ドナー部をどう評価するか①
こんにちは、アルモ形成クリニック 植毛医の内田直宏です。
患者様から「私の後頭部のドナーは大丈夫でしょうか?」
と聞かれることがよくあります。
この大丈夫?とは、色々な意味を含んでおり、患者様の認識と私の認識が異なることがあるので、要素要素に分けて患者様に説明させていただきます。
今回は、このドナー部の評価についてお話ししようと思います。
患者様の診察の際に、私がドナー部の評価を行うときに
年齢、性別、今までの病気の有無、内服薬の確認など、個別事情を勘案するのは一番に大切です。
その上で、私が患者様の後頭部で注意して確認しているのは
①後頭部〜側頭部の安全領域はどのくらいの面積になるか
②ドナー部の密度計算(単位面積あたりにどのくらいのUnitが存在するか)
③後頭部に腫瘍の存在、皮膚炎が存在するか、感染が存在するかの確認およびその局在
④後頭部ドナー部の毛流および毛の生え方(湾曲していないか)
⑤後頭部の毛の太さ
⑥過去に手術歴があるか(その手術がFUTかFUEか)
⑦皮膚の質感(硬い、柔らかい等)
⑧毛の色、白髪の有無等
⑨頭皮の弛み具合
の9項目となります。
①後頭部(〜側頭部)安全領域はどのくらいの面積になるか
一般的には安全領域とは植毛医AltとUngerによって提唱されてきた概念です。
しかし、提唱されていた面積が小さく、coleがもう少しその面積を広げて考えた方がよいという考えを示しております。。一般的には220cm2〜250cm2程度を言われております。
ただし、これはあくまで一般論であり、頭蓋の形や毛の生え方で数値は変化します。実際には "準"安全領域を考えた方がよいという医師は多く、さらにもう少し面積が広がる場合が多くあります。
特に最近では植毛手術の前後でフィナステリドやデュタステリドを内服を中止することが少ないということを考えると安全領域の面積は広がる傾向にあり、植毛医達はこの"準"安全領域まで検討する必要があると申しております。
人により頭蓋の形や面積が異なるので面積の概算と②で述べる密度により
ようやく採取のデザインを決定することができます。
②ドナー部の密度計算(単位面積あたりにどのくらいのUnitが存在するか)
アジア人の平均密度は61.1/cm2とする報告があります。後頭部〜側頭部の採取部の面積が210cm2〜240cm2であることを踏まえると、約12831〜14664FUsが存在することが言えます。
どのくらい採取可能かという指標で多くの国際毛髪外科学会の植毛医達は50%は採取しても薄く見えにくいと考えを示しております。つまり、
密度やドナーにもよりますが6000〜7000G程度は採取可能
という見解を示す医師も多いです。
初回に関しては、3000Gを最大値として設定させていただくケースが多いですが、患者様との相談の上、場合により4000G手術のケースもございます。
③後頭部に腫瘍の存在、皮膚炎が存在するか、感染が存在するかの確認およびその局在
なにかしら後頭部に腫瘍が存在する人は非常に多いです。
色素性母斑、粉瘤、脂肪腫、脂腺母斑….etc
腫瘍がある人は、その部分を除くように採取しなければなりません。
特に、後頭部に皮膚炎がある方の場合は、移植部へ移植した際に皮膚炎の性質まで移ってしまうことがありますので事前にご相談いただく必要があります。
④後頭部ドナー部の毛流および毛の生え方(湾曲していないか)
後頭部の毛流は側頭部、尾側に進むにつれて、毛が寝るように広がっていくことが
通常なのですが、ぐるぐる回転していたり、変則的な毛流を示す患者様は多くいらっしゃいます。この場合、毛が湾曲している場合が多くありますので、採取に難渋する場合があるのですが、これは採取するパンチを加工したり、工夫することで解決できます。
陰圧を使用したり、パンチの刃を工夫することで湾曲しているグラフトでも一気に切断率を下げることが可能となります。
⑤後頭部の毛の太さ
毛の太さは仕上がりのボリューム感に影響を及ぼします。
ある毛髪外科医は毛髪直径が0.01mm増えると植毛術後完成後のボリュームが約36%増えると報告しております。毛が細いからといって生着に影響することはありません。
⑥過去の手術歴
過去に、FUT法による手術を受けたか、FUE法による手術を受けたか、
または腫瘍切除術を受けたかどうかというのも重要な情報となります。
【FUT手術後のFUE植毛】ほとんどの方は後頭部にwide scarを認めますので、その周囲からくり抜いてしまうとFUTの傷跡が悪目立ちすることがあるので、scarの至近は除いて取る必要があります。
【FUE手術後のFUE植毛】初回の手術の範囲やパンチの大きさによりどこまで瘢痕が及んでいるかによるのですが、2回目の手術は硬くなっておりやや難易度が増しますが、2回目であればほとんどのケースで問題ないことが多いです。今までの経験上は、3回目以降の手術の難易度が増すケースが多いです。
⑦皮膚の質感(硬い、柔らかい等)
皮膚の硬さについてですが、ゴムのようにパンチが貫通しにくい、貫通しやすい等
手術の難易度に影響します。
皮膚の硬さが硬いとパンチが摩耗し、切れにくくなる。また、柔らかすぎるとパンチにねじれの力がかかり、正しく標的が定まらないことがあります。
⑧毛の色、白髪があるか
これも大事な要素の1つです。
毛の色が濃い、黒い方がより、肌色とのコントラストが目立つので、
密度が少ない特に透けて見えます。
最も一回の手術での密度が限界があるので、完全に透けないようにするのは
困難ではありますが、毛の色が濃い、黒い方がより地肌が悪目立ちする傾向にあります。
白髪に関しては、白いままでも採取は問題なく可能ですが、やはり移植部へ移植した際には白髪のまま移ることになるので、気になる方は白髪染めを行う必要があります。
⑨頭皮の弛み具合
頭皮は解剖学的に上側からSkin(皮膚)、Connective tissue(皮下組織、結合組織)、Aponeurosis(Galea〜表情筋・SMAS群)、Loose connetctive tissue(粗結合織)、pericranium(骨膜)となっておりますが、
この中で頭皮の緊張を保っている支持性組織といるのは、Aponeurosis(Galea〜表情筋・SMAS群)となります。
植毛手術においては、SからCの上位2層が大切となりますが、この結合組織が非常に緩い方がおり、皮膚の固定が弱い患者様がいらっしゃいます。
すると、パンチブレードを皮膚に挿入しようとしても皮膚の固定性に乏しく、滑ってしまったり、適切に毛根を採取できない場合があります。この弛みは外来でチェックできますので是非聞いてみてください。
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