人中短縮術について
こんばんわ。酒井倫明です。東京都内で美容外科・美容皮膚科のクリニックの院長をしております。
本日は形成外科の術式についてお話しします。
可能な限り専門的な用語は割愛しますが、美容医療中級者以上の方向けの内容になります。
人中とは鼻から上唇まで垂直に伸びる唇上部の溝の名称です。カンフー映画などで急所として表現されることが多いので、イメージはつきやすいのではないでしょうか。
この人中の長さはパーツバランスとして「美」の印象を大きく変えるものであり、人中が長すぎてコンプレックスをいただいている方が多くいらっしゃいます。
そのため、「人中短縮手術」のニーズは非常に高いのですが、とても難しい手術でもあります。
当然、術者の技術力が求められますし、患者様もどういった技術が要される手術なのか知識武装しておいた方が良いと思いますので、実症例を交えて記述していきますね。
実際の患者様からの質問と回答
以前患者様からこんな質問をいただきました。回答と共に記載いたします。
Question)
私は鼻の下が長く、以前から、人中短縮手術を受けたいと思っていました。私の鼻の下は25mmもあり、できたら半分くらいにしたいです。そこで、いろいろなクリニックに行って相談してみました。すると、鼻の下の皮膚は1cmまで切り取れるとか、皮膚は切り取らないでも短縮できるとか、傷跡が汚なくなるので勧めないとか、担当医によって意見がバラバラだったのです。また、筋肉は触らず、皮膚だけ切除するといったところが多くありました。
人中短縮手術の実情はどのようなものなのでしょうか?どの程度まで人中を短くできるのでしょうか?
Answer)
人中短縮手術や、人中形成手術(鼻の下にできる、2つの峰とその間の凹んだ形態構造(=これを人中構造という)を形成する手術)では、口輪筋の処置が中心となります。
つまり、口輪筋の前鼻棘(ANS)(鼻柱の最も下方にある骨と軟骨でできた棘状の突起)への釣りあげ(サスペンジョン)をしっかり行えば、鼻の下の皮膚の切除は最小で十分なのです。私はせいぜい2mm程度の皮膚の切除しかせず、鼻の下の長さを半分にまですることができると考えています。皮膚切除が少なければ、皮膚の緊張が減り、傷跡も概ねきれいになるものです。
あなたの場合、確かに鼻の下は20mm以上ありそうですが、25mmはちょっとオーバーかもしれません。鼻孔底隆起(ノストリルシル)の直下で皮膚切開をおこないます。皮膚切除はおそらく2mmで十分でしょう。
口輪筋の人中窩の部分を切除し、口輪筋をANSに吊り上げます。あとは、丁寧に縫合すれば見違えるほど鼻の下は短くなります。
しかし、傷跡はすぐには綺麗にはなりません。一時的に硬く、少し盛り上がるかもしれません。また、一時的に赤みがでてきますが、3ヶ月程度ですこし落ち着くでしょう。縫合技術が優れている、形成外科専門医の手術を受け、アフターケアもしっかり行う様にします。
人中短縮術ではこれを理解してほしい
もともと、口輪筋は口唇の周囲を取り巻く様に存在する大きな筋肉で、鼻柱基部の上顎骨の突起である前鼻棘(ANS)ヘの強力な付着で機能しています。この口輪筋の付着を挙げる事で、鼻の下の組織が上へ押し上げられ、皮膚が縮み、結果的に鼻の下は短くなります。
すなわち冒頭で記載しましたとおり、「人中短縮術」は唇裂手術の基本である口輪筋の挙上の応用版です。
とかくに、人中短縮は鼻の下の皮膚を切除すると考えられがちですが、それは大きな間違いです。皮膚を切除すればするほど傷跡に緊張がかかり、傷跡が広がります。また、鼻孔や鼻柱の形態が変化して、不自然になります。
ここでもう一つの注意ですが、鼻孔底隆起(ノストリルシル)は決して無くしてはなりません。美容外科医師の中には、鼻孔底隆起ごと皮膚を切除すると鼻孔内に傷跡を隠せると説明し鼻孔底隆起を切り取ってしまう症例があります。かなり不自然感が出てしまうのですが、修正は極めて困難なのです。
鼻孔底隆起を残しながら傷跡を極力目立たなくさせるのが、人中短縮手術の大切な方法論です。
術後の傷跡は??
さて、人中短縮手術では、傷跡の綺麗さがとても重要になります。人中が短くなっても鼻の下に大きな傷跡が残ってしまっては、がっかりですよね。
傷跡は周囲の緊張が強いと汚く目立つようになり、緊張が少ないと綺麗になる傾向になります。したがって、口輪筋の吊り上げで人中部を短くし、皮膚の切除はなるべく最低にするようにデザインを施します。
このため、鼻の下の口輪筋を 軟骨のANに吊り上げながら縮め、その上の皮膚を収縮させて鼻下の短縮を行うべきです。
もちろん個人の肌質にもよりますが、皮膚に緊張力が少ないと傷跡は目立たず綺麗になりますよ。症例写真をみてみましょう。
症例は鼻の下が長いことを気にされていた患者様です。
人中短縮形成を行いました。術後1年の傷跡です。傷跡はほとんど見られません。
アップにしてもこのような感じです。
本日のまとめ
いかがでしたでしょうか?人中短縮術に求められる技術や注意すべきポイントに焦点を当てて本日は解説させていただきました。
もちろん、どんなに優れた術者が行っても、一定の確立で合併症&リスク(傷跡の目立ち、感染、色素沈着、閉口障害、傷跡周囲の感覚障害)はあります。そのリスクを最小限に抑えるために良い医療機関・医師をお探しください。
「身も心も美しい人生で」
本日もありがとうございました。
酒井形成外科 院長
酒井倫明(さかいみちあき)
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