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うきうきのキャラ弁

小学校の頃キャラ弁が流行りだした。
今ほど凝ったものではないが、例えばリンゴはうざぎカットだったり、サンドイッチはキャンディ包み。ご飯の上にそぼろで絵を描いてあったりいろいろ盛り付けに工夫があるお弁当が女の子の中で流行っていた。

キャラ弁かわいい♡

〇〇ちゃんのお弁当可愛いねー!
〇〇ちゃんもひよこさんだねー!
 〇〇ちゃんのお弁当りぼんあるー!

などなど。遠足や写生大会など行事はお弁当持参でそこではお弁当博覧会も勝手に開催される。それは常に大反響であった。学校のお知らせでも同級生キャラ弁の写真集が配布された。

〘わたしもお便りに載ってみたいなぁ……〙

そんなキャラ弁はビヨン酢少女の中でもトキメキが強いものだった。

私のお弁当はタッパーでポークビッツとケチャプの麺と卵焼きと黄色いたくあんが入っていてとろろ昆布の紅しょうがおにぎりがほぼ定番だった。とてもおいしいけど、どこのだれよりも可愛くないと思っていたのだ。

羨ましくて羨ましくて 母ケイコにキャラ弁をお願いした。

母ケイコは朝から晩まで働いていたのでキャラ弁というものが知らなかった。今なら携帯でたくさんのアイデアがさがせたりするけどそうではなかったから情報源はテレビか雑誌だったと思う。

そんな母ケイコがある日

「 明日のお弁当 キャラ弁にするからね!」と言ってくれた。

私は嬉しくて踊り回ったと思う。


嬉しさMAX!念願のキャラ弁への奉納の舞


キャラ弁!なにがあるんだろ!!明日の楽しみー!

ワクワクして眠りについた。

朝起きると水筒とハンカチに包まれた私のお弁当があった。

こ、こ、これが!!キャラ弁!!!

ぴかーっと光って見えた。
 
早く見たいがお昼までの我慢。
 リュックサックに大切にしまう。
なにかあったら大変。慎重に勇み足で学校に向かった。

その日は雨で写生大会が中止で明日へと繰り越しになった。

なので学校で食べる。

一限から四限までずっと頭の中はキャラ弁でいっぱいだった。

クマさんやうさぎさん、リボンのついたポテトサラダとかあるのかな?わくわく!!!!

妄想が地球超えるくらい膨らんでいた。

そして!待望のお昼ご飯の時間!

各テーブルでお弁当博覧会が開催された。

はやりみんな可愛い!
女の子らしいお弁当で素敵だった!


しかし!!今回わたしも【キャラ弁】なのだ!!!

いつもよりドヤった顔でまるでフレンチでも食べるかのように優美にハンカチを外す。

まだここでは見えない。

私「今日ねわたしもキャラ弁なんだよー!」

そういうと女の子たちは 
えー!そなの?
見して見して?

と集まってきた。

ビヨン酢「それではおまたせしました!
こちらでぇす!!」

パカッ。

……え?

なんということでしょう……

平に引かれたご飯の上に某有名なスポーツマークがごはん海苔で表現されていた。

〖✔〗

こ、こ、これは あの有名やチェックマーク!
白いご飯にぺけっ!と書かれた私のお弁当

たしかにキャラ弁だといったが 違う。
求めていたものと違う。
ポークビッツが爪楊枝で串になってはいた。
周りに集まってくれた女の子も

「キャラ弁じゃないよ?これ」

って言ってほかのお弁当へ帰っていた。

私は膨らみすぎた期待がパーンと風船ように割れた気がした。

そこからはただただ放心状態でナイキを食べたのだった。

母ケイコが帰宅して私に聞いた「どうやった?」って。私は思いの丈を溢れるように伝えた。

恥ずかしかった!
みんなのは可愛い!!!
なんでこんなんがキャラ弁ねんて!
もう作らんでいい!!!!

結構 ダバーーっと言った気がする。

全て言いきったあと、母ケイコの「ごめんね」で我に返った。

言いすぎてごめんね、美味しかったよ。

その言葉を言えないまま 自分の部屋へ向かい泣いた。そのまま寝て次の日を迎えた。

朝起きると机の上にお弁当があった。
 昨日も見たハンカチに包まれたお弁当は全く輝いて見えなかった。

気まずいままお弁当をもって 写生大会へ行った。

 絵を描くことが大好きだったのでその時間はお弁当のことも忘れて無我夢中で書いた。

お昼になって 憂鬱になった。
中々開けずにいた。

各場所でお弁当博覧会が開催され始めた。

はぁ。と思いながらハンカチをあける。


すると、

いつもタッパだったのに 赤いお弁当箱だった。
え!驚いた。最初誰かのお弁当を間違えてもってきたのかと(笑)
恐る恐る蓋を開けると、ご飯の上に可愛いチューリップの花が咲いていた。さくらデンプンとさやえんどうでそれは見事なチューリップ。

わぁあ!!!と感情が一気に上がったのが分かるくらい身体が熱くなった。可愛かった。

すると 「わぁ!ビヨちゃんのお弁当かわいい!」とその一言で私のキャラ弁にみんなか集まってくれた。

かわいいね!チューリップ!
人参もお花の形だね!

嬉しくて嬉しくてうんうん!かわいいね!お母さんが作ってくれたの!とみんなに自慢をした。

よく見るとポークビッツが可愛いピックに刺さってプチトマトとキャンディチーズもだ。

その日写生大会で学校の周りの風景に自分のキャラ弁の絵を書いて提出した。

写生大会の夜 母ケイコに「みんなが可愛いっていってくれたの!」「いつもより美味しかった!」と無邪気に伝えていた。その時の顔は覚えてないし、「よかったね!」しか言われてないけど、あの日私が叫んだ夜、仕事終わりでヘロヘロだったのに自転車に乗っていとこの家へ行きお弁当とピックを借りてどんなことをしてあげたら喜ぶかと母ケイコの姉(わたしでいうおばさん)に聞きに行って買い物へいったらしい。それを知るのはもっともっとあとでのこと。


写生大会で書いた遊具のドカン山と私のキャラ弁は金賞を取ったのだった。

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