
世の中って、そんなものょ。
誰の迷惑にならないよう、世間の片隅でひっそり静かに生きて来た。
その人はそう言った。
続けて
なのに、神様は不公平だと呟いた。
ドキッとした。
どう返答すれば良いか解らなかった。
・・・・・・・
その人は、羨ましいほど仲の良い夫婦。
長い夫婦の間では当たり前すぎる声掛けが妙に初々しい。
お互いを思い遣る。
当時の私の目には尊く映った。
ある日、突然、奥さんが話を切り出した。
「私たちには息子がいたの。一人息子だったの。」
「だけど、交通事故で亡くしたの。」
どんな顔をして良いか、解らなかった。
どんな声掛けをして良いか、解らなかった。
突然の吐露だったと言うだけでなく、
このような話を当事者から聞かされるのは初めての経験だった。
如何せん、内容が重過ぎた。
戸惑う私を見て見ぬ振りをするように、話を続けた。
その事故の相手は「とにかく反省がない」と珍しく声を荒げた。
・・・・・・・
高級車に乗っていてもよ!お見舞金は出せません。
お金はありません。
それだけじゃなくて、謝罪の一言も無いの。
今まで一度も!
・・・・・・・
誰の迷惑にならないよう静かにひっそり生きて来た小市民が、
人生の生き甲斐を奪われ、怒りの行き場も無く、ただ悲しみに堪えながらひっそり生き続けている。
人ひとりの生命を奪った者は、その重さに等しい罪を問われることも背負うこともなく、反省ないまま世間を闊歩し続けている。
と言う。
世の中って、そんなものなのよ。
初めから不公平に出来ているの。
すべての人に等しいことなんて、ないのよ。
達観した言葉だった。
ただ「世の中なんて」と言わなかったことが
救いに感じた。
・・・・・・・
世の中のほとんどの人は、このご夫婦のように、
「世間の片隅で誰の迷惑にならないよう生きる善良な小市民」かも知れない。
誰にでも起こり得るアクシデント。
それは交通事故に限らない。
不慮の出来事など、そこらじゅうに転がっている。
それら意図しない出来事にどう向き合えるか?
今まだ私には覚悟が無い。
・・・・・・・
今日は nemuineko_note さんより、綺麗な一番星と富士山の画をお借りしました。
何を目指して生きていけば良いの?
こんな、どん底の時は動じない山と行き先を示唆してくれる星だなぁ…なんて!
どうもありがとうございました。