を色塗りしたのですが、なかなかに時間かかりました。。。

表現者の世界へのゲート
最後に黒田も表現者の世界へ

3:構成と演出

 基本的には原作のストーリーを中心に組んでいき、小説を本気で書くようになってからは真剣に取り組んでいる部分と心情の部分を整理してメッセージ性が少しでも届くように意識しました。

イントロ

 黒田が精神を病んでしまったところまでを描写。プラス今回の主題は小説ですよ、芥川賞が関係しますよという部分、なんで書くのやめたの?という情報を詰め込みました。

才能の壁で小説を辞めた(鉛筆の芯折る&埃)

芥川賞受賞作の表紙を使ってモーションさせて、最後にタイトル。イントロの掴みとして印象に残る映像が欲しかった。正直今作で作ってて一番楽しかったパートです。火花が入っていたから芥川賞作品と気付いたっていう声もあったので、一定狙ってた情報は伝わってたかなと。

表紙を見ながらイメージできる動きをとにかく書き出して流れとして繋がりそうなものを採用
仕事も順調
プライベートも順調(彼女いるよ)
でも小説には触れてない(後で登場するキャラをチラ見せして売れっ子小説家アピール)
お前にとって小説のない人生は順調ではない!!!
イントロの小ネタ

Aメロ

才能の壁を感じた後輩と再開。ここでは、黒田の性格と面白い小説が書ける条件が伝わるように作りました。

鏡に映ったらのっぺら棒(中身伴ってない)
これとか
これとかで視聴者に黒田と自分を重ねてダメージを負ってもらいたい
作者の顔が見えない作品はつまんない

笑顔で取り繕う奥にある作家の本性を引き出します。ここで、黒田の本性(嫉妬や怒りが原動力な作家)が垣間見えるという流れ。

少しずつ詰めていく
画面比率の差で詰め寄っている感を出す
このカットは全体を通しても重要なのでもう一度

後輩に焚き付けられたはいいけど、やっぱり周りが気になってしまう黒田の書いた小説はつまんないものになります。

身近な人に言われるとダメージ増す
周りに言われそうな言葉を想像して勝手に首を絞める
本気過ぎるの引くよ?という世間の目を感じるテキスト

Bメロ

この期に及んで取り繕う黒田に対して、黄泉野がさらに焚き付けます。真剣にやるの怖がって取り繕ってるほうがダセぇぞと。

 会社員のIDではその先には行けない。だったらそれを捨てて、身一つで飛び込んでいくしかない。

イントロでは緑ランプで通過

Vコン時点ではここにテキスト入れる予定でした。が、どう考えても尺的に収まらずにカット。

没テキスト①

ここのカットがあることで太宰の自殺した川というのがわかる人にはわかるような狙いだったんですが、結果としてよくわからん背景と化してしまったのは心残りです…

玉川上水にかかる万助橋っぽくモデリング

サビ

入水したまま感情のままに書き出す。上記したとおりここからはモーション全開でカット数も上げていきます。入水→水中→勢いで水が渦巻く→体の中から文字が溢れて外に飛び出るような流れをイメージしてます。

勢いで周りの水が渦巻いていく
入力していく文字が体から出てくる
後ろで入力した文字が鼻血になって出てくる(「やってみればいいのに」とかいうどっかで聞いたのに近いテキスト)
身体から全部絞り出した言葉たち

 全力でやり切った後に辿り着いた結論。本当は願望なのかしれない。その気持ちをそのままに小説家の道へ決意を固める。

自分が辞めた理由だった才能も
ほとんどなくても必死にやればなんとかなるかもしれない
死ぬ覚悟で挑む

アウトロ

 小説を書きあがっても売れるかどうかはまた別のお話。現実的な問題が突き付けられます。面白い+(身も蓋もないけど)知名度が必要。だったら知名度下駄を履かせてやろうじゃないか!で、日本一高い下駄とは?

出版する側も売れないやつにGOは出せない
新人賞大賞作という知名度を加える
この漫画読むまで芥川賞が新人賞って知りませんでしたよ私は…

ここを目指してやっていくぜ!的な決意表明で締め。

今までを振り返るようにキャラ処理を変化
イントロの折った鉛筆との対比、会社員から変化の対比

4:新しく試した技術的な部分

Line2Normalmap

 フォトリアルカットのいくつかはAIでノーマルマップ生成してリアルっぽいライティングを狙いました。ただ、ズレることも多く勝手に生成される部分のコントロールが難しかったので、全てのカットに採用できるほどではなかったです。

黒田くん女子高生みたいになっちゃった

Live2D揺れの自動生成

Live2D5.1から導入された機能で、デフォーマのサイズ等に応じて自動で揺れの動きを作ってくれる。パラメーター毎に設定もできるので多段揺れにも対応できる。多少の手直しは必要ですが、かなりの時短になりました。

縦横の揺れ幅、毛先だけ揺らす等の設定が一括でできる

3Dキャラモーション

手とか足とかのアップだけですが3Dキャラのアセットを使ってキャラモーションをしてみた。2Dキャラもですが、やはり人体の動きは実際に動いてみながら反動やフォロースルー等をしっかり意識するのが大事だと再実感しました。

ダンディーなオッサンを流用

髪のハイライト

 エンボスで浮かした色をしきい値やブラー、侵食などで絞って元絵に乗せます。モーションしていてもある程度はライン保ってくれます。

S_Embossの代用が効くかは不明

5:終わりに

 ギリギリなんとかという状態でしたが、作品投稿することができホッとすると同時に、対戦不成立だったのがこんなにも空しいのかと実感しました。みんなMADMAXは何としてでも落とすんじゃあないぞ!!!

 不戦勝ということで不完全燃焼感はあるので、もう1回くらいは出たいなという気持ちもありつつ、今度こそはちゃんと準備して出ようというのが現状です。ただ、やはり先の見込みがわからないのでもしかしたら数年後とかそういう話になるかもしれません。気長に待っていただければ。

 今年も面白い組み合わせから時間ギリギリの提出への対応までしていただいたぐんまさんをはじめとした主催のVisitorの皆様、ほぼ未提出なく作品作られた参加者や対戦不成立作までご視聴いただいた皆様本当にありがとうございました!!


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