2017年10月の記事一覧
皆方探偵事務所異聞 さよならの作法(完)
「こないだ三人でまたやったじゃん」
「なにが」
「タンテー」
パイプ椅子に腰かけた啓秀くんが、平板な口調で、タンテー、と言い、ああ、と僕は応える。身を起こした桂さんはまっすぐ前を向いたまま、反応をしない。それはもういつものことになってしまったので、僕はもう別に、何も感じない。
桂さんのお母さんと妹さんが来て、帰っていった。僕たちはあまり話をしなかった。僕が、これから先も桂さんと一緒にい
皆方探偵事務所異聞 さよならの作法(3)
唐突に、桂司郎は自分が幽霊になっていると気づく。
幽霊? たぶん。桂はこれまでオカルトじみたことをあまり信じてこなかったのだが(彼のまわりにオカルトがなかったということではない、オカルトに類することは彼の周囲では何度か起こったのだが、彼はそれをオカルトとしてほとんど知覚しなかったのだった)、少なくとも自分が、空間に浮かんだ状態で、自分の肉体を見下ろしているということは理解できた。彼の目の前に
皆方探偵事務所異聞 さよならの作法(2)
クトゥルフ神話TRPGシナリオ「Hand in Hand」(『バグ・シャースの侵蝕』収録)の作品根幹にかかわるネタバレを含みます。2を飛ばして1から3を読んでも話の脈絡としてはつながっています。
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南方睦実はぐらぐらと煮え立つような夕暮れを歩いている。恋人が入院している病院から、自宅へ帰るために、彼は駅に向かって歩いている。彼にとってはそれは何の意味も持
皆方探偵事務所異聞 さよならの作法(1)
深夜零時半に電話を取る。
朝起きる。「桂さん」声をかける。身を起こした恋人がぼんやりとラジオをつける。ラジオが朝のニュースを告げている。ラジオの色は赤い。深い赤を、甘い色だ、と思う。僕はそれを、ソニーくん、と呼ぶ。桂さんの親友の、ソニーくん、生まれ変わることができるなら僕はソニーくんになりたいと思う、でもできれば、自分のままでいたいと思う。
桂さんはソニーくんを耳に当てて、ぼんやりと