ホールスリットとラインスリットの違い①
こんにちは、植毛医の内田直宏です。
さて、今回からホールスリットとラインスリットの違いについてパートを分けて私の考えを述べて行こうと思います。今回のパート1はアジェンダです。
カウンセリング時に3人に1人くらいの患者様がこのスリットについてはお尋ねされるほど多いご質問の一つです。
スリットはそもそも、割れ目という意味ですが、自毛植毛の手術を受ける患者様は必ず、このスリットを髪が薄いボリュームを増やしたい部分に医師が作成する必要があります。
後頭部から毛根(グラフト)を採取しても、それを入れ込む隙間を作らないと毛根は皮膚の中に収まらず、たちまち細胞が死んでしまい、いわゆる生着現象が起きないからです。
生着現象とは、採取したグラフトに微細な血流が供給され、いわゆる根付く現象とのことです。(注:定着とは意味が異なります)
「後頭部から採取したグラフトが生着するために人工的に医師が作る隙間」のことを我々植毛医は"スリット"と呼んでいます。
植毛手術結果の良し悪しはこのスリット作成作業に最も多く依存していると言っても過言ではありません。
作成した後は、グラフトを入れるのみの作業なので、どんなに入れる看護師が優秀でも、スリット自体の密度が少なかったり、方向などがおかしいと綺麗に生えることが絶対に無いからです。
スリットには大きく2種類あります。
ラインスリットとホールスリットです。
(実際には楕円や他の形もあるのですがここでは割愛させていただきます。)
まず、ラインスリットとは文字通りLine Slit、つまり、線のような割れ目(穴)という意味です。ラインスリットはスリットのみで略すこともあります。
それに対して、ホールスリットとはHole Slitで、円の割れ目(穴)という意味です。
よくあるご質問は、「先生、ホールスリット・ラインスリット結局どちらが良いの?」というご質問です。
これには、様々な考えがあり、学会等でも意見が割れるところではあります。過去に400症例以上植毛手術を経験し、様々な形成外科的移植術を経験してきましたが、私には一つの結論があります。
結論「ホールスリット、ラインスリットともに長所と短所が両方ともあるので、目的によって使い分けることが重要」ということです。
どちらが絶対に優れているということは無いと考えます。
目的とは大きく下の5つ項目に分けることができると私は考えています。
⑴傷の目立ちやすさ
⑵密度
⑶ボリュームの出しやすさ
⑷グラフトの入れやすさ(=生着率に影響)
⑸見た目の自然さ
上記5つの要素がの全て重要なのですが、
あえて3つに絞ると、重要なのは⑵、⑶、⑷となると考えます。
では、次回より各論を述べていきます。
パート②では、⑵の密度の違いについて記載していきます。
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