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今だから言える、ホルモン。

私の母は胃癌です。
(マガジン「母の記録」にて、これまでの話が書いてあります)


手術終了の予定時間から、1時間が過ぎました。

「えらい時間がかかりよるね、大丈夫やろか…。」
父が痺れを切らし、待合室を出たり入ったりしています。手術続行の知らせから一変、時間が経つにつれ不安がつのります。


時間は更に過ぎて、手術が終わったと知らせがきたのは、手術終了の予定時間を2時間も過ぎ、スマホの時計が17時になった頃でした。



手術を終えたばかりの先生が、手に何かを持って私達の所へ現れました。

「癌が膵臓の方にまでこびりついていて、はがすのが難しく予定していた時間よりも時間が掛かりました。」
と、私達の前に差し出したのは、母の「胃」でした。白い発泡スチロールのようなものに、母の胃は標本の様に針でとめられていました。


先生の話は続き、
「胃の周りに癌細胞があったかの様な痕がありました。痕と言うことは、上手く抗がん剤が効きてくれたのでしょう。
膵臓にかたくこびりついた癌細胞をはがす際に脾臓の血管の一つを損傷、止血したものの脾臓が変色しましたが、手術中に変色した脾臓は半分まで回復する事が出来ました。後は二つの血管が上手く吸い上がってくれる事を期待しましょう。この後、摘出した胃は癌細胞が残っていないか検査にまわします。術後、合併症やらいろんな問題が起こらなければ、三週間後には退院となります。」


先生の話が終わり、母の麻酔が切れるのを待ちました。


手術室から出てきた母は、まだ意識が朦朧としていましたが、
「お母さん、帰って来るの待ってるからね。」
と声を掛けると、父と私の声に微かに反応しているように見えました。



病院から帰る車の中でダンナと二人、手術が上手くいき、とりあえずひとまず安心したね…と話をしながら、ふと摘出された胃の話になりました。

「言っちゃいかんかもしれんけど、ホルモンやったね。」

「う…ん、やめてよ。」

「ごめん。」

車の中は、何とも言えない空気になりました。



#胃がん闘病日記 #胃全摘出 #何とも言えない
#今だから言える #ホルモン

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