肺炎球菌は胆嚢炎を起こすか?
発熱,右上腹部痛でのために胆嚢炎の疑いで入院した高齢患者さんの血液培養から肺炎球菌が検出されました。肺炎球菌による胆嚢炎でよいでしょうか?
胆汁酸が肺炎球菌の自己融解を促進するため(この性質を利用して他のレンサ球菌との鑑別で胆汁溶解試験があります),肺炎球菌が胆道感染症の原因になることは稀です。
一度だけ,胆汁培養から肺炎球菌が陽性になったのを見たことがあり,驚きました(確か,胆道系にチューブが留置されていた人でした)。
調べてみると,意外と肺炎球菌による胆道感染症の報告がありました。
これは静岡がんセンターからの報告で2002年から2015年までに胆汁培養から肺炎球菌が検出されたのが20例,すべて肝胆膵腫瘍がある患者で,20例中19例はプラスチック胆道内チューブが留置されていたそうです。
こちらは名古屋大学病院の報告で2006年から2014年までに胆汁培養または血液培養から肺炎球菌が検出され,Tokyo guideline 2013により胆管炎または胆嚢炎と診断された人が10例,やはり10例中9例は胆道系に問題があり,デバイスが留置されていたそうです。
胆道系にデバイスがあると,肺炎球菌が胆道感染症を起こすことはあるようです。
冒頭の患者さんは,来院時のCTで胆嚢炎が疑われたものの,その後の超音波,MRCPでは胆嚢炎,胆管炎はないだろうという評価でした。回診に行った時に,車いすに座っておられたので,真・マーフィー徴候を確認したら陰性でした。胆道系の癌もなく,デバイスもない人でした。CTでわずかですが肺炎像があり,聴診するとpan-inspiratory cracklesが聴こえたので,普通に肺炎でよさそうです。Common is common.