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0から5に

謡と仕舞のお稽古を始めて5カ月がたった。

事務局のおじさまは50年、他の先輩方も数十年という年月を能と向き合い過ごしていらっしゃる。

だから私の5カ月はほとんど何の意味も持たないのだが
それでも0だったものが5になったというのは
やっぱり嬉しい。


先日の仕舞のお稽古では
テーマがすり足であった。

床をする充足感を感じること。

私は足を上げるのもはやすぎるらしいが
つま先もこころして降りるようにと言われた。
一歩足を前に出すことの大変さと怖さを改めて感じた日だった。


舞台やDVDを見ていると、皆さんいとも簡単に足運びをしていらっしゃるようにみえたのものだが、その一歩一歩にはとても大きな意味があるのだということに気付く。私みたいに簡単に足を出していらっしゃらない。そういえば、昔習っていた踊りのクラスでは「あなたのその一歩には何の意味があるのか。意味がないなら出すな」と言われたことを思い出した。

すり足については、見ていると簡単そうに見えたのだけど、それは気のせいだった。そう見えただけだった! 

すり足だけでなく、あの抑制された動きの中で感情を表現するなんて、今の私には想像がつかない。
皆さん血のにじむような努力をしていらっしゃるのだろう。見えないところでの練習量がとんでもなく多いに違いない。まんがいち誰も見ていなくても自分には絶対わかるだろうから。
私のように、よし今日は30分やったから自分を褒めてやろう! ではいけない。


いつもお稽古では、前回注意されたところが何とか直ったかと思ったら、今度は新たな課題が出てくる。でも、その新たな課題は、以前自分では全く気が付いていなかった、または考えもしなかったことなので面白いなあと思う。そして、その課題ができたと思ったら次にまた別のところを注意される。私などはいっぺんに言われたとしてもわからないしできないから、先生はその都度「今はとりあえずこれだけ」、「今度はこれ」と考えてくださっているのかもしれない。


お稽古を始められるように尽力してくださった方々への感謝の気持ちを忘れず、来月からも楽しみながら学んでいきたいと思う。


ところで、私の熊野は「元気なお侍さんみたい」だそうである。
熊野はきれいな女性であるのに、侍になってはだめだ。


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