北京でPCR検査を受けた話

『北京でPCR検査を受けた』

1.はじめに
2020年9月から10月にかけて、中国・北京にてPCR検査を2回受けたときのことを記録しておく。

※(ⅰ) 本文章は一部に未確認情報や推測を含む。その部分はそうであることがわかるように、『だろう』『かもしれない』『と思われる』等の推測の表現を使うなどして記述する。読むにあたって留意されたい。

※(ⅱ) 検査は2020年9月と10月のことである。現在とは状況が異なっているかもしれない。

2.PCR検査の理由
計2回のPCR検査は所属する单位(ダンウェイ=組織や部門、所属先の意)の求めによるものである。当該の单位はPCR検査の陰性の証明の有効期間は5日間としている。その有効期間ゆえに再度の検査をすることとなった。

3.中日友好医院にて第1回検査 
3.(1)中日友好医院本部(南門)
9月下旬のある日、午前11時。中日友好医院にてPCR検査を受けるため医院本部の南門(8号門)から入る。無症状かつ自主的な検査を受ける者は門を入って、検査場へと続く左側のレーンに進む。入って直ぐのところに防護服を着た係員が2人いて、案内を受ける。ここで簡単な質問票に答える(スクリーニング)。内容は、最近の健康状態、最近の国内外への移動や感染者との接触の有無などについてである。それを持って、敷地の中を更に進むとプレハブ造りの簡素な建物がある。

この簡易な建物はPCR検査のために医院敷地の空きスペースに仮設の施設として作られたようだ。市内の他の病院でも類似の建物を見かける。

この仮設の建物で先ず受付をするのだが、マシンを相手にセルフで登録をするよう係員に促される。登録には中国居民の身分証が必要とのこと。私は外国人だ言うと、外国人はここではない、医院の国際部に行くように、と指示される。どうやら、南門(8号門)から入る場所にある検査場は中国人用の検査場であるようだと、その時は理解した。後に外国人もここで受け入れているという情報を得る(後述)。

見たところ、ここに検査に来ている人はわずかである。他に2、3人いたかどうかというところ。

中日友好医院で検査を提供している日は月曜日から金曜日まで、時間は朝8時から午後4時30分まで。11:30〜13:30はお昼の休憩時間。検査を希望する日の当日、直接ここに来て受付をして、検査料を払い、検査をするという手順。予約は要らない。ただし、あとで8号門に設置されている案内板を確認したところ、午前と午後のそれぞれで100人の人数制限があると書いてある。同案内板にはWeChatで予約することができるとも書いてある。

3.(2) 中日友好医院国際部にて検査実施
職員に言われて、いったん8号門を出て東隣の国際部へ移動する。国際部でもお昼の休憩時間があり、午後の時間帯に検査をする。休憩時間は状況によって多少前後するようだ。

検査は通常の外来のための玄関ではない通用口のような入り口を入ったところの小さなホールの空きスペースで行われる。私の他に検査に来ている人はいない。検査場には検査担当者が1人いる。検査に来たと言うと、先に検査のための受付をするよう指示される。

受付(挂号、グアハオ)は検査場所の隣の部屋である。ただし、一度建物から外に出て、建物一階の部屋の中の職員と窓越しに応対してもらう。やはり通常の外来の手続きの場所ではないことがわかる。診察券を作ってもらう。検査料はスマホのAlipayで支払った。支払い方法は他にWeChatペイ、銀聯カード、現金が使える。この支払いで、Alipayには日本発行のクレジットカード(MasterCard)を優先支払い手段として設定していたのだけれど、Alipay口座の残高から支払われたので、中日友好医院国際部ではAlipayに登録した海外発行クレジットカードでは支払いできないようだ。

検査料は240人民元(約3800円)である。高い。中国人用の検査費用は120元であるから2倍である。

検査場所に戻り、作ってもらった診察券を検査員に渡し、椅子に腰かける。検査員は口を大きく開けるように指示する。綿棒を喉の奥に突っ込んで粘膜を採取する。一瞬、喉奥に痛みが走る。検体採取はそれだけである。5秒とかからない。拍子抜けするほど簡単だ。

まったくの余談であるが、検査員に「こんなに簡単なんですね」と感想を言ったのであるが、しかし、下手な中国語なので何回か言い直してようやく理解してもらえた。検体採取は非常に簡単であり、そのことを伝える中国語も非常に簡単なはずなのであるが、私の中国語を理解してもらうことは、それとはまったく逆で大変難易度の高いことであった。なんということだ。

3.(3) 中日友好医院にて検査結果の取得
検査結果は24時間以内を目安に出る。検査の結果が陽性であれば登録した電話番号へ連絡が来るとのこと。翌日になっても連絡が来ないということは陰性なのであろう。

24時間経過後、結果をもらいに医院の国際部へ行く。検査時とは違って建物正面玄関から入り、レセプションでPCR検査の結果を聞きに来たと言うと、ロビーに設置されているマシン(端末装置)に案内された。前日の検査の日に作ってもらった診察券をマシンに置いて画面を1回2回タップすると結果が出力された。画面に結果が表示され、同時に用紙にプリントアウトされる。私はマシンの操作方法を知らなかったので、案内をしてくれた職員が代わりに操作してくれた。以上、中日友好医院での検査を受ける側の一連の手順は非常にシンプルであった。

3.(4) 中日友好医院について補足の情報
検査結果の取得方法であるが、医院で貰った案内を今一度確認すると、スマホアプリで取得することもできると書いてあった。

PCR検査を再度受ける必要があって、後日、情報収集のために中日友好医院の中国人用の検査場で確認したところ、外国人もそこで検査することができると職員は言う。費用は120元(約1900円)。国際部での費用240元というのは、やはり外国人価格なんだなあ、と思ったのであった。(国際部では外国人への対応は英語などの外国語で対応しているのだろうか。そうであるなら、付加サービスの対価を含めてということで高い検査料なのかもしれないが、未確認である。)

中日友好医院は日本のODAで作られたと聞いている。ということは国際部では日本語が通じるのだろうか。そういうことは聞いたことがない。この時はそのようなことは考えることもなかったけれど。

4.航空总医院にて第2回検査
4.(1)航空总医院の外国人の検査について
航空总医院では外国人であっても、予約の段階から検査結果の受け取りまで中国人とまったく同じ手順、手続きで、同一の検査費用であった。

4.(2)航空总医院での予約
前日までに予約が必要という。予約は電話でするように職員から案内された。教えてもらった電話番号に電話をして予約する。氏名(ローマ字である)、電話番号、パスポート番号を伝え、検査日時を空いている検査日と時間から選ぶようにきかれるので、答える。土日は検査をしていないということである。国慶節休暇明けの日の10時30分から11時の時間帯で予約をした。

予約はWeChat上のミニプログラムからもできる。予約システムは、予約受付の電話番号やミニプログラムから判断すると中日友好医院などのいくつかの病院で共用しているようだ。ただし、そのシステムを共用して各病院の予約情報を一元管理しているのかどうかについては知らない。

4.(3)航空总医院での検査の実施

検査の当日。航空总医院でのPCR検査は中日友好医院と違って、既存の建物の中の一角で行う。病院内は外来の客で込み合っていた。密集の状態と言っていいかもしれない。この混み具合の病院の中に入っていくのは恐怖を感じないわけではないけれど、日本と違って防疫の対処が厳しくなされているので心配することはないと自分に言い聞かせる。(ただし、密集の状態と言っても、中国では感染の警戒レベルが下がってから久しく、この間に新規の感染はほとんどないことから、(ニュースで伝え聞く)日本でのような危うい感覚ではない。)

先ず、外来受付で登録をする。ICチップ搭載のプラスチックの立派な診察券を作って渡される。検査料は120元で、前払い。Alipayに登録した日本のクレジットカードで支払った。

検体採取の手順は中日友好医院とまったく同じで、非常に簡単である。数秒とかからない。

院内は外来客の多さから、かなりの人気の病院であるようだ。PCR検査の場所も、行列はできないまでも、被検査者が後を絶たずやってくる。予約制であるのもじゅうぶんに理解できた。

4.(4)航空总医院での検査結果の取得
検査結果は24時間以内を目安に出る。陽性であれば登録した電話番号に連絡が来るとのこと。検査結果の取得は検査結果出力用のマシンを利用してのセルフサービス。案内してくれる係員がいなかったので他の人の行動を観察してそれに倣う。前日の検査前に受付でもらった検査票の控えに印刷されたコードをマシンの光学センサーにスキャンさせると、たちどころに結果がプリントアウトされてきた。結果のプリントを取得するのに、マシンの何処もいっさい触ってない。これはすごい。

院内に掲示されたPCR検査の案内書きを読むと、検査結果はスマホアプリで受け取ることもできるとのこと。

5.PCR検査をしている他の医院の情報など
市内の多くの病院でPCR検査をしている。それら検査機関はインターネットでも公開されている。それぞれに電話番号が記載されているので事前に電話で問い合わせすることもできる。

PCR検査の数日後に、他の要件のために指定された病院に行った。そこは民間経営の病院ということだ。そこでもPCR検査をしていた。案内書きを読むと、事前にWeChatで予約をしたのちPCR検査に来るようにということである。WeChatでの予約はどういうものかと、試しに予約の手続きを進めてみたところ途中から先に進まない。そこで、近くにいた病院関係者にどうしたらいいかを聞いたら、予約は要らないので直接来たらよいということだった。もう一つ他の医院で検査の手続きや費用について問い合わせてみた。やはり、当日に来て検査を受けられるとのこと。検査費用はいずれも120元。外国人であることをちゃんと伝えたうえで確認した。

検査料は120元が標準のようだ。中日友好医院国際部の検査料が例外的なのだろう。

6.検査を受けての感想とまとめ
PCR検査は被検査者としては非常に簡単であった。煩わしいところがあるとすれば、それは検査のための事前の情報収集と、予約の段階かも知れない。中国の病院での受診の手続きについての事前の知識がないと、これらをどう進めてよいかわからないかもしれないが、問い合わせればすべて答えてくれるので、さほど心配はいらない。北京での自主的なPCR検査は誰でも気軽に受けることができると言ってよい。

以上、中国・北京でのPCR検査の体験である。

7.所感
中日友好医院でも航空总医院でも、検査結果をスマホアプリで受け取ることができる。この方法では時間や移動の労力をまったく必要としない。無駄で危険な接触を避けることもできる。また、どちらの病院でも検査結果出力用のマシンはPCR検査以外の検査結果にも対応していて、セルフサービスで検査結果を印刷することができる。PCR検査の陰性証明書取得など、医師からの直接の説明やアドバイスを必要としない検査の結果をスマホやセルフサービスで取得できるのは便利というほかない。中国らしく、こういうところでもICTがすっかり生活に溶け込んでいる。この便利さを更に推し進めるならば、医師からの説明や指示は必要に応じて自宅の情報端末からリモートで行うこともできそうである。

市内を歩いていると、病院の敷地の空いている場所にPCR検査のためのプレハブ造りの簡易な建物を見かける。その前では検査に来て順番を待つひとの長い行列や人だかりもある。密集の状態のこともある。航空総医院では通常の外来診察を行う建物でPCR検査をしているのであるが、中日友好医院国際部のように普段は外来に供しないと思われるスペースを使ったり、屋外スペースに設置された簡易施設で検査をする理由は一般の外来との接触を避けるためなのであろうか。屋外の開放空間で並んで検査の順番待ちをすることで密閉状態を避けることもできる。この点は北京の医療関係者に聞いてみたいところである。

検査に来ている多くのひとや検査の順番を待つ長い行列を見ると、検査の場所を確保するためには施設を増設しないと収容しきれないということもありそうだ。それらの仮設で設けられた多くの検査施設が大量のPCR検査数を支えるうえで重要な役割の一端を担っているのかもしれない。報道は各地で1日に万単位のPCR検査を実施していると伝える。増設された検査場では大量の検査サービスを提供している。被検査者の側は手間のかからないシンプルな手順であること、そして、(見た限りにおいて)検体採取は簡単な作業であることは体験してみてわかった。分析と判定の段階でどのような作業がなされているのかは承知してないが、おそらく機械で自動的になされるのであろう。そうであるなら、ニュースで伝え聞く膨大な検査数も、なんら驚くべきことでも不思議なことでもなさそうである。






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