Sanford guide(サンフォードガイド:熱病)はスマホアプリ版と冊子版では記載が異なる場合がある件について
先日、Twitterでピペラシリン/タゾバクタムは、BMI30以上の肥満患者で腎機能がよければ6.75gを4時間かけて8時間毎に投与(サンフォード感染症治療ガイド2021)と書かれていたのを見ました。えっ!と思ってスマホアプリ版のSanfordのObesity Dosing Adjustmentsの項目を見ると、
4.5 gm IV (over 4 hr) q6-8h Suggested dosing in obesity particularly for critically ill patients, if MICs ≥8 µg/mL, or CrCl >100 mL/min (Pharmacotherapy 2023;43:226).
で、根拠は以下でした。
https://accpjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/phar.2769
これは2021年版のサンフォードが古いのでは?と指摘したところ元の投稿は削除されてしまったようです。
その後、2024年版も6.75gになっていると聞き、
↓のサイトや冊子版のサンフォード感染症治療ガイド2024(日本語訳)も確かに6.75gになっていました。
久しぶりに英語の冊子版を買ってみたところ、確かに以下の記載でした。
Piperacillin-tazobactam
6.75 gm IV over 4 hours and dosed every 8 hours. No data for pt with impaired renal function
そういえば前にもこんなことあったな。
スマホアプリ版と冊子版の記載が異なる場合があること(前のがなんだったか思い出せない)。
スマホアプリ版と冊子版の違いみたいですね。
冊子版の6.75gの記載の根拠として参照されていたのは↓
アプリ版の根拠になっていたPharmacotherapy 2023;43:226では、
・4.5 g IV every 8 h (extended infusion over 4 h) or 4.5 g every 6 h (30 min infusion)
CrCl 100 to <150 mL/min: up to 4.5 g IV every 6 h (extended infusion over 4 h)
この記載の根拠として、6件の研究が参照されていました。
一番下のものは冊子版で参照されていたものですが、その他はより新しい研究です。
冊子版でも「データの検証が必要」と書かれていたように、より新しい知見が集まり、現在のスマホアプリ版の記載になっていると考えた方がよいと思うので、こちらに基づいた方がよさそうです。
冊子版とスマホアプリ版で記載に乖離がある部分があるとして、どうもスマホアプリ版の方が更新が早そうな感じがします。
以前は毎年Sanford guideを買っていて、スマホアプリ版を使うようになってからも歴史的な記録として時々買っていましたが、スマホアプリ版があまりに便利なので、ここ10年は冊子版を買うのを怠っていました。久しぶりに冊子版を開いたら、必要な情報を探すのに時間がかかるし、もう元には戻れないですね。昔は大体この辺と思って開くことができたので、それほど探すのに時間はかからなかったのですが、最近は情報量も増えましたし。
日本語版サンフォード感染症治療ガイド2024は3960円、アプリ版は年間34.99ドル(39.99ドルから値引き?)です。
個人的な意見ですが、こうした毎年更新されるような(アプリ版だともっと更新頻度は高いです)マニュアルは、情報のアップデートの労力を外注しているわけで、それが中途半端に更新が遅いのだとしたら、多少割高だとしてもアプリ版を使った方がよいと思いますけど。
冊子版の方がアプリ版よりも更新が遅いのはある程度仕方がないと思いますが、このような記載の乖離があったことをSanford guideのCustomer Serviceに連絡してみました。
(トップ画像は私のSanford guideコレクション)