【調査】「初仔」の選び方。実は「母〇歳時」の勝ち上がり率が最も高い
どのような母の産駒傾向か分からず、その取捨選択が難しい「初仔」。一口クラブの募集馬やPOGにおいては「勝ち上がり率が悪い」という印象から避けられがちですが、本当にそうなのでしょうか。攻略の糸口が無いか調べてみました。
※本ページで扱うデータは、以下クラブを対象とした独自集計によるものです(募集中止馬は除いています)。調査母数が多いとは言えないため、いったんの参考値としてご認識ください。調査しだい追加更新します。
調査対象クラブ(2020年8月30日時点)
キャロットクラブ(15-17年産 ※リズム診断は17年産のみ)、シルクHC(15-17年産)、東サラ(15-17年産)、グリーンF(15-17年産)、ノルマンディーOC(15-17年産)
「初仔」の馬体重
まず、募集時の馬体重。よく語られている基礎情報となりますが、確かに初仔は小さく産まれる傾向にあるようです。
平均馬体重(初仔以外も含む)
443.6kg N=635
・牡馬 443.0kg n=299
・牝馬 431.0kg n=336
初仔の平均馬体重
426.6kg N=75
・牡馬 428.7kg n=30
・牝馬 425.2kg n=45
募集時の馬体重でいうと、399kg以下の場合だと牡馬10%ほど、牝馬15%ほど勝ち上がり率が下がるため、399kg以下の初仔は割引と考えたほうが良さそうです。
※馬体重に関する考察詳細はまた別の機会に書きます。
「初仔」の管囲
管囲は、全体と初仔とで太さの差はほぼありませんでした。馬体重が小さく産まれる傾向からすると少し意外ですね。よって、初仔の管囲どうこうは気にしなくて問題ないでしょう。
平均管囲(初仔以外も含む)
20.0cm N=635
・牡馬 20.5cm n=299
・牝馬 19.6cm n=336
初仔の平均管囲
19.9cm N=75
・牡馬 20.3cm n=30
・牝馬 19.6cm n=45
ただし、管囲ごとの勝ち上がり率を比べると話が変わります。「19cm台(49.0%)」と「20cm台以上(52.3%)」とでは大きく変わりませんが、「18.9cm以下」の場合は34.6%と約15%も下がります。
よって、多くの人が20cm以下だと嫌う傾向にありますが、実際は「18.9cm以下」を避けることで勝ち上がり率の高い馬を見つけやすくなると言えます。
※管囲に関する考察もまた別の機会に書きます。ちなみに、初仔の平均募集価格も調べようと思ったのですが、クラブ別に調査しないと不確かなものになってしまうのでこれは母数が増えたどこかのタイミングで反映します。
「初仔」の勝ち上がり率
そもそも初仔の勝ち上がり率はどれぐらいでしょう。初仔以外の全体数と比較してみると…
平均勝ち上がり率(初仔以外も含む)
50.4% N=635
・牡馬 51.8% n=299
・牝馬 49.1% n=336
※調査対象を上位クラブとしているので一般的な数値より高いと思います。
初仔の平均勝ち上がり率
37.3% N=75
・牡馬 39.4% n=30
・牝馬 33.3% n=45
というように10-15%ほど勝ち上がり率が低い傾向にあることが分かります。なるほど、冒頭で挙げたとおり「初仔は勝ち上がり率が悪い」という印象はその通りだったようです。
この要因のためか、各クラブにおいても初仔の売れ行きは鈍くなっています……が、だからと言って初仔を選ばないのは勿体ないです。次のデータを見てください。
「初仔」の母年齢ごとの勝ち上がり率
初仔母年齢 勝ち上がり率 調査母数
4歳 25.0% n=4
5歳 28.6% n=21
6歳 10.0% n=10
7歳 54.3% n=35
8歳 0.0% n=3
9歳 37.3% n=2
N=75
どうでしょう。このデータによると、母7歳時の初仔の該当数が最も多く、かつ勝ち上がり率が最も高いという結果を示しています。この数値は、全体の勝ち上がり率50.4%をも上回っています。
これら理由を紐解くと、該当数が最も多いのはクラブによっては牝馬は6歳春シーズンまでに引退という規約(もしくは暗黙の了解、競争能力の限界等)があるため、6歳種付け→7歳初仔という出産サイクルが主流になっているからだ思われます。
また、勝ち上がり率が高いのは、6歳春シーズンまでに引退してクラブで募集されるような牝馬はそれなりの競争成績を収めているはずで能力的な期待値が高く、かつ血統的にも繁殖的価値を見込まれている馬も多く、相応の種牡馬が充てられます。このような背景により、良い初仔が産まれやすいからではと推測しています。
よって、本記事タイトルの答えとしては、初仔は「母7歳時」の勝ち上がり率が最も高いとなります。出資やPOGにおける選定の際には念頭に置いておきましょう。
(ちなみに調査対象クラブの中の母7歳初仔からは、ブラストワンピース、グローリーヴェイズという重賞馬も誕生しています)
「リズム診断」であれば更に勝ち上がり率が高まる
当「リズム診断」を利用して、さらにデータを絞り込んでみましょう。
「評価S、A」の勝ち上がり率(母全年齢の初仔)
55.3% n=38
「評価S、A」の勝ち上がり率(母7歳時の初仔)
72.2% n=18
※調査母数が少なくなるため「評価S、A」を合算しています。
※キャロットCの15-16年産は「リズム診断」未評価のためこの調査からは除外しています。
条件を絞っているため母数が少ないのですが、このように「リズム診断」の評価を参考にすれば勝ち上がりの可能性はかなり高まります。募集馬検討の際にはぜひご活用ください。
なお、現在募集中のキャロットクラブ2020年度募集(19年産)における初仔は計19頭。うち、母7歳時の初仔は計11頭となっています。
どの馬を「評価S、A」としたのか、興味ある方は以下もご覧ください。“新規入会チャレンジ”向けの票が集まりづらい馬選びにも役立ちそうです。
母7歳初仔 グリーンFは2頭が該当
母7歳初仔 DMMバヌーシーは1頭が該当
※本ページの初仔の定義について。netkeibaの産駒一覧に「初仔」のように書かれていても、実際は初仔ではないケースがあります。可能な限りJIBSサーチや募集カタログで調べて反映したものの、持ち込み馬の場合は判別できないケースもあるようです。あったとしても誤差の範囲かと思いますが、このような事情があることをご了承ください。
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