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フィナステリドの副作用①(性的な副作用)

こんにちは、植毛医の内田直宏です。
今回から2回に渡り、AGA予防薬であるフィナステリドの副作用についての文献をみていき、私見を述べていきます。

第一弾「フィナステリドの副作用①」では海外の文献に基づき、特に性的な副作用について絞って意見を述べていきます。

①フィナステリド内服で精子形成不全を引き起こす可能性は少ない
フィナステリドが精子の数や運動性の低下を引き起こす可能性があるという報告もありますが、正確な発症率は1%未満です。
精子の形態には影響を及ぼさないとするD’Amico AVらの報告があり、私自身は、過去の1000症例以上の投薬経験から、フィナステリド内服中の精子形成不全の方を診察した経験はございません。内服するにあたり、精子形成不全を気にする必要はないと思っています。
(参考:D’Amico AV, Roehrborn CG. Effect of 1 mg/day finasteride on concentrations of serum prostate-specific antigen in men with androgenic alopecia: a randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2007;8(1):21-25)

②フィナステリド内服により性欲低下、勃起不全、射精障害等の性的な副作用は2%程度に起こりうる
当初の臨床試験では、50人に1人、つまり男性の2%がフィナステリド服用中に1つ以上の性的副作用(性欲減退、勃起不全、射精障害)を報告したのに対し、プラセボ群では1%であったことが示されました。
Thompsonらの報告では、フィナステリドの投与中止後も性的副作用、気分変化、自殺念慮が発現するポストフィナステリド症候群が報告されています。

現在まで、この症状はほとんど解明されていませんが、脳内の複雑な神経伝達物質と関連していると考えられているようです。フィナステリドが直接的トリガーかは不明です。

(・Thompson IM, Goodman PJ, Tangen CM, et al. The influence of finasteride on the development of prostate cancer. N Engl J Med. 2003;349(3):215-224.
・Samplaski MK, Lo K, Grober E, Jarvi K. Finasteride use in the male infertility population: effects on semen and hormone parameters. Fertil Steril. 2013;100(6):1542-1546.
・Traish AM, Hassani J, Guay AT, Zitzmann M, Hansen ML. Adverse side effects of 5α-reductase inhibitors therapy: persistent diminished libido and erectile dysfunction and depression in a subset of patients. J Sex Med. 2011;8(3):872-884.)

フィナステリドの内服者はほとんど男性の方です。
男性にとって性的な副作用は、著しく人生のQOL(Quality of life(クオリティ オブ ライフ))を下げかねないので、最も重大な副作用のうちの1つだと思います。

性的副作用は2%程度で起こりうる副作用ではありますが、注目に値するのはプラセボ(偽薬)投与群でも1%程度も起きている点です。

海外の毛髪外科医らが指摘しているのは、こういった性的な副作用は、フィナステリドの内服で起きるというよりも、むしろ自身の精神面での悪化や潜在的な精神疾患(うつ病、統合失調症、その他精神疾患、精神的気質)による症状として「うつし鏡」のように体に生じている可能性があるという点です。

仮に性的な障害が生じたとしても、その原因としては、フィナステリド内服以外の要素(例えば仕事や生活面でのストレスや他の要素)も考慮にいれる必要があるでしょう。

これらの研究では、多くの交絡因子(バイアス)が関与しているため、結果を鵜呑みにするのでなく、ある程度自分自身での内服経験をもとに考えることも大切になってきます。
人によりフィナステリド内服時の感じ方や症状の出方が異なる場合があるからです。
処方医の指示ももちろん大切にはなりますが、継続的な内服をするには3〜6ヶ月に1回程度の定期的な血液検査を行った上で、
体調の変化を自身である程度管理し、異変があればすぐに専門的医師に相談するといった自己管理の姿勢が重要となると言えます。

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