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マジで?潜在意識は人を成功させるのでしょうか?

「電車のつり革を引きちぎった男が逮捕」

そんなネットニュースの報道がありました。

男性(63歳)は、器物破損の疑いで逮捕されたそうです。混雑した電車で立ちっぱなしだったので、腹が立って、つり革をねじって両手で掴み、体重をかけて引きちぎったとのことですが、つり革の耐久力は120キロ以上と言われているので、ネット上では、「つり革が引きちぎれるのか?」という話題になりました。
「どんな怪力だよ?」「あれを引きちぎるほどの怒りってスゴいな・・・」という書き込みがあったようですが、「だから、どうした?」というのが私の本音です。

人間は、信じられない力を出すことがあります。火事場のバカ力といわれるものですが、大切なことは、何かに貢献できることで力を発揮できるかどうかでしょう。せっかくの力があっても器物破損で逮捕されては逆効果です。

まして、力が必要な場面で力が出せないとしたら、何の意味もありません。まさに、バカ力の持ち腐れです。


ほんとに?人間の持つ信じられない力を活用できるか?

火事場のバカ力と同じように、人間の信じられない力を発揮する方法として潜在意識の活用法が提唱されています。

意識には、2つの種類があって、私たちが普段の生活で認識できている「顕在意識」と、認識できていない「潜在意識」です。

たとえば、駅から自宅に帰る道すがら、お店に立ち寄ろうと考えていたとします。しかし、考えごとをしていて、ついお店に立ち寄るのを忘れてしまいました。そんなときでも、無意識に家への道を歩いていたりします。決して、知らない道に迷い込んだりしません。これが潜在意識の力で、意識しなくても、私たちが必要な行動を取らせるのが潜在意識の役目です。

私たちには、意志の力だけでどうにもならないことがあります。

「富士山を思い浮かべないでください。」と言われると、富士山を思い浮かべてしまいます。イメージを打ち消そうと思うほど、かえってイメージが鮮明になります。私たちが健在意識だけで生活をしていないことがわかります。

一般的に、顕在意識は5〜10%と言われています。確かに、日々の行動で、何かを意識しながらやることは5〜10%くらいかもしれないと納得できます。だから、残りの90%〜95%を占める潜在意識を活用して成功しようというメソッドがあります。

潜在意識を使って、未知なる自分の力を発揮する。何だか魅力的な話ですね。

ここだけの話、潜在意識はあなたを助けるか?

問題は、そんなに都合よく潜在意識が活用できるのかということです。

私は、潜在意識について、誤解があるように感じています。

火事場のバカ力と同じように、火事場に追い込まれるような(爆発的な怒りでつり革を引きちぎるとか)状況でないと発揮できないのであれば、日常的には使えないということです。

また、メソッドが、潜在している意識を顕在化させるものであれば、もともと潜在していないものは発揮できないと考えるのが正論でしょう。

「最高の自分を出す方法」
「パフォーマンスアップ」
というのは、潜在意識を活用することで実現できるかもしれません。

これらは自分の能力を最大化するものの、成功を約束するものでありません。なぜなら、潜在している能力を発揮させるもので、未知の自分を引き出すことはないからです。

ピアノを弾いたことがない人が、潜在意識の力でピアノが弾けるようにはならないでしょう。そもそも能力が潜在していないからです。

そもそも、意図して潜在意識を活用できるものでしょうか?

「潜在意識に刷り込まれるほど強い願望を持つ」というような話がありますが、願望だけで物事を成し遂げた人は、知っている限りですがいません。

『日本一わかりやすい潜在意識の教科書』(山田浩典 きこ書房)には、顕在意識が主人で、潜在意識が忠実なしもべであるとあります。顕在化した意識の力を最大限に活用できるのが潜在意識の力だとしたら、「潜在意識の活用法」を学ぶというのはナンセンスでしょう。


そうだ、集合的無意識について考えてみよう

しかし、潜在意識が引き寄せの原動力だと考えられていることも少なくありません。

その理由は、集合無意識や波動についての誤解があるからではないだろうかと思います。

個人の意識は、集合無意識という社会全体の意識とつながっているといわれる。個人を越えた、集団や民族、人類の心に普遍的に存在すると考えられる先天的な原型の作用を受けているとはスイスの心理学者カール・ユングの説です。

引き寄せの法則を信じる人たちの間では、潜在意識を使って、集合的無意識に働きかけて「引き寄せの法則」を発動させると考えられているようです。

こうした話の真意はわかりませんが、顕在化しているスキルの反復訓練を行うことで、自動的にスキルを発揮できるようになるという話の方が確実性が高いと思います。

あなたの思いは世界を変える??

集合的無意識の事例として、よく挙げられるのは「100匹目の猿現象」でしょう。

宮崎県串間市の幸島に棲息するニホンザルの一頭がイモを海水で洗って食べ始めた。すると同じ行動をする猿が増えて、100匹を超えたあたりから群全体に広がった。ここまでは不思議なことはありません。そんな猿もいるでしょう。

意識が伝播するという仮説が導かれたのは、幸島から遠く離れた大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったからです。

これが「ある行動や考えなどが、ある一定数を超えると、接触のない同類の仲間にも伝播する」という現象の実例とされています。

この事例をもとに、「人の思いが世界を変える」という話につながることが多い。のですが、ここで注意したいのは、猿に「思い」があるのかということです。

生物は環境に適応したものだけが生き残ります。環境に適応するために進化して、体型や行動が変化することがあります。イモを洗うという行為が衛生面を向上させることで、環境に適応するのなら、集合的無意識を伝って行為が伝播されることもあるかもしれません。

私は、環境に適応し、種の繁栄に効果的なことのみ伝播されるのではないかという仮説を持っています。従って、種の繁栄につながらない個人的な願望が伝播されることはないと考えます。

千葉市動物公園で飼育されているオスのレッサーパンダ「風太くん」は立ち上げることで人気者ですが、他に立ち上がるレッサーパンダはいません。これは種の繁栄につながらないからでしょう。

この点から考えると、伝播する意識とは、個人的な願望ではなく、人類の繁栄のために有効な情報に限られると思われます。これが100匹目の猿と風太くんの違いで、私が、潜在意識が個人的な成功に機能しないと考える理由です。

これこそ!私たちの潜在意識が爆発的に広がる瞬間

集合的無意識を完全に否定することもできません。

潜在意識は個人的な成功の達成に機能しないと言いましたが、個人的な願望でも、それが人類の繁栄に貢献するものであれば大きく広がる可能性があります。

『ティッピング・ポイント』(マルコム・グラッドウェル 飛鳥新社 2000年)の中で、あるアイデアや流行、社会的行動が、敷居を超えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間について解説されています。

グラッドウェルによれば、ある要素は、少数者による支持がコネクター(影響力のある人)によって社会に放たれます。そして、弱いつながり(親友というより知人)を通じて社会に伝播します。それが、ティッピング・ポイント(爆発点)に到達したとき、劇的に社会に広がるというものです。

ティピング・ポイントに到達するために、グラッドウェルは、二つの要因を上げています。

・記憶に粘るメッセージ
・社会的背景

確かに、このメカニズムによって成功の階段を登った人は多いですね。

たとえば、成功本の著者として有名な本田健さんは、少人数(確か40人ほど)のセミナーからスタートしています。

主催は、友人の望月俊孝氏(願望達成メソッド宝地図の提唱者)で、参加者は望月氏とは強いつながりを持つが、この時点で本田さんとのつながりは弱いと言えます。

セミナーを通じて、つながりを強め、本田さんは小冊子を配布します。一人一冊ずつでなく、友人や知人に配ってもらうために複数冊を無料で渡しています。その小冊子が伝播して、欲しいという人が増えました。当初は、希望があれば冊数を問わず無料で配布したことで、ティッピング・ポイントを突破し、本田さんを成功の階段に押し上げたと考えることができます。

本田さんには、グラッドウェルが挙げているふたつの要因も備わっている。
・「幸せな小金持ち」という記憶に粘るメッセージ。
・リストラなど、将来に不安を持つ人が増えた社会背景
こうした要因が、「好きなことをして自由に生きよう」という本田さんの考えを爆発的に普及させることになったと説明できるのではないでしょうか。

このメカニズムは法則として位置づけられそうです。

セブン&アイホールディングスの元会長鈴木敏文さんは、ティッピング・ポイントを「爆発点の原理」と呼んでいます。セブンイレブンでは、売れるだろうと仮説を立てた商品を、売れる前から大きなスペースで販売します。売り手は、「これがおすすめの商品です」と自信を持ってメッセージを出します。この働きかけによる認知度が一定レベルまで達すると、爆発的に広がるというものです。

鈴木さんが著書で上げている成功例は、セブン銀行です。コンビニにATMを設置することに否定的な意見が多かったと言います。こうした意見の通り、2年は赤字になっています。しかし、利用者数が上がっているため、鈴木さんは爆発点に至るまで待ちます。鈴木さんの予想通り、3年目に爆発点(ティッピング・ポイント)に到達し、黒字化に成功します。

ということで、潜在意識を活用するとは、顕在化したスキルや願望を潜在化するまで反復する。社会背景を考慮した記憶に粘るメッセージと共にコネクターを通じして社会に放つということです。

この点を理解できれば、堀江貴文さんや西野亮廣さんが紹介した本がことごとくベストセラーになる理由もわかるでしょう。

潜在意識は見えない力ではないのです。また、頼るものではなく、活用するものなのです。


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