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BI-TO#04 片上の歴史にふれるショートトリップ!江戸時代から続く老舗の宿「ゑびすや荒木旅館」
地元だからこそ行ったことがない場所、というのは意外と多いもの。
その代表格が「宿」ではないでしょうか?
そこで、岡山県備前市のローカルマガジン「BI-TO」最新号では、「泊まってDiscover Bizen』をテーマに、地元・備前の「宿」をご紹介!週末にお友達や親戚と滞在したり、のんびりマイクロツーリズムを楽しんだり……。この冬は備前にお泊まりして楽しんでみませんか?泊まってはじめて気づくまちの魅力もあるかも!
第1弾は、江戸時代からの歴史を持つ片上の老舗旅館「ゑびすや荒木旅館」の紹介です。
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「ゑびすや荒木旅館」は、約170年の歴史を持つ老舗旅館。その歴史は江戸時代までさかのぼります。廻船問屋「ゑびすや」として商いを始め、幕末(1856年)には料理旅館を創業。以降、備前を訪れる旅人や、さまざまな文人墨客を迎えてきました。現在旅館を支えるのは19代目女将の荒木陽子さん。取材のために訪ねると、笑顔で出迎え、荒木旅館と片上のまちの歴史や楽しみ方についてお話してくれました。
創業170年、多くの文人墨客が訪れた宿
「ゑびすや荒木旅館のはじまりは、江戸時代末期のこと。それまで廻船問屋「ゑびすや」として、瀬戸内海を渡る船を相手に商いをしていたのですが、時代の変化を受け、幕末に料理旅館に生まれ変わりました」と女将の荒木さん。
「廻船問屋だった頃は、この建物のすぐ裏まで海だったんですよ」と示す場所には、当時の名残で、海の方向を向いた大きな達磨大師像が鎮座しています。
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現在は荒木旅館のある場所から片上湾まで距離がありますが、昔は海とまちとの距離が今よりずっと近く、ゑびすやのような廻船問屋と、そこを訪れる船員たちで賑わっていました。また、旅館の目の前には多くの旅人や行商人が行き交う旧山陽道(現在の商店街)が通り、片上のまちには宿や商店がひしめき、多くの人や物や情報が集まる場所として栄えていました。
さらに、大正時代には片上鉄道が完成し、その後は耐火煉瓦の一大産地として発展。最盛期にはなんと100以上の店が商店街に軒を連ねたそう。旅館の外に出て、裏通りを散策すると、そんな時代の空気を感じるレトロな建物と出会うこともできました。
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写真は旧薬局を改装したお店「ゆうゆう舎」
荒木旅館の館内を案内してもらうと、この場所を訪れたさまざまな文化人のエピソードも知ることができました。美空ひばりが歌った大広間、柴田錬三郎が愛した部屋、司馬遼太郎が『これは大事に残しなさい』と言った明治ガラスの窓……そうしたひとつひとつの部屋に宿る思い出を、時代を超えて愛しむように荒木さんは語ってくれました。
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お客さまを迎え続け、作家・柴田錬三郎もこの部屋を愛したといわれています。
旅館の魅力に光を当て直した3年間
そんな片上の歴史と共に歩んできた荒木旅館ですが、2020年に転機が訪れます。新型コロナウイルスの流行です。ステイホームの煽りを受け、なかなか予約の入らない期間が続きましたが、荒木さんは「宿のあり方を見直し、新しいことに挑戦するチャンスかもしれない」と考えました。
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「それまで、旅館にいらした著名な方々のことを発信しようともしていなかったんです。“プライベートで来てくださったのだから”という先代の教えもありましたから。でも、それをお伝えすることで、お客様がここで過ごす時間がよりゆたかなものになり、片上全体の歴史を感じてもらうきっかけにもなると考え、思い切って方針転換することにしたんです」
新たにWEBサイトを開設し、SNSで情報発信をはじめた荒木さん。すると歴史好きなお客様が増え、さらに大正レトロな電話室や赤絨毯の應接室をSNSで見た写真好きな若者たちが「ここで撮影したい!」と遠方からわざわざ足を運ぶようにもなりました。
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片上八景——まちの歴史に思いを馳せる小さな旅
また、コロナ禍を機に、地元の宿でゆっくり過ごす新しい旅の形が広がりました。荒木旅館でも、地元の方が訪れ、お昼にチェックインを済ませて近所を散策し、夜は宿でゆっくり食事を楽しむことが増えたと言います。
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「その頃から『片上八景を自分の足で巡ってみたい』と仰るお客様も増えました」と荒木さん。片上八景とは、歌川広重の「近江八景」にちなみ、片上湾周辺に実際にある8つの景色が描かれた日本画のこと。荒木旅館の大広間に飾られたその絵には、桜の名所・茶臼山に続く「葛坂(くずさか)の晴嵐」、月を間近に感じる「城山の秋月」、除夜の鐘が響く「真光寺の晩鐘」など、片上の人々が愛してきた四季の風景が描かれていました。
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「コロナ禍の間に、お客様によりゆたかな時間を過ごしていただくために何ができるか考える機会が増えました。これからもお客様のご要望に誠心誠意お応えしていきたいと思います。訪れた皆様には、片上の歴史に思いを馳せながらゆっくりとお過ごしいただけたら嬉しいです」と荒木さん。
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秋冬は、特に魚の美味しい季節。日生の牡蠣のほかにも、脂が乗り旨味を増した秋サワラの刺身や炙り、鱧しゃぶなどの旬の料理を、岡山の地酒と備前焼のうつわと共に楽しめます。
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明治時代に賓客をもてなしていた、美しい赤絨毯が目を引く應接室もみどころの一つ。長い間、閉鎖していましたが、コロナ禍を機に改修して公開したそう。荒木さんにとっては「父がクラシックを聴いていた思い出の部屋」だそうです。
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館内にはさまざまな文人墨客を迎えた部屋が並びます。写真は明治天皇が岡山行幸の折りに昼食をお召し上がりになった「南天の間」。現在は会食やランチのお客様をお迎えしています。
ゑびすや荒木旅館のあるJR西片上駅までは、岡山駅からも姫路駅からも電車で約1時間。この冬のおでかけに、1泊2日、歴史ある宿でゆっくりステイしてみるのはいかがですか?
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■ゑびすや荒木旅館
岡山県備前市西片上1280
☎︎0869-64-2004
全7室、1名税込9,900円〜(朝食付)
https://ebisuya-araki.jp/
■荒木陽子さん
荒木家19代目、「ゑびすや荒木旅館」女将。
料理長の夫と旅館を継いで、今年で丸30年。
この記事は、岡山県備前市のローカルマガジン「BI-TO」で掲載したものです。他の記事も、noteもしくはPDFからご覧いただけます。ぜひあわせてチェックください。
■ISSUE #04「泊まってDiscover Bizen」目次
・片上の歴史にふれるショートトリップ
江戸時代から続く老舗の宿「ゑびすや荒木旅館」
・耐火煉瓦のまち・備前を感じる
「レンガ広場のコテージ」
・備前焼のある暮らしを体験
暮らすように泊まる宿「備前ホテル陶」
・見逃せない日生宿3選 / まだまだあります宿泊施設
・Do you know…? / 大人のしゃべりBAR開催レポート
2024年12月20日発行
企画・発行:BIZEN CREATIVE FARM
制作:南裕子、吉形紗綾、池田涼香、松﨑彩、加藤咲、藤村ノゾミ
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