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【リズム診断】「様子見」を考える。東サラ2023年産駒で面白そうな残口馬
この記事について
①東サラ2023年産駒の残口馬について、傾向データをもとに候補を絞り込む
②注目馬の推しポイントを挙げる
※東サラを題材として扱っていますが、「様子見」に関してどのクラブにも当てはめられる内容になっています。
※以下記事の応用編です。
“東サラの魅力”とは?
「東サラの魅力は?」と問われると、「むしろ悪いところが多いのでは……」と思う方もいるかもしれません。しかし、東サラならではの利点も存在します。
そのひとつが「募集馬の多くをしばらく様子見できる」という点です。2023年産駒の募集馬において、2025年3月1日時点で残口がある馬は全25頭。つまり、約半数の馬がまだ満口に至っていません。未だ多様な選択肢が残されており、ノーザンファーム生産・育成馬や、新種牡馬コントレイル産駒、活躍が目覚ましいナダル産駒なども残口がある状況です。
「でも、東サラの残口馬に良い馬なんていないでしょ笑」と思う方もいるでしょう。しかし、実際にはそうとは言い切れません。
例として挙げたいのが、現在2戦2勝のルージュラナキラ。この馬は、最後の最後まで「残200口以下」の警報すら表示されず、募集締切日まで売れ残っていました(私自身、その締切日に出資を決めました)。
ルージュラナキラは直近の実例のひとつに過ぎませんが、他にも勝ち上がった馬は多数おり(※時間なく残口馬のその後を調べられてません💦)、デビュー後の成績を考えれば「東サラの残口馬=活躍できない」と一概には言えないのです。
このように、東サラでは気になる馬をギリギリまで様子見できます。たとえ募集時に売れ残っていた馬であっても、成長や育成の過程で大きく良化し、結果を残すケースもあります。募集時に馬体重が少なかった馬が、その後の成長によってしっかりとした体つきになることも珍しくありません。こうした成長を見極めた上で出資判断できるのが「様子見」という戦略です。
対照的に、サンデーやキャロットのような人気クラブでは、募集開始直後に全馬が満口になることがほとんど。そのため、成長を見守りながら出資判断を下す余裕はありません。「様子見ができる」という点は、東サラならではの魅力と言えるでしょう。
そこで今回は、東サラ2023年募集産駒の中から「様子見して良さそうな馬」を探るべく、リズム診断の傾向データを活用しながら分析してみたいと思います。
「残口馬」VS「満口馬」の馬体重比較
先ほど、
“たとえ募集時に売れ残っていた馬であっても、成長や育成の過程で大きく良化し、結果を残すケースもあります。”
と記載しましたが、その「成長」に関する傾向データを、以下「2歳1月末時点の馬体重」記事で公開しています。
あくまでも傾向のひとつに過ぎませんが、今回は絞り込みのベースとしてこの切り口を用いてみます。
……その前に、「残口のある馬」と「満口馬」について、2歳1月末時点の馬体重を比較すると明確な傾向が見えてきたので紹介しておきます(※募集取り下げ馬は除く)。
1. 「残口のある馬」の平均馬体重(募集時の平均馬体重)
a. 牡馬 436.8kg(387.1kg)
b. 牝馬 437.4kg(392.3kg)
⇒ 馬体重が小さい
2. 「満口馬」の平均馬体重(募集時の平均馬体重)
a. 牡馬 478.2kg(417.5kg)
b. 牝馬 468.7kg(413.3kg)
⇒ 馬体重が大きい
このデータから分かるように、馬体重の小さい馬ほど売れ残る傾向があります(現在シルクの残口馬4頭も馬体重が小さいですね)。これは、多くの出資者が馬格を重視して選択していることを示しており、実際に馬体重の大きい馬のほうが勝ち上がり率が高いこととも一致しています。
※ただし馬体重は、その傾向データを把握したうえで出資している方は少数派である気がしています。馬体重とは一般的に、“出資者の経験則や体感”として、曖昧ながらも重要視されている要素と言えるのかもしれません。
募集時には必ず測尺が公表され、特に馬体重は分かりやすい検討要素として支持されています。しかし、ここで見落とされがちなのが「その後の成長」です。募集時点で馬体重が少なかった馬でも、その後の成長によって大きく変化することがあります。
つまり、募集時には人気がなかったものの、その後の成長によって満口馬と同等の馬体になった馬を見極めて選ぶことができれば、より賢い出資判断が可能になるのではないでしょうか。
成長を把握しやすい要素として他に「体高」が挙げられますが、募集時以降に公表されることは稀です。しかし「馬体重」であれば定期的にアップデートされるため、その後の成長を把握できる有効な手がかりになり得るのです。
「馬体重」を元に絞り込んでみる
前述の記事でまとめた「2歳1月末時点の馬体重」傾向データに当てはまる、「東サラ2023年産駒」の残口馬を挙げてみましょう。
2歳1月末時点の馬体重
・牡馬 460kg以上
・牝馬 450kg以上
牡馬(2歳1月末時点、馬体重460kg以上)
該当なし
残口がある牡馬は9頭いましたが、どれも現時点で馬体重が大きくないようです。今後の成長に期待しましょう。ただし、レッドリファインド(ディエンティの23)は1月末時点で458kgのためギリギリOKとして良いかもしれません。
※リズム診断では評価「B」
牝馬(2歳1月末時点、馬体重450kg以上)
調査対象は16頭、うち傾向データに該当するのは以下6頭でした。
12. ルージュフローラ(レッドアウローラの23) 評価「B」
24. ルージュブリッツ(ブランシェールの23) 評価「B」
32. ルージュルガーノ(シックスイスの23) 評価「S」
40. ルージュマデイラ(ダーヌビウスの23) 評価「A」
46. ルージュシャラポワ(ジョンブリアンの23) 評価「S」
48. ルージュエピック(エターナルディーバの23) 評価「S」
※上記から漏れたルージュダズリング(ジュエルインザサンの23)は動きよく、募集時の体高は160cmもあり、どんな馬体に成長するのかとても注目していました。しかし1月末時点の馬体重は435kgと、募集時と全く同じ。馬体重の増減が激しく、なかなか身になってこないようですね……。
私自身の例で言えば、別クラブでキタサンブラック産駒の牝馬に出資していますが、やはり体重の増減が激しく、5歳になっても440kg程度とあまり馬体重は増えていません。同産駒は牡馬のほうが勝ち上がり率が高いのですが、牝馬の場合は産駒特有の気性の強さが仇となって体重維持や調整に苦労するケースもありそうですね。
分析から導き出された「様子見」注目馬
前述の傾向データを踏まえ、「残口のある馬」の中から牝馬のみ6頭を選定しました。さらにリズム診断の評価「S」を基準に絞り込んだ結果、以下の3頭を「東サラ2023年産駒で面白そうな残口馬」とします。
※あくまでも「馬体重」「リズム診断評価」を用いた試験的な試みであるとご理解ください。
注目の残口馬
① No.48 ルージュエピック(エターナルディーバの23)
② No.32 ルージュルガーノ(シックスイスの23)
③ No.36 ルージュシャラポワ(ジョンブリアンの23)
このように、馬体重やリズム診断などのデータを活用すれば「様子見して良さそうな馬」を見つけることが可能です。もちろん育成過程や坂路動画の動き、馬体写真など、ほかの視点を組み合わせることで、より精度の高い判断ができるでしょう。
一口クラブの募集では、馬格の大きな馬ほど早いタイミングで人気になりやすい傾向にありますが、東サラのように「様子見」が可能なクラブではより慎重に時間をかけて検討ができるメリットがあります。この特性を活かして、自分ならではの視点で「様子見馬」を見極める楽しみを持つことも一口クラブの醍醐味のひとつと言えるかもしれません。
(そして東サラの残口馬に出資してみましょう。という販促記事でした笑)
注目馬の推しポイント
あくまでも個人的な感想となりますが、注目馬3頭のうち、ルージュエピック、ルージュルガーノの検討ポイントを挙げてみます。動きの良さ等を具体的に説明するものではないため根拠に乏しいのですが、よろしければご覧ください。
※今回記載しないルージュシャラポワは現在「残口わずか」。育成進捗・馬体・動きどれも良く、言わずもがな早々に売り切れそうなため割愛します(ひとつだけ。母馬所有は社台ファーム。本馬も同様のはずで、東サラへのいわゆる貸し馬でしょう。将来的に繁殖牝馬になったとしても、その産駒は東サラで募集されないかもしれません)。
① 48. ルージュエピック(エターナルディーバの23) 牝馬
残口あるなかで、一番注目しているのがルージュエピック。とても順調な育成状況と言えますね。
・1口:6万円 / 総額2,400万円
・馬体重:470kg(2/28内容)
・坂路進捗:14秒(2/28内容)
・移動時期など:まだコメントなし
・リズム診断:S+(募集時)
・主なコメント:
- 柔軟性に優れた、バランスの良い走り。クリソベリル産駒ながら、芝でも良い競馬が可能(2/15内容)
- 気性も素直で、操縦性にも問題ない(2/28内容)、素直で人懐こい気性(1/31内容)
- 脚元が丈夫でコンディションにまったく問題がない(12/27内容)
リズム診断では「S+」という上位評価をおこなっていました。以下の募集時コメントのイメージどおり成長を遂げているようです。
■評価「S+」
きれいに歩けており、良い歩様です。まだ力強さに欠けますが、均一性・連動性に富んだ、リズミカルな脚の運びができています。気性は落ち着いた印象であり、素材としては良いものを持っていそうです。
現時点で馬体重391kgの牝馬であり、ダートが主戦となりそうなクリソベリル産駒としては頼りなく感じさせます。ただし体高は155cmあり、独自ツール『そくサーチ』調べによるとデビュー時460kgぐらいには育ちそうです。母系はダートの活躍馬を多数輩出しており、今のところ本馬は人気が全く無さそうですが大穴候補として面白い存在ではないでしょうか。
募集時の馬体重は391kgと小さめだったため、出資対象外とした方は多かったのでしょう。しかし現在は470kg。募集時の人気馬と同等の馬体に成長した、このタイミングで出資の検討対象として見直して良いのかもしれません。
母エターナルディーバは、2022年10月におこなわれた「ジェイエス繁殖馬セール」において㈱社台ブラッドメアより出品され、最高額となる6,270万円で(有)ミントが落札(東サラの関連会社と言われています)。セール時に父クリソベリルを受胎中で、その後の本馬は東サラで募集となりました。
別途、同セールで(有)ミントにより落札されたのが、母ビキニパレード。ニューイヤーズデイを受胎しており、こちらも2024年度の東サラで募集されています(ルージュリヴィエラ)。
母ビキニパレードの落札額は1,200万円。対して、母エターナルディーバの落札額は6,270万円。後者は入札合戦になったようなので単純比較できませんが、約5倍強の価格差が付いたのは血統に対する評価・期待の高さの表れと言って良いでしょう。
血統面は募集カタログに書かれているので割愛しますが、母系はダートで活躍馬を多数輩出している良血。またどこかでダートの大物を輩出しそうな匂いがプンプンしますよね。ここに、チャンピオンズカップなど中央・地方のG1級ダートレースを5勝した新種牡馬クリソベリルを配合。本馬ルージュエピックは「これぞダートの申し子!」と言わんばかりの意図を汲み取りやすい血統構成になっています。
ただし本馬は牝馬であり、ダート血統ならば割引と捉えている方も多いでしょう。しかし直近コメントでは動きの良さと芝適正を指摘されているので、「どちらに転んでも楽しめそう」ぐらいの受け止め方をしたほうが良いかもしれません(芝で2勝しているルージュラナキラも、当初はダート向きというコメントでした)。
また本馬は、前述のとおり落札した東サラ関連会社の所有馬であるのも魅力の一つ。将来、繁殖牝馬になれた場合、かなり高い確率で東サラで産駒が募集されるでしょう。母系はダートの活躍馬が多数のため、母エターナルディーバ同様に本馬の血統的価値も高いはず。気が早い話になりますが、母優先の権利を織り込むのも出資検討の動機付けのひとつになるのではないでしょうか。
本馬は警報が出ておらず、まだまだ残口があるようです。しばらく様子見できそうなので、今後の育成状況に注目してみてはいかがでしょう。
※ただし、既にハロン14秒に達しているので、近いうちに早期入厩コメントが出そうです。そこからすぐに売れ出すかもしれませんね。
なお、私も1口出資済みです。トモの張りがちょっと物足りない気もしていますが、今後の状況によっては更に口数を追加しようと思っています。
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② 32. ルージュルガーノ(シックスイスの23) 牝馬
様子見としては「一か八か」という扱いになりますが……次に注目しているのがルージュルガーノ。
・1口:7万円 / 総額2,800万円
・馬体重:462kg(2/28内容)
・坂路進捗:15~16秒(2/28内容)
・移動時期など:まだコメントなし
・リズム診断:S(募集時)
・主な以外コメント:
- スピード感に優れた操縦性も高い(1/31内容)、スピード能力の高さは疑いようがない(12/27内容)
- 時折、敏感な面も見せる(2/28内容)、気性が強く前向きだが、折り合い面の問題ない(12/27内容)
‐ 筋肉量豊富でトモ幅がある、逞しい馬体(12/27内容)
この馬も募集時の馬体重は385kgと小さかったのですが、ほどよいサイズに成長してきています。募集時のリズム診断コメントは以下。
■評価「S」
やや硬さが見られますが、しっかり歩幅を保ったまま動けており、まずまずの歩様です。こちらもキタサンブラック産駒の牝馬ですが、体高は152cmあり遅生まれ。独自ツール『そくサーチ』によるとデビュー時460kgぐらいになりそうな想定のため、現在385kgは気にしないで良いでしょう。
ただし、前肢が両脚とも外弧歩様なため、負荷の蓄積・故障への懸念は予め織り込んでおく必要がありそうです。
ポジティブに受け取り過ぎないほうが良いのですが……本馬も順調なようです。複数回のスピードコメントが出ているのも興味深いところ。
※余談。「東サラのコメントは盛られている?」
こんな声を耳にすることがあります。しかし、強いて盛っているわけではなく、むしろ育成牧場内での相対評価を素直に反映しているのかもしれません。このため、例えばノーザンファーム育成馬と他の牧場育成馬では、同じようなコメントでも意味合いが異なる可能性があります。東サラの更新コメントを鵜呑みにするのではなく、牧場ごとの特性を理解した上で解釈することが重要でしょう。
ただし、売れ残っている馬については、クラブ側がネガティブな要素を意図的に省いたコメントを公表している可能性も否定できません。そのためコメントの「行間を読む力」も求められそうです。
これは一口馬主クラブに限った話ではなく、一般的な商業製品でも同様のことが見られます。マーケティングの観点から、企業は自社の商品をできるだけ魅力的に見せるための表現を用いるものです。東サラのコメントもその一環として理解しつつ、慎重に読み解く姿勢が必要でしょう(金融商品なのにそんな信頼性の乏しい更新コメントで良いのかという議論はあって然るべきかもしれませんが)。
さらに言えば、近年の東サラはクラブ成績が低調なため「コメントに見合っていない=盛っている」と必要以上に受け止められている側面もありそうです。
話を戻します。本馬の父はキタサンブラックというのも魅力的。産駒の活躍馬・勝ち上がり率の高さは牡馬に偏っていますが、牝馬は重賞2勝のラヴェルらがおり、さらに活躍する馬がいつ出てきても不思議ではありません。
また、本馬が付けられた2022年の種付け料は500万円。以後、
2023年:同1,000万円
2024年:同2,000万円
2025年:同2,000万円
という右肩上がりの価格設定のため、牝馬とは言えキタサンブラック産駒が1口7万円で出資できるのもこの世代まででしょう。手ごろ感を理由に出資するのは浅はかですが、ここも検討材料として捉えて良さそうです。
気になるところでは、この母の産駒は総じて気性がネック。現状で、
時折、敏感な面も見せる(2/28内容)
という一文があるのが気になるところ。キタサンブラック産駒は繊細な馬が多いので、気性のキツさがいつ爆発するかの懸念があります。
なお母シックスイスは、2024年9月に用途変更になっています。何があったのか不明ですが繁殖から引退した模様です。2024年産駒は不受胎となっており、この母からの産駒は本馬が最後。元々は、ディープインパクト→ディープインパクト→ドゥラメンテ→キズナ……と高ランク種牡馬を付けられ繁殖として期待されていたはずのため、本馬で一発大物が出ることに賭けてみるのも良いかもしれません。
また母シックスイスは、有限会社ミント所有。ルージュルガーノ(シックスイスの23)も同会社所有となるはずのため、繁殖入りした際の仔は東サラで募集される可能性が高いでしょう。
「東京サラブレッドクラブ 2023年産駒」募集中の馬
リズム診断「東京サラブレッドクラブ 2023年産駒」編
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