黄色ブドウ球菌による人工関節感染へのリファンピシン
(某ブログからのお引っ越し)
人工関節感染に対してリファンピシンを併用する場合があります。
リファンピシンは黄色ブドウ球菌に対して単剤治療すると容易に耐性化してしまうので,必ず他剤と併用しますが,「いつから」,「何と」併用するべきかは定まっていません。
最近出版された以下の669例を解析した観察研究
によると,
・リファンピシン併用は治療失敗のリスク減少と関連 (OR 0.30, 95% CI 0.20 – 0.45)
・リファンピシン併用群の中で,
「フルオロキノロンまたはクリンダマイシン以外との併用」(OR 10.1, 95% CI 5.65 – 18.2),
「外科的デブリ後5日間未満でリファンピシンを開始」(OR 1.96, 95% CI 1.08 – 3.65)
は治療失敗増加と関連しました。
これまで菌血症のデータを外挿して,フルオロキノロンと併用することが多かったですが,クリンダマイシンでもよさそうなことは有益な情報です。
また,外科的デブリからリファンピシン併用開始までがあまり早すぎるのはよくないようですが,これはなぜでしょうか?
これは菌量が多すぎる時期に開始してしまうと,単剤使用しているのと同様に耐性化の懸念があるためだと思います。例えば,黄色ブドウ球菌の感染性心内膜炎でリファンピシンを併用すると21%でリファンピシンの耐性がみられたという報告があり,専門家の中では菌血症や心内膜炎では,血液培養が陰性化するまでリファンピシンの併用を待った方がよいという意見を持つ人もいました。
その後,黄色ブドウ球菌の菌血症自体にリファンピシンの併用は推奨されなくなっています(148ページもあるARREST RCT参照)。
Beldmanらの研究のFigure 3をみると,デブリ後10日すぎぐらいに開始した方がよさそうに見えます。
リファンピシンを併用する際には,重大な薬物相互作用がある薬を使っていないかの確認が必要です。これがクリアできない場合は,併用を諦めざるを得ないこともありますので,他に多くの薬を服用している患者さんでは,主治医や薬剤師さんとよく相談する必要があります。
ちなみに米国の文献ではrifampin,その他の国の文献ではrifampicinと表記することが多いですが,同じものです。
リファンピシンの相互作用について,臨床の役には立たないことを↓にまとめています。