ビジネスモデルを図解していく過程を全公開します
こんにちは。
図解総研メンバーのチーズです🧀
今回は図解総研のサークル「ビジネスモデル図解」の中でつくったビジネスモデル図解と、図解していく過程を全公開します!
まずは今回図解したビジネスモデルと事例の解説です!
●ビジネスモデル図解 《Pepper Pantry》
●事例解説 《Pepper Pantry》
このビジネスモデルの面白い点は新型コロナの影響で需要がなくなってしまった飲食店向けの業務用食材サプライヤーと、なかなか食料が手に入らない一般消費者を結びつけることで、モノの流れと雇用を生み出しているところ。
運営会社はもともとは飲食店向けに複数の業務用食材サプライヤーへの発注を効率化するサービスを展開していたが、新型コロナの影響で飲食店需要は激減し環境は一変。
飲食店自体の危機は報道も多くされ様々な支援策が打ち出されている一方で、普段は飲食店を陰で支える業務用食材サプライヤー、特に地域密着型の小~中規模の事業者は新たな販売先を見つけられず深刻な状況に陥っていた。
この状況が続いて業務用食材サプライヤーの多くが倒産してしまえば新型コロナが終息しても飲食店は食材を入手できなくなってしまうかもしれない。
そういった飲食店を支える業務用食材サプライヤーに新たな販売先を提供するべく、大きく事業をピボットして生まれたのがこのサービス。
業務用サプライヤーは販売する商品を Pepper Pantry のサイトに掲載し、一般消費者からの受注を受けたら指定日に直接自宅まで配送する。
業務用食材は飲食店向けの大きなサイズなモノが多く一般消費者用のサイズにリパックする手間が発生しているが、失業者が多い中で新たな雇用を生み出す事にもつながっている。
一般消費者は Pepper Pantry のサイトで自分の住むエリアを選択すると、そのエリア内で配送可能な食材が表示され、サイト上で発注と支払いを済ませた後に商品を自宅に配送してもらえる。
Pepper Pantry はこうしたプラットフォームを提供し、支払額の一部を手数料として受け取ることで経済合理性を成り立たせている。
この状況がどれだけ続くのかは誰にも分からないし、飲食店やそれを取り巻くサプライチェーンの状況は刻一刻と変わり、一部は不可逆的な変化となるかもしれない。そうした中で今回大きく事業をピボットさせて新たなビジネスモデルを生み出した会社が、今後もどのように柔軟にビジネスモデルを変化させていくのかにも注目したい。
図解担当: チーズ
レビュー担当: きょん
以下のnoteではこの他にも100個のビジネスモデル図解を掲載した書籍
「ビジネスモデル2.0図鑑」
を全文公開しています!!
この記事でビジネスモデル図解に興味を持って下さった方は
是非読んでみて下さい!
★ビジネスモデルを図解をしていく過程★
今回のビジネスモデル図解は冒頭にもあるように図解総研のサークル「ビジネスモデル図解」の中で
図解 → レビュー → 図解修正 → レビュー → 図解修正 →・・・
を繰り返して完成させています。
図解はサークルメンバー限定でアクセス出来る共同編集可能なGoogleスライドを使ってオンライン上で行い、レビューもオンライン上でコメントをつけてもらう形で進めていきます。
これによりサークルメンバーは図解の進め方やコツを共有する事ができます。
また、Googleスライドは同時編集が可能なので、zoomなどでオンライン通話をでレビューを受けながら図解を修正する、という事もできます。
(今回はテキストベースのみでのレビューですが、そのうちオンラインレビューの様子も公開出来ればと思います!)
今回は普段サークルメンバーだけしか見ることの出来ないビジネスモデルを図解していく過程を特別に全公開します!
ちなみに、今回作ったver.1の図解はこちら
完成版と比較すると、かなり構成が違っているかと思います。
このver.1をつくるところから、どのような紆余曲折を経て完成版図解が出来たのかを解説していきます。
・図解ver.1の出来るまで
まずはこのビジネスのファクト整理や関連記事を調べたうえで
・このビジネスモデルを一言で説明すると?
・逆説の構造(このビジネスモデルの独創性はどんな点か?)
を考えます。
今回は特にコロナ禍で窮地の業務用食材サプライヤーに、従来は業務用食材を提供できなかった一般消費者を新たな販売先として提供している点が面白いと感じ、逆説の構造の主軸に据えてみました。
さて、ここから実際にビジネスモデル図解をしていきます。
まずは中央の縦列の主体を考えます。
一番下段は運営会社、中段はサービス名、一番上は利用者です。
下段、中段はファクト整理からほぼ決まるので、利用者を誰に置くかを考えます。
今回の場合、利用者としてこのサービスにお金を払って利用しているという点から「一般消費者」を利用者に置いてみました。
この時点で事業者が事業にかける運営費、事業から事業者が得る売上、利用者から事業に対する支払いの矢印も加えました
次に中段の左側の主体を考えます。
中段の左右にくる主体を考えるのはビジネスモデル図解をするうえで非常に大切で難しい部分です。
※詳しくは↓のnoteを読んでみてください。
ここには事業者がこのビジネスモデルを通じて利用者に何を提供しているかを表します。
今回の場合は一般消費者にこのサービスで提供するモノの「業務用食材」を主体に置いてみました。
また、この業務用食材は一般消費者に配送されるので配送の矢印もついでに加えました。
続いて中段左です。
ここには事業者が先ほどの中段左の主体をどうやって提供しているか(≒仕組みや経済合理性を成り立たせる要素)を表す主体を置きます。
ちょっとここは悩んだのですが、ウェブサイト上で一般消費者の発注情報を効率的に処理する
「発注システム」
を主体に置きました(やや抽象的かも・・・?)
発注システムはPepper Pantryに含まれるので従属の線で結びました。
だいぶ出来てきました。
次は四隅に置く他に関係している主体を考えます。
ここには網羅的に関係者を置くのではなく、このビジネスモデルを成り立たせる上で重要な主体を置きます。
今回の場合、「業務用食材」を配送し、支払い金を受け取る「業務用食材サプライヤー」を事業者側に近い関係者として下段左に置いてみました。
また「業務用食材」を所有しているので従属の関係で結んでおきました。
ここまでくれば、あと少し!
モノ、カネ、情報の流れが循環するようにそれぞれの主体の間を矢印で結びます。
この時守るべきルールとしては以下のようなものがあります。
① 隣り合う主体同士の矢印は2本に抑える
② 隣り合わない主体同士を結び付けないようにする
今回は発注システムを介してやりとりする情報と業務用サプライヤーへ支払われるカネの矢印を追加しました。
最後の仕上げです。
初めてこの図解を見た人でもこのビジネスモデルを分かりやすく伝えるための情報を吹き出しを使って記入していきます。
この時、情報を詰め込み過ぎて図解を見てくれる人を疲弊させないよう注意です。
さあ、やっとver.1の図解が完成しました!
・レビュー1回目
ビジネスモデル図解をつくる上で大切なのは完成した図解を誰かに見てもらい、レビューをしてもらうことです。
どうしても一人で図解をするとバイアスがかかって前提情報の説明不足や難しい単語を使ってしまいがちです。そこで、、、
・図解の基本的なルールを守れているか?
・伝えたいメッセージが図解で分かるか?
・分かりづらい表現、情報の過不足はないか?
といった観点でレビューをしてもらいます。
今回は図解総研のきょんにレビューをしてもらいました!
図解の基本的なルールは図解イベントや講演などで得たノウハウを一冊にまとめたスマート新書も発売されているので興味のある方はこちらも是非見てみてください!
(スマート新書の内容はこちらのサイトでも無料で見ることもできます)
ちなみに、
サークル「ビジネスモデル図解」では以下の流れで図解のレビューをしています
図解をした人がサークル掲示板でレビューの依頼する
↓
レビュー担当がGoogleスライド上にコメントをつける形でレビューを行う
↓
レビュー担当がレビューの完了を掲示板でお知らせする
※実際のサークル内掲示板でのやり取り
※実際のGoogleスライド上でのレビューの様子
※実際のサークル内掲示板でのやり取り
色んな点をアドバイスしてもらえました❗️
分かりづらい表現や説明不足のレビューポイントも沢山ありましたが、
今回の一番大きなレビューポイントは
利用者の位置に「一般消費者」を置いていることで
「伝えたいメッセージと図解がズレてるのでは?」
という点です。
これは確かに💡
事例解説にもあるように、今回このビジネスモデル図解で伝えたかったのは
新型コロナで窮地に陥った「業務用食材サプライヤー」が
このビジネスモデルによって新たな販売先を確保できる
ということです。
ver.1の図解では、その主役となるはずの「業務用食材サプライヤー」が左下の重要度がやや低い関係者として表現されています。。。
これは図解を修正するうえで、大きな方向転換が必要そうです💦
・1回目のレビューを受けて図解をver.2に修正
ver.1と同様に、まずは中央縦列を考えます。
レビューで気づいた点を反映し、中央縦列の1番上の利用者の位置に「業務用食材サプライヤー」を置きました。
この時ついでに「業務用食材サプライヤー」が「Pepper Pantry」から受け取る商品代のカネの矢印も追加しておきます。
この時点で「業務用食材サプライヤー」へ払う商品代のカネを出す主体がいないのでこれを提供する主体として中段右に「一般消費者」を置きました。
さて、そうすると中段左に置く主体はなんでしょうか?
これはつまり「Pepper Pantry」は「業務用食材サプライヤー」に何を提供しているかを考えるということです。
ここはかなり悩みましたが、「業務用食材サプライヤー」に新たな販売先として「一般消費者向け販売サイト」という情報媒体への商品掲載をする権利を提供している形にしてみました。
大枠の構成ができたので、四隅を考えます。
重要な関係主体として「一般消費者」へ配送される「業務用食材」を右上に置きました。
次に矢印の整理です。
中段左に置いた販売サイトの商品情報が「一般消費者」に流れるよう情報の矢印を追加しました。
最後に補足情報を追記します。
1回目のレビューしてもらった説明不足な点や蛇足な説明の省略も含めて吹き出しで記入しました。
図解ver.1とはだいぶ構成が変わりましたが、伝えたいメッセージである
「業務用食材サプライヤー」に新たな販売先を提供している
という点が一目で分かりやすい図解ver.2が完成しました!
・レビュー2回目
1回目に引き続き、きょんにレビューをしてもらいました。
※実際のGoogleスライド上でのレビューの様子
2回目の重要なレビューポイントは
「一般消費者向け販売サイト」(中段左)と、それを利用する
「一般消費者」(中段右)の図解上の距離が遠く、
図解を見た際に“利用していること”が分かりづらくなっている
という点です。
なるほど💡
確かにこの2つの主体の距離が遠いのは、図解を初めて見る人にとってビジネスモデルの流れを理解するのを妨げてしまいそうです。
ver.1からver.2ほどの大きな構成変更は無いにせよ、ここは修正が必要そうです。
・2回目のレビューを受けて図解をver.3に修正
さてさて、レビューポイントの
「一般消費者向け販売サイト」(中段左)と、それを利用する
「一般消費者」(中段右)の図解上の距離が遠く、
図解を見た際に“利用していること”が分かりづらくなっている
をどうすればもっと分かりやすく出来るのでしょうか?
アプローチとしては以下の2つがあるかと思います
・主体の配置を見直す
・主体自体を見直す
前者のアプローチ(例えば「一般消費者」を左上へ移動)の場合、主体の数を1つ増やす必要がありそうです。
ビジネスモデル図解は3×3の最大9つの主体を登場させることができますが、主体の数は増えれば増えるほど情報量が増え図解を見る人に伝わりづらいものになってしまいます。
そのことからも、むやみに主体の数を増やすのは避けたいとことです。
そこで今回は後者の主体自体を見直すアプローチで進めてみます。
中段左の「一般消費者向け販売サイト」はやや「一般消費者」がこのサービスを利用する視点の主体名なのかもしれません。
また、今回の利用者である「業務用食材サプライヤー」の視点に立つと
「販売サイト」を提供されているということよりも、「販売サイト」の持つ「販売リスト」へ商品掲載する権利が提供されていると考えた方がメッセージが伝わりやすい気がします。
販売サイトとしての役割は中段中央の「Pepper Pantry」自体に持たせる形に補足説明を変更し、中段左の主体を「一般消費者向け販売リスト」と変更しました。
これに加えて、2回目のレビューでアドバイスをもらった点の補足説明の調整をしました。
これで図解ver.3が完成しました!
・3回目のレビューはOK! 図解完成!!
サークル内の掲示板で再度きょんにレビューをしてもらったところ、OKを貰えました!
これでやっと図解が完成です!
(ちなみに気が付いた方は少ないかと思いますが、スライドの右下に図解完成の印として図解総研のロゴを入れています)
改めて↓のver.1と比べると、伝えたいメッセージが分かりやすくなっているかと思います。
以上が今回の「Pepper Pantry」を図解していく過程の裏側でした!
・おわりに(サークルの紹介)
今回はver.3で完成しましたが、ビジネスモデル図解に正解はありません。
ビジネスモデル図解はコミュニケーションツールであり、図解を見る人に伝えたいメッセージが伝えるのが目的です。
このメッセージや目的が変われば当然、目指すべき図解も変わってきます。
今回はレビューを受けたことで、図解で伝えたいメッセージをより分かりやすく表現することができました。
サークル「ビジネスモデル図解」ではこうした形で、世の中の面白いビジネスモデルを図解とレビューをしながら情報発信をしていきたいと考えています。
ガッツリ図解したい人から、ゆる~くビジネスモデルに関する情報を集めたい人まで、ビジネスモデル図解に興味のある方はお待ちしてます!
※ビジネスモデル図解サークルでは
情報がオープンソースとなっている事例を扱い、公開情報(プレスリリース、記事)を元に制作し、完成した図解は公開すること、を前提として活動します。
社内資料など、公開できないクローズドな情報をもとにした図解や、その他ビジネスモデル図解に関わるコラボレーションを希望される方は以下のHPからお問い合わせください。
また、↓ではビジネスモデル図解をする為のツールを無償で配布しています。
サークルに入る前に自分でもビジネスモデル図解にチャレンジしてみたいと思って下さった方はこちらもオススメです。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!