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冷やし中華8日間戦争

これは私が中学一年生の夏のお話です。

中学では剣道部に所属しておりました。

 夏休み期間の部活動は午前中が多く朝からランニングから打ち込みや掛かり稽古と日々へとへとになるまで励んでいました。(部員4名)

育ち盛りのうえ、毎日5時間程ひたすら動くと普段お昼を食べなくても大丈夫な私ですがさすがにお腹が減ります。

しかし。帰宅してもなかなか食べ物がなく
氷をごりごり食べるか畑のキューリを食べるかして過ごしていました。(この頃はまだ料理のレパートリーが少なく作れなかった。)

そんな私を見て「ひもじい思いをさせたくない。帰宅してすぐに食べられるように」と冷やし中華を作り置してくれてました。

母「明日帰ってきたら冷蔵庫にあるしつゆかけて食べるんやよ!」

ビヨ「やったー!おっかぁ!ありがとう!」

次の日 夏のセミが煩くなく頃 汗だくのへろへろのペコペコの帰宅をして 真っ先に冷蔵庫を開けた。

そこには

お店にも負けない彩り豊かな冷やし中華があった!

まるで打ち上げ花火のような美しさの冷やし中華

じーちゃんの畑で採れたキュウリにトマト。それに2枚分のハム刻み、手作りの錦糸卵にカニカマ。
真ん中にマヨネーズと紅しょうが。

こんなに具だくさんで豪華な冷やし中華に感激した。

ひと口すすると マヨの酸味と紅しょうがの爽やかな辛味、さらに醤油ベースのタレがヒートアップしてた体を労わるように冷やしてくれる。

冷やし中華ってこんなに美味かったけ!?と思うくらい美味しかった!

汁まで飲み干した。

母ケイコの帰宅後
「こんなに美味しい冷やし中華は初めてです。」と伝えると良かった!笑顔になり「明日もあるからね!」と。

わーいと喜び母にハグをした。



次の日もヘトヘトの中帰宅して冷蔵庫を開けると
 

会いたかったよ!

昨日と同じ状態の冷やし中華が待っていてくれた。

大輪の花を咲かせているかのような冷やし中華は、dysonの掃除機のように私の胃袋へと吸引されていった。あまり強く麺をすすると汁が目に入ることも覚えた。


次の日。

今日は特に暑かったしハードな練習だったなぁとヘロヘロに帰る。しかし私には楽しみがあるのだ。
お昼ご飯が待っていてくれてるのだ。
それだけで私は幸せだった。そんなお昼ご飯を思うと、腹がぐーぐー鳴っても自転車を立ち漕ぎで帰るくらいの楽しみになっていた。

 待ってました!冷やし中華!!!
しかし!この2日間で少しだけ変化があったのだ。


……ハムが消えた。

ハムなしの冷やし中華になっていた。
ハムのスペースを隠すように錦糸卵がのっていた。

まぁ!ハムがなくても美味い!わたしは飲むように食べた。幸せだった。

次の日…
ルンルンで帰る。
冷蔵庫をあける。冷やし中華が待っている。
正直……初期の頃のような冷やし中華万歳は薄れてはいた。
しかし!食べ物があるのは有難いこと。
ハムなしの冷やし中華を食べる。
酸味のあるマヨ風味スープ。
シャキシャキのきゅうりとほんのり青臭いトマト。
カニカマとだんだん雑になってきた錦糸卵、紅しょうが。

美味しいね!幸せね!って心の会話も溢れることは溢れるけども…。

汁は飲まずに終わった。手が自然と止まったのだった。

次の日
ヘロヘロになって帰宅したら冷やし中華がまっている。……味変を考えながら帰路に着く。
冷蔵庫を開けると 冷やし中華がいた。
もうマンネリしたカップルだ。わあーとなることもなく。静かに取り出しラップを外す。手を合わせて頂きます。正直急に来た感じ。このなんというか、冷めた感じ。ここまで続くと飽きもあるし、具材も減る。が、特に減っちゃった!悲しいよ!!ともならない。気にならない。
きゅうりと錦糸卵とマヨと紅しょうが。
シンプルなラインナップである。
私はそこに無情にもケチャップを入れてみた。
ただただ酸っぱい冷やし中華になってしまった。
冷たいナポリタンみたいななにか。後悔した。


さらに2日間冷やし中華を食べた。
きゅうりと錦糸卵とマヨと紅しょうが

2日目にはきゅうりも消えた。

2日目の夜「冷やし中華明日で最後やわ。」そう母が私に言った。嬉しいような悲しいような。複雑な気持ち。


ラストデー。
この日は部活がなくただひたすらゴロゴロして過ごした。

お昼になり、冷やし中華を取り出す。

最初の頃 色とりどりの大輪の花のような 大花火のような咲き誇る冷やし中華は…

マヨと紅しょうがだけとなり、まるで日の丸のごとく。

ただただひたすらに混ぜるしかない。

まぜてまぜて。

無心で啜る。

少しだけ物足りないのは否めない。
それでもあることに感謝し、ラストは汁まで飲み干した。


~~~~~~~~~~~~

月日は流れて……。

 セミが泣き始める頃からわたしは今でも連続して冷やし中華を食べたくなる。

きっと冷やし中華8日間戦争で染み付いたからであろう。

ふと、業務用の麺と業務用のスープを買ってしまう。そして、具材もちゃんと先に終わるように買う。しかし。紅しょうがとマヨだけは別だ。これは業務用の量で買う。

なぜなら私が好きな冷やし中華の具材はマヨと紅しょうがである。

染み付いたのだ。


これはもうしょうがない。

……( ˘꒳˘)


今年も日の丸な冷やし中華に出会えると思うとすこしだけ夏が待ち遠しい。




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