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Osteoarthritis in the hands of Michelangelo Buonarroti.
2月2日のこと
「ミケランジェロの手は関節炎だった」という小論が、 Journal of the Royal Society of Medicine オンライン版に掲載されていた。
遙か昔に授業で聞いたような気もするが・・・Davide Lazzeriさんをはじめとする、イタリアはローマの方々が報告している。
同じ国の人の研究だから、特ダネ㊙情報に違いない!と思って読んでみた。
絵画を用いた研究方法が興味深かったので、紹介します!
分析データに肖像画を用いています。
60-65歳の時に描かれた3枚の肖像画を専門家集団で分析。さらに、若い頃に描かれた肖像画と比較検討している。近代なら写真を使うんでしょうが、肖像画というところがナンだかロマンチック♡
その結果、60-65歳時の肖像画すべてに、左の指関節に関節炎の影響と思われる変形があることが判明したそうだ。
若かりし頃のミケランジェロの手指には、そういった徴候がないという。
手部の描かれた肖像
資料1 [from the Casa Buonarroti Museum, Florence, Italy]
資料2 [from the Casa Buonarroti Museum, Florence, Italy]
検討部位の拡大図
(真ん中は、メトロポリタン美術館収蔵の作品より拝借したらしい)
もとより、彫刻や絵画などの創作で手を酷使するミケランジェロが、関節の疾患で苦しんでいたことは甥っ子に宛てた手紙などで知られていた。
が、コレまでは「ミケランジェロは痛風だった」説が有力であったらしい。
そうだった、そうだった、私が若い頃に聞いた話はTHU-HU-だった!
しかし今回、肖像画を検討した Lazzeri氏らは、「痛風の所見である、手指の明らかな炎症や、皮下に形成される尿酸結晶の小さなしこり(結節) がみられない」ことを指摘する。
痛風の病理所見
そして研究班は、ミケランジェロの手指を変形性関節炎と診断した。
考察がまた斬新♡
ミケランジェロは、89歳の誕生日の3週間前に亡くなったらしい。
晩年は手紙が書けないほどの痛みに耐えつつ、死の6日前まで槌を打っていたと言われている。
Lazzeri氏らは、「ミケランジェロの関節炎は、ノミを握り槌で打つ活動によって進行したと考えられる。だがそのことで手の能力は保たれたともいえる」「変形性関節炎は、彼の晩年の不自由さを裏づけるに信憑性の高い説であり、最期まで創作活動を続けることで疾患に打ち勝ったことを物語る」と述べている。
ミケランジェロの名言に、「最大の危機は、目標が高すぎて失敗することではなく、低すぎる目標を達成することだ」というのがある。
「疾患に打ち勝つ」とかいうと格好良いけど・・・想像の翼がデカくて、もっとイイモノをという希求と間断なき努力をしてたら、病と共存したまま仕事し続けて長く生きちゃってたのだろうなぁ・・・と(ソコが凡人と違うなと)。
そういえば、「どれだけの労力を注ぎ込んだかを知れば、天才なんて呼べないはずだ」という名言も残してますね(^^)
システィナ礼拝堂とミケランジェロの苦痛
天井画
30歳代のミケランジェロ、4年もの間天井を見上げ描き続けた。
いかな天才でも愚痴ります。
ミケさん、図入りの手紙まで書いてしんどさをアピール。
この困厄の中で俺はもう喉を害めてしまった。まるでロンバルディアかあの辺りの澱んだ水で猫がやられるように。そこで腹は胸の下へぐっと引きつられ、髯は天を向き、うなじは肩にくっついている。
…中略…
皮膚は前に引き延び、身を後に屈めるとまた皺よる。俺はアッシリアのアーチみたいにふんぞり返る。
『ミケランジェロ伝』高田博厚訳(1978)より引用
うなじが肩につく状態で居るって、頚部のヘルニアとかになりそうで怖い~
小さい頃、コレを↓ヤらしい絵だと思っていた(すんません)。
祭壇画(最後の審判)
ミケランジェロ60歳代の作品。論文によると変形性関節炎を発症している。
バチカンにあるシスティナ礼拝堂の祭壇に描かれた、およそ縦14×横12mの大作。ひとりの人間が描いた 絵画作品としては史上最大らしい(と、ゲーテも言っている)。
221Bさんの好きな部分♡皮ビロ~ン
人の抜け殻は自画像らしい。
「ミケランジェロの手は関節炎だった」論文、分野は医学史なのかな?それとも整形外科系?いずれにしろ絵画から推論するなんて、浪漫だぁ♡
ミケランジェロが痛風だろうが変形性関節炎だろうが、作品の価値は普遍なんですが・・・現代ならば前者は不摂生感を醸し、後者は労災認定で療養補償が受けられますね?
ついでに関係ないけど、221Bお気に入り♡天才ダ・ビンチの猫の絵。
画面中央より、やや右手下部に注目!
おや?
竜が混ざっちゃっているじゃないの?
なぜか?ミケランジェロではじまり、ダ・ビンチ〆のnoteです。
論文に興味のある方はこちらへ(ФωФ) ※PDFがDLされるので注意!
おしまい