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わかめ玉子スープ

平日のとある日、一人で下高井戸へ映画を見に行った。まず映画館の窓口へ行き、チケットを購入。上映まで時間があるので、食事をしようと近くのファミレスへ。

ちょうどお昼時だったこともあり、店内は8割方席が埋まっていた。席に着き少し悩んだ末、日替わりランチとドリンクバーを注文した。

セルフサービスの日替わりスープをもらおうと移動すると、高齢の男性がよそっている最中だった。高齢の女性が並んでおり、その後ろに私は並んだ。男性は自分の分と同行者の分と、2杯分よそっている。ひとすくい、ひとすくい、ひとすくい。またひとすくいかと思ったら、おたまを奥に潜らせてよそいなおしたりしている。スープの具であるわかめと玉子が目当ての様子。よそい終えた男性は右手にあるお盆を手に取り、具の入ったスープ達を乗せ、席へと戻っていった。

次によそいはじめた女性も同行者の分を含めた2杯分を用意している。女性の速度もまたゆるやかで、すくったかと思えば潜らせてすくいなおしている。先ほどの方と同様、具が目当ての様子。一度後ろを軽く振り返ったあと、またゆっくりとすくう。私にはこの時間がひどく長く、長く、永遠のように感じた。ようやくよそい終えた女性は去り際、こちらに軽く会釈をした。待たせたことへの詫びだと思うが、その瞳には感情がなかった。

ようやく順番が回って来た私は4回ほどですくいおえ、そそくさと自席へ戻った。席についてから気づいたが、スープの具をほとんどよそえていなかった。

斜向かいの席では先ほどの女性が友人と楽しげに話している。具の入ったスープを飲みながら。

そんな様子を尻目に、私は具の無いスープを飲んだ。

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