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母の手

私の母は末期の胃がんでした。
(初めて私のnoteを読んで下さっている方は、マガジン「母の記録」にて、これまでに母と私達家族に起こった出来事を記していますので、よかったらそちらの方も読んでみて下さい。)



2024.1.12
am8:00、いつもだったら父から電話があるのに今日は電話が鳴りません。私は、昨日から明日父は電話をかけてこないだろう…と思っていました。

私『おはよ、ご飯食べたね?お母さんから電話あった?』
私から父に電話をしました。

父『おはよう、ご飯食べたばい。お母さんから電話もあった。何かヤクルトが飲みたかげな、だけん昼からヤクルトば買って病院に持って行ってくるたい。』
いつもの父の声、でもちょっと気まずい雰囲気。

私『お父さん…、お母さんの事お父さんに任せっぱなしでごめん、申し訳ないって思ってる。でも昨日急にあんな風に怒鳴られても、お父さんしか先生の話を聞いとらんけん私もおばちゃんもお父さんに聞くしかないとよ。』

父『謝らんちゃよか、〇〇○(私の名前)は店もあるし、お父さんがお母さんばみるのは当たり前やん。』
父が申し訳なさそうに返事をしました。
一晩経って、少しだけ落ち着いたみたいでした。

先生から話がある時は、私も一緒に話を聞きたいからいつでも言ってね…とは伝えていたものの、お店を休ませる訳には行かないと、父と母は私に気を使っていたのでしょう。



2024.1.13
父と二人で、母のお見舞いに行きました。
母は4人部屋に入院していて、面会は3人まで、時間は20分と言う短かさ。
母の好きな手羽先の唐揚げを作って差入れましたが、母の喜ぶ顔は見れませんでした。

母『もう家には帰られんげな、もうここで死なないかん。』

前日父が面会に行った際看護師さんが来て『もう帰られんかもよ…帰りたか時は一時退院出来るか先生に聞くけん、そん時は言ってくださいね。』と急に母に告げたのでした。あまりにも急で、父もびっくりしたみたいでした。

会って5分も経たない内に母は『気をつけて帰らやんよ』と私に言って目を閉じてしまいました。

私『今来たばっかりで後15分残っとる、せっかく来たけんもうちょっとおらせてよ。』

母『忙しいのにごめんねぇ…。』
小さな声で母が言いました。

それ以上母との会話はなかったけど、面会出来る時間いっぱいまで私は母の手握り、母は静かに目を閉じたまま私の手を握り返してくれていました。



#母 #胃がん #末期

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