[秋ピリカ]答えを知らないけれど。
「おはようございます!私はいま、晴れ渡る青空と朝日に照らされる一面の海が広がった、瀬戸内海に浮かぶ島にあるレモン農家にお邪魔しています!」
テレビの画面に登場した、新人レポーター・アヤノは、カメラに映らない場所から番組ディレクターが見せる、フリップ状の紙に大書きされた台本を読み上げている。
「…まだまだ新人だから、場数を踏めば慣れるさ。」と番組ディレクターから言われたが、台本は予めもらっているのだから、もう少し台本を読み込んで、いかにも読んでいるような感じを無くさなければならない。
ひと手間掛かるけど、メールで届いた台本を一度紙に印刷して、大事なところに線を引っ張って読み込まないと。ペラペラ台本をめくっては、読み方の確認とともにイントネーションを記した線を書いていく。
これから中継のお仕事が増えるだろうから、もう少し紙を買っておこうかな。それにプリンターも、たくさん印刷するならレーザープリンターだよね、などと、密林通販のサイトを眺める。
会社のレーザープリンターを使えば早くていいんだけど、急に内容が変わることもあるし、出来るだけ手元ですぐ印刷できるようにしておきたいのよね。
「昨日は泊まりだったから疲れちゃって。ヒロシくんの手料理が欲しくなっちゃった。ねえ、夕飯作って? あ、そうそう!取材先のレモン農家から頂いた、大量のレモンどうしようかなー」と、アヤノが続けざまに言う。
ヒロシは思い出したかのように、「そういえば会社の同僚にレモンパスタを作るヤツがいてさ、レモンパスタを作ってみようかと思うんだ。珍しいでしょ? レモンパスタって。」とアヤノに提案する。
と提案はしてみたものの、レモンパスタの作り方を確認したことはないし、どうやって作るのだろうか。「ねえアヤノ、美味しそうなレシピを探して印刷しといて。」と、逆に丸投げしてみる。
ペーパーレスの時代と言われてるけどメモできるし、結局紙が便利で印刷しちゃうんだよね。台本は守秘義務もあってそのままポイできないから、ちょっとだけ厄介だけど。レシピを探して、あとはヒロシにお任せ。
熱したバターにレモンの果汁を入れ、茹で上がったパスタと混ぜる。おろし金で皮ごとすりおろしたレモンと粗挽き黒胡椒、それにお土産で買ってきた瀬戸内の塩で和えて完成。
「レモンパスタって、これでいいのかな?」とヒロシが尋ねる。味見するが、私もレモンパスタの「正解」は知らない。レシピ通りだから多分合ってる…はず。レモンの風味がすればレモンパスタ、だよね???
「美味しかったからいいや。ごちそうさまー」と言いながら、疲れを癒やすかのように、レモンサワーに瀬戸内の追いレモンを。爽やかで熱い夜は更けていく。
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創作は書かないので、折角の機会とばかりに寄せてみました。お題は「レモン」ではなく「紙」なので、紙をメインに持ってきたつもり。エントリーすることに意義がある精神ですので、何卒御容赦を🙇
なお、レシピは検索上位に出た「日本パスタ協会」のサイトを参考にしました。前作に引き続き、またお料理ネタになっちゃいました。あやしもさんの「ピリカ文庫」投稿作品の「レモン」と、お題の「紙」からの着想です。
豆島さんのところでは、千奈津さんが「マイヤーレモンソーダ」のCMに出てましたので、こちらでは転職したアヤノさんを新人レポーターとして起用してみました🍋
あやしもさん流の「レモンパスタ」の作り方はこちらから。
こちらの企画に参加しています。締切は2024年10月9日いっぱい。皆様ふるって応募の程を☆