shutterstock_1310312680_-_コピー

オンライン化を阻むもの

 EMSも3/11の青野さんの講義を以て2期のレギュラー講義が3/28の最終講義を残してほぼ終了し、参加者は最終レポートに追われますが、事務方としてはちょっと一息といったところ。5/13から始まる3期はすべてオンラインに変更という形の開催になりそうで、これはこれでまた進化が問われそう(真価が問われそう)な状況です。

 それはそれとして。

 この期間、ふと思いつきで、Facebookにこんな投稿をしてみました。

スクリーンショット 2020-03-15 06.19.37

 思いついたきっかけは、EMS の田口ランディさんの単科コース「クリエイティブ・ライティング」がオンライン化することになり、その事務役、ホスト役の方のために、カンタンな練習をしたこと。こうすればトレーニングできるなーと思ったので、そのプログラムの実験も兼ねて、数名やってみようかな、と。

 結果、想像の2~3倍の方からのメッセージをいただき、こりゃ個別対応は難しいと、1回2人で実施させていただきました。そしてほぼほぼ皆様に喜んでいただけたようで、良かったです。実は、いくつか間違った情報も伝えてしまいましたが、まあ、無料ですし、使っていけばすぐわかる間違いなので、お許しください、ということで。

 そんな実践の中、いくつかわかってきたことがあり、その体験からの学びをシェアしたいと思います。

Zoomの導入セミナーの質は高くないらしい

 ここでディスるつもりはないのですが、Zoomさんが自前でやっている導入のための無料セミナーは、参加者にしてみると機能説明てんこもりでITリテラシー意識高い系の人向けで、はっきり言って導入を阻む要因にもなっているようです。そんなに難しい機能を使いこなせない…という悩みを相談されました。

 私がやった2時間体験講座の内容は下記の通り。資料は一切、使わず、対話と実践のみ。

・チェックイン(Zoomを使いたい場面や理由)
・チャットの練習
・共同ホストの練習(リネーム、ミュート、レコーディング)
・ホストの練習(ブレイク)
・画面共有の練習
・ミーティング設定の説明
・セミナー時の役割分担について
・オンラインセミナーでのマインドセット
・質疑応答
・チェックアウト(感想のシェア)

 構成はこんな感じ。これで充分かと思います。これ以上の機能説明、あるいは外部サービスとの連携、必要かしら?

成功体験の壁

 参加いただいた方のうち何名かは、Zoom体験があり、それをさらにレベルアップしたい、という方でしたが、その他には、他のツールを使いこなして居たり、あるいはリアルでかなり成功している方々で、どうも新しいZoomというツールを導入するにあたり、心理的抵抗がある方もいらっしゃいました。

 私としては、そういう方が、「このツール、すごいな。なんでこれまで使ってなかったんだろう?」という感想をいただくのが嬉しかったです。しかし、逆に言えば、コロナ騒ぎがなければ、その方はこのチャンスを見逃していたわけで、もったいないところでした。

 これは今回のことに限らず、食わず嫌いになっていること、というのは、人やビジネスの進化を阻むものなんだなぁ、ということを感じました。

 私がZoomの可能性に目覚めたのは、昨年、あるNPOさんから依頼を受け、複数拠点をつないでオンラインによるコーチングのトレーニングを実践したことから、でした。なんだ、集合しなくても、ちょっとした仕掛けでオンラインでできるじゃん。そういう実感から、いろいろ実験的なことを重ねていました。今回のシェアはそんな体験からの学びのノウハウ化、という意図が強かったのでした。

組織のオンライン化を阻むもの

 いっぽうでひとつ悲しい話もあり、レガシーな日本企業では、会社のセキュリティ部門がZoom使用をブロックしてしまい、導入できないという声も聞こえました。これ、Youtubeについても他のところから言われていますが、まあ、こういう会社はリモートワークできないだろうなぁ、と思います。

 こういう会社はまあ、個人的には早く潰れて欲しいのですが、情報系の国家資格である ITストラテジスト資格保持者である私として、ひとつだけ言っておきたいのは、こういう会社が「セキュリティ」と言っているのは、実際には「セキュリティ」ではなく、社員への不信です。

 Youtubeをブロックしているのは、そっからウイルス感染が心配なのではなく、サボって動画を見る奴が出てくると思っているから。

 聞くと、Windows付属のSkypeも、イントラ内使用に限定しているとか。

 本来、会社のIT部門というのは、IT活用を推進し、よりイノベーションがおこりやすい環境を整えるお仕事のはずです。「やってみなはれ」という態度であるべきが、「何かコトが起こっては大変」という火消し部門になっている可能性がある場合、こういう「セキュリティ」運用になっている可能性が高いです。

 まあ、マクレガーのXY理論 で言えば、完全にX理論の組織文化を持った会社ですね。こういう会社に対して、オンライン化を導入するにはどうすれば良いのでしょうか?という質問に関して、私の答えは、「やめときなさい。そして、もっと良い会社とつきあいなさい。でないとロクなことにならないから。」というものです。

 こういう文化の会社を信頼していると、いつか何らかの責任を取らされることになったり、昵懇にしていた担当者が変わった瞬間に方針転換されたりと、まあ、ロクなことにならないというのが、曲がりなりにも数年間、研修会社の社長をやっていて思うことでした。

 でも、そこに居る個人個人はその現状を憂いていたりするので、どうしてもという場合には、会社のシステム担当者の責任にならないように、個人レベルでのちょっとしたイノベーションを推進する、という提案が正解かと思います。

オンライン化を阻むもの

 オンライン化、というと何かたいそうなことのようにも見えますが、実際には単にツールを使いこなすだけのことです。Zoomというツールは会議やワークショップやセミナーや研修をオンライン化するのに極めて使い勝手の良いツールである、というだけで、実際にオンラインでやるかどうかはTPOに応じて考えれば良いと思います。それはモノを切るのにカッターを使うのか、ハサミを使うのか、包丁を使うのか、というくらいの話です。

 しかし、単なるツールにもかかわらず、心理的抵抗だの、人への不信/信頼感だの、過去の成功体験だのといった、おおよそメンドクサイものが絡んできてしまうのはなぜなんだろう、と思ったりもします。

 それは、おそらくITという名称が示しているように、そこには情報の取り扱い方の変化、というものがセットになっているから、のように思います。

 我々の生命を支えているのはDNAという、いわば「情報」です。そして我々人間がこれだけはびこっているのも、「文化」「文明」といった「情報」を「脳」にため込み、「言葉」によって伝達してきたことに成功要因があります。

 我々は自分達で思っている以上に、この「情報」の取り入れ方、つまりは、「情報処理のパターン」にこだわりを持っていて、それを変えることに抵抗があるのだと思います。例えるなら、体内に侵入してくる「ウイルス」のような未知の情報と、どう折り合いをつけるのか、そこに最初は混乱が生じるのだと思います。

 例えば、コーチングのトレーニングをすると、非常に疲労感があります。これは、脳がこれまで使っているのとは違う働きを要求され、それで疲れるからです。Zoomなども同じです。これまで使っていない脳を刺激される経験をするので、結構、疲れる方も多いのではないかと思います。その後、慣れてきて、ウイルスに対する耐性を獲得するかのように、脳が適応していくと、疲れなくなってきて、使いこなせるようになる。

 つまり、この「脳の疲れ」というのは、実は脳を活性化させ、新しいシナプスのつながりを作るチャンスなのです。この新しいつながりこそ、若さの秘密であり、イノベーションの源泉なのですが、実は、これはとっても疲労するものでもあります。

 疲れるからやりたくない、という死にゆくだけの人や組織については、わざわざオンライン化だのといった新しいことにチャレンジする必要はないと思います。いやいや、まだまだ学びたいし、新しいことをしたい、あるいは、イノベーションを起こして組織を活性化させたい、そう考えているのでしたら、様々な反対意見はあるでしょうが、オンライン化を推進したら良いのではないか、と思います。

 実際、オンライン化したら、家庭には居場所がないことに気づいたとか、子どもが家に居たら仕事ができないことに気づいたとか、そういう、これまで、よくそれで人生やってきてたね?と客観的には思えるような声も多数、あがっています。(シングルの人でも、ここにきて、ひとりの人生は寂しい、ということに改めて気づいてしまい、これからパートナーを探す方も増えるかもしれません。)

 こういうことも含めて、これまでと違う世界、それはきっと様々なコンフリクトがあるでしょうが、それを乗り越えた先の楽しい世界が待っている。

 そんな風に、今は思っています。

 あなたはそこに乗っかる人でしょうかね。それとも、このあたりで降りる人でしょうかね。

 私の在り方は常にコーチですので、もちろん、降りる方を受け入れつつも、困難や困惑があっても先に進みたいという人を、これからも応援したいと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?