【ACG大会2024秋 優勝】蔵馬ループ解説
はじめまして。エントリーナンバー42番ことbittです。
【ACGカードはないけど大会をしよう。in 2024秋】優勝しました~~!!
優勝自体ももちろん嬉しいですが、原作に登場する【蔵馬システム】に着想を得た、【蔵馬ループ】というデッキ名がお気に入りなので、公式アカウントに「使用デッキ : 蔵馬ループ(ライブラリーアウト)」と紹介してもらえて感極まってます……! オリジナル組んだ甲斐があった……!
さて、本記事では【蔵馬ループ】というデッキについて、皆様に詳しくご紹介しようと思います。
何を考えてデッキ選定したのか
どうやって【蔵馬ループ】が生まれたのか
【蔵馬ループ】のデッキレシピと採用意図
基本の回し方
代表的な環境デッキに対する立ち回り
などを書いていく予定です。普段は虚空に向かってアイカツの感想を垂れ流しているオタクなので、上手に伝えられるか分かりませんが、お付き合いいただけますと幸いです。
※オタクの過去回想なんていらないから【蔵馬ループ】の詳細を知りたい! という方は、[3. デッキレシピと採用意図]まで飛ばしてください
0. そもそもアニマルカードゲームとは?
まだ存在しないカードゲームのデッキレシピ解説記事を読みに来る人の中に、ACGをご存じない方はいらっしゃらないと思いますが念のため。
ACGは知ってるけど原作を読んだことのない方もいらっしゃらないとは思いますが念のため。
↓原作者Twiiterアカウント。平日12時に最新話がアップされます。
https://twitter.com/urwataru
↓原作者pixivアカウント。過去話はこちらから。
「カードゲームうさぎ」本当に面白いんで読んでください。特に今連載されてるエピソード・ライ太。
個人的に一番好きなのは蔵馬vsくま吉のラストです。神回。
1. 2024秋大会の環境予想
大会に応募して当選を確認したのが10月頭。そこから握るデッキを考え始めたのですが、主に参考にしたのは以下2つのリンクです。
これらを参考に、環境デッキとして下記4種を想定しました。
【レオストーム】
【赤単バーン系(狸型、フルバーン型)】
【象系統(赤緑 : 四つ子換装型、青緑 : クロックパーミッション型)】
【冬眠コントロール】
以下、それぞれの所感です。
【レオストーム】
最大の仮想敵。夏大会優勝という実績、「DNAの呟き。」さんの環境考察でも堂々のtierSとなっており、2024秋大会でも最大勢力になると予想していました。前回大会優勝者によるレオストーム解説記事が存在することも追い風。
最速2Tキルを目指す型、『夜の使者』『夜襲』を入れて相手の対策カードを対策する型、獅子王まで入れて長期戦を見据える型など、デッキレシピによって動きが変わってくるのも強みで、使い手の好みや思想が色濃く出てきます。
逆に、自分で使う場合はメタゲームを読む力とデッキ構築力の両方が求められます。また、最速でコンボを決めるだけなら簡単ですが、相手の妨害を想定した際の立ち回りは非常に難解です。壁打ちでどーやって練習するねん。
【赤単バーン】
早い、強い、簡単と3拍子揃ったデッキ。良くも悪くもゲームが早く終わって疲れにくいというのも密かなメリットです。
「DNAの呟き。」さんのnoteでtierSとなっている赤(白タッチ)狸ウィニー型は、最速2Tキルという速度と、メインデッキから【レオストーム】対策カードを積めるのが最大の魅力。ただし、戦闘制限の影響を受けやすく、『鉄檻』や『冬』が設置されると苦しい。
tierAのフルバーン型は対照的で、戦闘制限の影響をほぼ受けませんが、代わりに速度が落ちます。そのため【冬眠コントロール】には有利で【レオストーム】には不利。
デッキパワーで考えると、キルターンが早く、最大勢力(予想)の【レオストーム】に有利が取れる狸ウィニー型がかなり強いと考えていましたが、『火付け狸』採用型の赤ウィニーのレシピをあまり観測できていないことから、この型を握るプレイヤーは少ないと予想していました。
大阪大会の上位リストに載っていないこと、クラファンの「バーニンソウル」(赤単バーンの構築済みデッキ)には『火付け狸』が含まれていないことから、赤単を握るとしてもフルバーン型にする人の方が多そうです。
【象系統】
型は色々あるものの、2コスト7/7という破格のサイズを誇る『戦傷の勇者』をメインに戦っていくデッキ。正直、クラファンの構築済みデッキを眺めてた時点では象パッケージの強さに1mmも気づいていなかったため、夏大会で上位入賞していて驚いた記憶があります。
「DNAの呟き。」さんの環境考察でも「一番母数が多そうな人気デッキ」と書いてあり、夏大会で結果を残していることからも【レオストーム】の次に多いかなと思っていました。ただし、象系統の型の豊富さからデッキそのものを対策するのは難しく、どちらかといえば「序盤に出た『戦傷の勇者』で詰まない」構築を意識しようという感じです。
※青緑象に近いデッキとして青緑イーグルも強いと密かに考えていました。『戦列の鷲』は場に出せるターンこそ象より遅いですが、象パッケージと違い1種類4枚で完結しているので、デッキの自由枠を増やせるという強みがあります。ただ、前大会で象が結果を残しているのに、わざわざイーグルを使う人は少ないだろうという予想で環境デッキの候補からは外しています。
ちなみに象系統は自分が使う候補には入っていませんでした。象パッケージの強さに初見で気づけなかった人が、象系統を使いこなせるわけないので。
【冬眠コントロール】
オタクが大好きコントロール。戦闘制限と大量の妨害カードを駆使して、対戦相手に何もさせずに勝つのが一番楽しいんだから。
【レオストーム】が戦闘制限、妨害の両方に弱いことから、【レオストーム】を最大勢力と考えるならかなり立ち位置の良いデッキになると考えていました。
ただし、コントロールの常としてデッキ構築、プレイング共にシビアな立ち回りが要求されます。長丁場の大会の中、毎試合ミスなくプレイする必要があるため、立ち位置が良いからと言って勝ち切れるとは限りません。また、なんでもかんでも妨害できるわけではないので「通していいカード」「通しちゃダメなカード(マスカン)」を見極める技量は必須です。環境デッキの動きを一通り理解していないと厳しい。
また、試合時間が長いデッキは制限時間の観点からマッチ戦で不利を背負いやすいのも隠れた欠点です。単純に考えて、勝つまでに30分以上かかるデッキは制限時間60分の間に2勝できません。相手の先行ブン回りで1ゲーム目を落とした時に「2戦目勝っても3戦目を勝つ時間がない(でも相手は3戦目に勝てる可能性がある)」というケースが容易に想像でき、全勝を狙うためには1ゲーム目に勝つことが他のデッキ以上に重要となってきます。
そんなこんなで色々と欠点もありますが、それでも【冬眠コントロール】を使用するプレイヤーは一定数いると考えていました。だってオタクはコントロール大好きだし……(自己紹介)。
環境予想を踏まえて……
こんな感じで環境デッキについて色々と考えていました。それらを踏まえた上で自分が握るデッキの第一候補は……
【冬眠コントロール】でした。オタクだからね。仕方ないね。
一応真面目な理由として
(最大勢力予想の)レオストームに(おそらく)かなり有利
『貯め瓶』の採用枚数次第で赤単相手にも最低限戦える
象系統がどんな型であっても『鉄檻』『冬』が有効に機能する。
環境予想にいない有象無象に対しても、とりあえず『冬』を置けば完封できる(はず)
カードプールが狭いのでマスカンを見極めやすく、プレイング上のミスは起こりにくい
といったことは考えていました。数が多いと予想していた【レオストーム】【象系統】に有利だというのが一番の決め手です。
2. デッキの調整過程
こうして【冬眠コントロール】を使うと決まったので、あとはひたすらデッキを回してチューニングです。プロキシは刷れても対戦相手は刷れないので、アイカツアカデミー配信部のアーカイブを拝聴しながら壁に向かって黙々とデッキを回します。大体何ターン目に『冬』が置けて、何ターン目に勝てるのか。各ターン何枚くらい妨害を構えられるのか、などを確認しつつ、採用カードの枚数を調整していきました。この調整過程で【冬眠コントロール】が【蔵馬ループ】に変わっていきます……。
『冬将軍』の解雇
最初に感じた(組んだ時点で薄々感じていた)のは『冬将軍』というカードの弱さです。
『冬』がないと自壊する、除去耐性がない、殴り勝つまでに4Tかかる……。
なにより、『冬』がない時に手札に来るとノイズになるのがいただけませんでした。フィニッシャーなので捨てるわけにもいかず、プレイできないカードを抱え続けなければいけないのがシンプルに苦しい。何度一人回し中に手札上限6枚で捨てたいと思ったことか!
一応、『蛇知恵』を採用することでデッキに戻せるのですが、手札を回すために打つ『蛇知恵』を『冬将軍』が手札に来た時のケアのために抱えるのでは本末転倒です。
『冬』の効果で予備デッキからサーチさせてくれ……。
また、ミラーでは『鉄檻』に止められたり『貯め瓶』に延命されたりで勝つまでに時間がかかる点や、『噴水』が採用されている場合に『冬』に『噴水』を打たれると自動的に『冬将軍』が破壊されてアドを稼がれてしまう点も気になるところ。『冬将軍』で勝ちきれないなら、採用する理由がありません。
そんなわけで、【冬眠コントロール】で弱いカードランキング1位は、文句なしで『冬将軍』です。弱いカードは抜きましょう。
【蔵馬システム with 冬】へ
『冬将軍』を抜くと勝ち手段がありません。『冬』の影響下では「冬毛」をもたない生物は攻撃できないので、戦闘に頼らないフィニッシャーを2種類試してみましたが……
・『四つ子の魂の呪い』……デッキ内に弾になる高コストカードを4枚採用する必要があり、『冬将軍』以上にデッキにノイズが混ざるので論外。2コスト(『海蝕腐食』など)を強引に4投して、2コスト×4枚×3で24点出す形も考えましたが、結局四つ子がノイズになる点が解消できず断念
・『妖狐の禁術』……『貯め瓶』『鉄檻』と相性の良い『妖狐の巻物』は最初から採用する予定だったため、巻物経由で20点叩き出せる『妖狐の禁術』を1枚採用する形も試しました。『設計図』によるサーチが効きますし、山岳条件も巻物で達成できます。
ですが一人回しをしているうちに「巻物でドローするのに妖狐カウンターを消費するため、20点まで貯めるのは現実的ではない」「1枚採用の『妖狐の巻物』への依存度が高すぎる(妨害・破壊に弱い)」という点が気になり断念
こんな感じで、都合の良いフィニッシャーが見つかりません。フィニッシャーがいないならどうするか? そう、LOです。
LO(ライブラリーアウト)に馴染みのない方に説明すると、「アニマルカードゲーム 総合ルール ver.1.3」の「105.3b. デッキが0枚でカードを引かなければいけないプレイヤーは、ルール処理によってゲームに敗北します」を利用してゲームに勝利する戦術のことです。「ライブラリー」はMTG(マジック・ザ・ギャザリング)というカードゲームにおけるデッキを意味する用語。
LOする方法にも色々ありますが、今回は本家の【蔵馬システム】同様に、自分のデッキ枚数を下限より多くして、相手の通常ドローだけでLOさせる手法をとります。最悪ですね。
相手が早いデッキであれば、通常通りドロソを回してきっちりロックする(『冬への備え』もあるので、多少ドローでデッキを掘り進めても大丈夫)。相手が遅いデッキであれば、ドロソを打たずにデッキ枚数の差でLOを押し付ける。そんなイメージです。
そんなこんなで【蔵馬システム with 冬】を仮組みし、一人回しをしていきます。デッキ枚数自体は増えたものの、大量の妨害やドロソを積んでいるだけなので不要牌を引くことはなく、『思い馳せる情景』『設計図』といった優秀なサーチカードのおかげで動き自体はスムーズです。何より『冬将軍』を素引きする確率が0なのでストレスフリー。
本番1週間前までは、この形で行こうかなと考えていました。が……
零れ話 : 【蔵馬システム】で勝てるの?
原作の【蔵馬システム】は、制限時間という壁を乗り越えられず、消えていったコンセプトです。
当然自分も、引き分けではなく勝ちたい。そこで、この戦術が実現可能か、今回の大会のルールを見に行ったところ……
……なんとかなりそう!
2024秋大会のルールでは、1勝1分け(時間切れ)の場合、先に1勝したプレイヤーがマッチの勝者になります。
つまり、60分以内に1回勝てるデッキ構成であれば、一応戦術としては成り立つということです。
60分以内に2ゲーム連続でLOすることは厳しいかもですが、60分で40枚デッキ相手にLOを決めることはそこまで難しくないでしょう。ポケモンカードゲームなんて25分で60枚デッキをLOさせてるわけですから。過去MTGで【ターボフォグ】を使い60分戦い抜いた経験と照らし合わせても、LO戦術が不可能ではないと予想がつきました。
※大前提として、ゲームプレイに関係のない遅延行為は「非紳士的行為」に該当するのでNGです。LO側が1ゲーム目に勝った後、2ゲーム目に遅延するのは論外です。【蔵馬システム】側は勝てなくても相手には勝てるチャンスがあるのですから、試合時間の間はマナーを守って正々堂々と戦いましょう。1ゲーム目に50分使って勝った後、返しの2,3ゲーム目でブン回りに屈するのもまたカードゲームの醍醐味なので。
もちろん、環境デッキ考察の【冬眠コントロール】の項で述べた通り、勝つまでに時間がかかるデッキは、その時点でマッチ戦に不利です。1ゲーム目に先行2Tキルされた場合、その時点で絶対に取り返すことができません。
それでも、(脳内)最強のデッキを使う方が勝率が高いと信じて【蔵馬システム with 冬】を調整することにしました。
冬への不信感~本当に【レオストーム】に勝てるのか~
はい。なんと【冬眠コントロール】から『冬』が抜けていきました。
これには以下の理由があります。
①『冬』のデメリットが無視できなくなってきた
・2枚目以降はノイズになるのに、『冬』本体のサーチができない
『冬』は自身の特性から、1枚設置すると2枚目以降を使うことができません。そのため、できればピン差ししたいのですが、なんとこのカード、2024秋大会のカードプールでは『開錠』でしかサーチできません。
【蔵馬システム】になってデッキ枚数が増え、特定カードにアクセスするのは難しくなっています。そのため、サーチが効かないのであれば、複数枚採用して確率を高めるしかないのですが、複数枚採用すると後発がすべて不要牌になってしまうジレンマ……。
・自分のカード全破壊が、『妖狐の巻物』を巻き込んでしまう
『妖狐の禁術』を検討した時にも紹介しましたが、コントロールデッキにとって非常に有用な道具である『鉄檻』『貯め瓶』と相性の良い『妖狐の巻物』は、自然とデッキに採用されます。『設計図』によるサーチにも対応しているので、序盤にプレイして『鉄檻』『貯め瓶』のカウンターを有効活用する動きは非常に強力です。
ですが、『妖狐の巻物』を先置きすると後から出てくる『冬』の効果で破壊されてしまうんですよね。
かといって、『冬』を置くまで設置しないとなると、『冬』発動までの隙を埋める『鉄檻』『貯め瓶』と『妖狐の巻物』のシナジーがなくなってしまいます。『冬』と『妖狐の巻物』、どちらかを不採用にした方がデッキ全体のまとまりが良くなりそうです。
・コストが重い
これはシンプルで、4コストのカードは重いです。赤ウィニーなど『冬』を設置して即勝ちになる対面であれば良いのですが、問題になるのは青緑系の【クロックパーミッション】と対戦する時。相手の妨害に妨害を合わせつつ『冬』をプレイするには、相当なターンを『冬』無しで凌ぐ必要があります。そのくせ相手は設置した『冬』を『噴水』で1コストでバウンスしてくる……。コスパが悪すぎてやってられません。
・予想以上に『鉄檻』が万能
これは『冬』自体のデメリットではないのですが、序盤から終盤にかけて『鉄檻』が仕事をしてくれるので、『鉄檻』多投にするなら終盤にしか機能しない『冬』がなくても何とかなりそうという考えです。もちろん『冬』にも「維持コスト不要」「破壊されにくい」といった強みはありますし、そもそもLOを目指した超長期戦を見据える以上、維持コストが必要な『鉄檻』だけでは耐えきれないのですが……。【赤単バーン】など早いデッキに対抗するためには『鉄檻』が必須なのに、『冬』を設置すると『鉄檻』の仕事がなくなってしまうのは少し気になります。
②【レオストーム】に対して『冬』を守り切れるのか
そして最大の理由がコレ。『獅子王』採用型のレオストームに対して、『冬』を守り切る自信がありませんでした。
【冬眠コントロール】が【レオストーム】に有利(だと思っている)な理由は、主に下記2点。
・『ライオンの嵐』というキーカードに依存しているので、妨害が刺さる
・戦闘に依存しているので、『鉄檻』『冬』による戦闘制限が刺さる
この2つのうち、「戦闘制限」はデッキレシピとプレイングの工夫でひっくり返せるのではないか、という仮説が冬コンとレオストの一人回し中に浮かんできました。
例えば、こんな場面。
あなたは【冬眠コントロール】。
【レオストーム】相手に序盤は『鉄檻』や『森の中へ』で凌ぎ、無事に『冬』を設置して手札には3枚の妨害札。『冬』を破壊しに来る『今生の獅子』や、それを釣り上げる『生贄』には、妨害を当ててやろうと息巻いています。
対する相手は、『教示する母獅子』と育った『小さき未来の獅子』、そして大量の平野ライオントークンが『冬』の影響で凍りついています。『永久に咲く獅子の時代』のおかげで相手のデッキは残り僅か。勝利は目の前です。
さあ、そんな状態で、相手は3枚目の『小さき未来の獅子』をプレイしました。妨害しますか?
……しませんね。妨害はこの後プレイされるかもしれないマスカンに取っておかないと。
さあ、『小さき未来の獅子』が着地しました。すると『永久に咲く獅子の時代』の効果で、相手はデッキの上から2枚のカードを見ます。相手が墓地に送ると宣言したのは……『獅子王』!
相手は4コスト支払い、『冬』の破壊を宣言します。誘発効果なので『威圧』を採用していないこのデッキでは対抗することができません。
続けて相手は『生贄』をプレイ。こちらは当然妨害しますが、そのコストで2枚の『教示する母獅子』を生贄に捧げられてしまうのは止められません。そのまま大量のトークンと育った『小さき未来の獅子』で攻撃! あなたの負けです。
……こんなこと起こらないと断言できますか?
これの厄介なところは「任意のライオンカードで発生しうる」「いつ起こるか分からない」ところです。『今生の獅子』『生贄』『後世に残る犠牲』とマストカウンターが複数存在するデッキ相手に妨害の無駄撃ちは御法度ですし、そもそもすべてのライオンを妨害するのは妨害カードの枚数的にも非現実的です。しかも、相手が4コスト以上残っていればいつでも『獅子王』が誘発する可能性があり、そのタイミングは自分どころか相手本人にも分かりません。
もちろん『森の中へ』を持っていれば大丈夫、事前に『淘汰』でリセットしておけば大丈夫と、対抗手段はいくつかありますが……。でも『冬』が置ければ絶対安全というわけではないのが、前回大会覇者【レオストーム】の怖いところです。ああ『冬』じゃなくて『森の中へ』を毎ターン打てたらなあ……。うん?
『冬への備え』を使ってループしよう!~【蔵馬ループ】の誕生~
ここでようやく【蔵馬ループ】の登場です。
実は自分の『冬への備え』を自分で妨害することで、2枚の『冬への備え』で無限にループできることは早い段階で気づいていました。これ自体は他にも気づいている人がたくさんいた記憶があり、実際、7月頭の時点でその点について触れられているnoteがあります
ですので【冬眠コントロール】を一人回ししている時点で、ミラーマッチを想定して『冬への備え』を自分で妨害する動きを練習していました。
その動きで見えてきたのは、自分の『冬への備え』を妨害すると手札消費が大きいということでした。当たり前ですね。自分で2枚使って、しかも2ドローを無効化しているわけですから。そこで、妨害に使うカードはコントローラーにドローを与える『氷の反射』、0枚のデッキに加える4枚のうちデッキトップに置くのは、3ドローできる『森からの贈り物』にしようと構想が固まりました。……あれ?
4枚デッキ修復できて、ループパーツが2枚、ドローソースが1枚なら、任意のカードを無限にプレイできるんじゃないか?????
はい。これが【蔵馬ループ】の核となるギミックです。『冬』に頼らず『森の中へ』で【レオストーム】に対抗したいというニーズと、セルフLOを防ぐために『冬への備え』をループしたいというニーズが合体して、【蔵馬ループ】が完成しました。
あとは微調整として、【蔵馬システム】の時には最大60枚だったデッキを40枚に調整し直したり、自分のデッキを効率よく掘れるようにドローソースを見直したり、3ドローだけでループ組むと間違ってデッキが2枚以下になったときに困るので『孤毒鍋』も採用したり、『森の中へ』だけでは防げない火力に対抗するために『貯め瓶』を含めたループルートを開発したり、【冬眠コントロール】など『冬への備え』ループを妨害カードで止めてくるデッキに勝つために『夜襲』を採用したり、大会に向かう電車で「1ゲーム目負けたら時間足りないしアグレッシブサイドボーディングしないとな……」と考えて予備デッキを組んだり……そんな感じで完成です。
3. デッキレシピと採用意図
公式がアップしてくださったデッキレシピです。
見ての通りフィニッシャー不採用、大量のドロソと妨害札で固めたデッキとなっております。
【蔵馬システム】の「フィニッシャーを採用せずに大量の妨害カードを採用して相手のLOを待つ」という設計思想はそのままに、「デッキ修復ループ」を行い相手に刺さるカードを毎ターンプレイするループコンボをデッキの核としていることから、【蔵馬ループ】と名付けました。
「2. デッキの調整過程」の項で述べた通り、【冬眠コントロール】から派生しているので採用カードも近いです。【冬抜き冬眠コントロール】と考えると分かりやすいかも?
ただし、デッキの目指すゴールはまるで違います。
【冬眠コントロール】は『冬』のロック性能を活かして相手の攻撃を止め、その間に『冬将軍』で殴り勝つコントロールデッキ。
対して【蔵馬ループ】は『孤毒鍋』『冬への備え』『氷の反射』『森の中へ』の4枚をループパーツとし、毎ターン『森の中へ』をプレイすることで無限ダメージカットを目指すコンボデッキです。
例えが古臭くて申し訳ないのですが、「特定カードを無限回プレイして相手をロックする」という点ではMTGの【セプターチャント】が、「デッキを0枚にすることで、デッキ修復カードをライブラリー操作に利用する」という点では、ポケモンカードゲームの【ヤレユータンLO】が、【蔵馬ループ】のコンセプトに近いですね。
そのために【冬眠コントロール】ではあまり入らないカード(『夜襲』『渦巻くキリン』)も一部採用されております。
また、デッキには4枚採用のカードが少なく、比較的「散らした」構成になっています。これは、ループコンボを決めるためにデッキを圧縮するため、採用枚数を減らしてもタッチできる確率が高いこと、ループに入ればどんなカードでも必ず拾えることが理由です。
特徴的なカードについて、いくつか個別に紹介します。
冬への備え
最強のカード。このカードのおかげで、こんなデッキが成り立っています。
(コストなので)4枚戻しが妨害されない
下に戻すカードを任意の順番にできる
「特技」なので相手ターンでもプレイできる
2ドローがシンプルに強く、汎用性が高い
と、コンボパーツとしても純粋なカードパワーでも非常に強力で、言うことなしです。
【冬眠コントロール】でも普通に採用されているカードですが、4投されているのは珍しいかも?
ループ自体は2枚あれば成立するのですが、普通にドローソースとして使いたい場面や、相手の妨害で1枚失われる場面も想定されるので最大枚数の4枚採用。中盤に『環境不適正』を戻して2ドローできるだけで最強です。
妖狐の巻物
最強のカードその2。『冬』を不採用とすることで、このカードのポテンシャルを最大限に発揮できるようになったことが、デッキの完成度の高さにつながったと考えています。
特にコントロールミラーにおいては、このカードの有無が生命線になります。巻物置いてある側と置けてない側で妨害合戦したら、絶対に置けてない側が先に息切れするので。
・相手の巻物は絶対に妨害しつつ、自分の巻物は死守する
・相手の巻物が出てしまったら、カウンターが4個貯まる前にバウンスして、再度妨害する機会を伺う
ACGでコントロールを握る予定の人は、これだけ覚えて帰ってください。
「唯一」のため同時に2枚以上設置できないのでピン差し。『設計図』でサーチできるので全く触れないケースは少ないです。コストは0ですが、領土条件は少し厳しめなので気を付けましょう。
渦巻くキリン
【蔵馬ループ】にデッキが変更されたタイミングで、泣きながら『海中への探査』と入れ替えたカード。「特技」なので相手ターン中にプレイできる、コスト削減効果もあると、基本的に『海中への探査』の方が上位互換なのですが、代わりにキリンはデッキを3倍掘ることができます。いかに早く自分のデッキを0枚にできるかが肝なので、デッキの上から何枚掘れるかを重要視して軽量ドローソースは選定しました。『猿知恵』採用も同じ理由です。デッキ圧縮に欠かせないので、妥協せず最大枚数の4枚採用。
噴水
スーパー汎用カード。主な用途は3つ
・生物に対する疑似除去、時間稼ぎとして。登場時誘発を持つ生き物に使うと相手にアド取られるので注意です。
・対置物、特に『冬』に対して。4コストのカードを戻しながら『冬将軍』を破壊できるので、見た目以上のアドを稼いでくれます。相手が『鉄檻』の維持コストを払わずに生贄に捧げた時、相手の『妖狐の巻物』が能力を誘発させたタイミングでバウンスするのも結構効きます。
・自分の置物に対して。想定していたのは補修カウンターが4個以上のった『鉄檻』を相手ターンの終了時に戻す動き。改めて自分のターンに設置すれば、また3Tは仕事をしてくれます。バウンスでもカウンターは取り除かれるので、『妖狐の巻物』の能力が誘発することは覚えておきましょう。
このカードと交換する可能性があるのは『殴打』ですが、象系統のエース『戦傷の勇者』に対応できる点、自分の『鉄檻』を戻せる点、そしてどんな対面でも仕事ができる点を評価して『噴水』にしています。赤単バーンは『殴打』じゃないと対応できないケースが多いので、予備デッキには『殴打』を3枚採用しました。
淘汰
生物に全く触れないと『狐火』1枚で崩壊してしまうため採用。
『鉄檻』や『森の中へ』で時間を稼ぎつつ、ある程度生物が盤面に溜まったところでリセットできると、その後の展開が楽になりやすいです。コストがとても重いので、プレイするタイミングの見極めが重要。複数回使いたい場合はループで回収できるのでピン差し。
夜襲
このデッキの隠れキーカード。このカードが存在しなかったら【蔵馬ループ】で優勝はできなかったでしょう。
実は、【蔵馬ループ】を思いついた時点では、この構築はコントロールミラーで勝ちきれないと考えていました。『森の中へ』をループする動きは、相手の妨害によってループを止められ、LOしてしまう可能性があるからです。
具体的には、対戦相手の手札が6枚すべて妨害札の場合、確定でこちらのループが止まります。
通常ドローで7枚の手札を持ったこちらが『冬への備え』+『氷の反射』をプレイして、残りの手札が5枚。相手は6枚なので、『氷の反射』が妨害されて、『冬への備え』が除外されてしまうのです。
この時、『冬への備え』が解決してカードを2枚引けるのですが、ループ途中でデッキボトムに仕込む4枚は『孤毒鍋』『冬への備え』『氷の反射』『森の中へ』になりますので、次の『冬への備え』をプレイするまで妨害を持てない状態になります(『氷の反射』はあるが、これを消費するとループが崩れる)。
そうなると、次の相手のドローで妨害を引かれた場合、次のループも確定で『氷の反射』を妨害され、2枚目の『冬への備え』が消費されます。道中で1枚は『冬への備え』を消費していると考えると、ここでループが不可能になり、LO負けしてしまう可能性が高いです。
そして、相手が悠長に、通常ドローだけで妨害札6枚を揃えるのはそれほど難しくありません。こちらが毎ターン無意味に『森の中へ』をプレイするのを眺めながら、ゆっくりと妨害が揃うのを待っていればいい。
そのため、上記の展開で負けてしまう可能性は(相手のデッキトップ次第とはいえ)決して低くはないと考えていました。
……ですが『夜襲』を採用することで話が変わります。詳細は「5. 代表的な環境デッキに対する立ち回り」で説明しますが、毎ターン「森の中へ」を撃つのと同じ要領で、毎ターン『夜襲』をプレイすると、相手が手札を作る余裕が無くなり、妨害を構えられなくなります。達成するための前提条件がいくつかあるものの、無事にループが成立すればそのまま緩やかにLOを押し付けて勝ちです。
このカードのためだけに、領土デッキに基礎領土の『水生』を採用しました。それだけの価値がある、対コントロール用の最終兵器です。
孤毒鍋
手札補充用のカード。当初は純粋にドロー枚数が多い方が強いと考え、『孤毒鍋』0枚『森からの贈り物』2枚で回していましたが
・3T~6Tの間に手札補充したい場面が多い
・3ドローだけだと、ループが安定しない
という2つの点が気になり、『孤毒鍋』2枚『森からの贈り物』1枚となりました。『孤独鍋』の方が多いのは、それだけ序盤の安定感を重視したからですね。
ループが安定しないというのは、『森からの贈り物』をループパーツに使うと、何かのミスでデッキ枚数が2枚以下になってしまったときにリカバリーができなくて不安だったからです。
【蔵馬ループ】でLOを目指す以上、ループが完成してからはいかに素早くループを回して相手にターンを渡すかが重要になります(そうしないと1ゲーム目が終わる前に制限時間切れを迎えてしまうため)。そのため、何かを間違えても即興でカバーできるループを組んだ方が、安心して早指しできるし精神衛生上も良いと考えました。情けない考え方ではありますが、こういうのもきっと大事。
『孤毒鍋』であればデッキにカードが2枚あればプレイできます。何かの間違いで一番下に重要パーツがいても、『妖狐の巻物』を起動すれば1ドローできるので安心です。
氷の反射
ループパーツとして欠かせない1枚……と見せかけて、実はどんな妨害カードでも『森からの贈り物』で通常ドロー込み4枚ドローのループが組めるため、必須ではありません。とはいえ、ループ中に手札を増やす場合(「4. 基本的な回し方」で説明します)は、このカードが必要になるので最低2枚は採用したいところ。
1コストで撃てる妨害として『氷の反射』と『環境不適正』のどちらを優先すべきか、という問題ですが
・5T目以降は『環境不適正』が完全上位互換になる
・何を引かれるか分からない1ドローより、自分の手札を捨てたほうが状況をコントロールしやすい
という点を評価して『環境不適正』を優先し、ループに最低限必要な2枚採用としています。
これ以外の各種妨害の種類と採用枚数については……まあだいたい皆こんな感じになるでしょう。ということで省略。
領土デッキ
沼地4
水生領土4(『水生』1/『彼方の水平線』3)
森林領土2(『森の中の大樹』2)
計10枚。
4枚採用されている『冬への備え』や、キーカードの『妖狐の巻物』の領土条件が厳しいことから、本当はもっと森林領土を厚く採用したい気持ちがあります。ですが、2T目の領土が両方森林になってしまうと大変マズイので、安定性を求めてこの枚数に落ち着きました。
というのも、森林領土を3枚採用してしまうと、領土デッキトップ3枚がすべて『森の中の大樹』であった時に、後攻2T目の領土が両方森林になることが確定し、相手の先行3T目の動きに妨害を合わせられない状況になります。3Tキルを安定して出力できるデッキばかりの環境で、コントロールが身を守る手段は妨害しかありません。これをケアするために『森の中の大樹』2枚採用とし、1T目に大樹がでても2T目の水生領土が確定する構成となっています。
同様の理由から『夜襲』用の夜領土枠も『水生』にしています。『森林』にすると『森林』(トップ確認できない)→『森の中の大樹』で詰んでしまうからです。(そのため、1T目に大樹が出た場合に限り、『沼地』を探さずに適当な水生領土をトップ固定します。『沼地』は極力2Tまでに置きたいが、背に腹は代えられない……。)
戦列の鷲
予備デッキの中でひときわ異彩を放っているこのカード。
このカードは「1ゲーム目に負けた場合のみ」全対面に対して4枚採用される、いわゆる「アグレッシブ・サイドボーディング」用のカードです。
というのも、LO以外に勝ち手段のないこのデッキが1ゲーム目に敗北した時、どんなに頑張っても残りの2ゲームの勝利条件を満たす前に試合時間切れになってしまうからです。
それを避けるために、予備デッキから『戦列の鷲』をフル採用し、イーグルクロックパーミッションに換装して殴り勝ちにいきます。「1. 2024秋大会の環境予想」で語った通り、イーグルは『戦列の鷲』だけで完結しているので、このような強引な換装でもなんとかなる(はず)です。イーグルクロックパーミッションはお世辞にもキルターンが早いデッキとは言えませんが、それでもLO待ちするよりかははるかにマシ。
サイドボーディングの想定では、『戦列の鷲』4枚、イーグルと相性の良い『孤毒鍋』2枚を、メインデッキの『淘汰』や『森からの贈り物』、『森の中へ』などと交換。そして『戦列の鷲』を早いターンで着地させられるように『森の中の大樹』を2枚、水生領土と交換します。領土デッキの項目では森林を3枚以上採用すると事故のリスクがあると言いましたが、1戦目落とした時点でもうリスクがどうとか言ってる場合ではありません。気合でイーグルを早期に着地させ、妨害でサポートしつつ速やかに殴り勝ちます。
一応、他のアグレッシブ・サイドボーディングの候補として、『渦巻くキリン』や『猿知恵』を活かせる『四つ子の魂の呪い』、同様に『ワニの沼』を強く使えて四つ子より必要な枠が少ない『帝王クロコダイルⅡ世』、15枚すべて大胆に使って象パッケージをフル採用する『戦傷の勇者』も検討したのですが、どれもあまり安定しなそうだったので断念しました。4枚で完結する「戦列の鷲」は偉い。
※……幸いにも、当日は1ゲームも落とさなかったため、「アグレッシブ・サイドボーディング」を披露せずに済みました。大会当日に急遽思いついたアイデアだったため、実践せずに済んで正直ホッとしています。
残りの予備デッキは、対赤単を重く見て『貯め瓶』『設計図』『殴打』『森の中へ』。想定だとフルバーンが一番厳しい相手なので、予備デッキからガンガン追加します。赤単相手に1ゲーム目負けると、15枚全交換になったのかもしれませんね。
4. 基本的な回し方
マリガン
基本的にどの対面であっても、初手のマリガンは下記の基準でデッキの下に戻します。
①終盤まで使用しないカード
『夜襲』『淘汰』『森からの贈り物』『冬への備え』
②使用できる状況が限定的
『妖狐の巻物』『ペンギンフォース』『森の中へ』
③使用できる状況がやや限定的
『噴水』『海食腐食』『孤毒鍋』
残りは手札のバランスを見て決めます。『鉄檻』が2枚あったら1枚戻すとか、妨害ばっかりだから1枚戻すとか。
序盤~ループ成立まで
このデッキの勝ちパターンであるデッキ修復ループを始動するには、自分のデッキを0枚にする必要があります。
体感で9~12Tにはループが開始できる状態になりますので、それまでの時間は普通の【冬無しコントロール】として、なんとか相手の行動を妨害し生き残りましょう。
基本的には各種妨害カードや『貯め瓶』『鉄檻』『噴水』を使用して時間を稼ぎます。
ただし序盤の妨害札は、絶対に妨害しなければいけないカードだけを止めるイメージでプレイします。1コストでプレイできる『環境不適正』や『氷の反射』にはそれぞれデメリットもあるので、リスクが小さければあえて妨害しない方が良い場合も多いです。
コストが余りそうなら『渦巻くキリン』や『猿知恵』を使用して自分のデッキを掘り進めます。『設計図』はピン差しの『妖狐の巻物』をサーチできるカードであり、巻物を早めに設置することで『貯め瓶』や『鉄檻』をより強く使えるので、巻物を優先してサーチします。
中盤以降は相手側の使えるコストが増えており、マストカウンターを2枚以上連続で使用されるケースが考えられるため、常に妨害を2枚以上構える意識でプレイします。5Tを迎えれば『環境不適正』を強く使えるようになるのでガンガン使っていきましょう。妨害を使いすぎたら『冬への備え』をドローソースとしてプレイするついでに、デッキの下に戻しておきます。
中盤の失敗例としてよくあるのが、『鉄檻』の維持コストの支払い後に領土が場に出る関係上、『沼地』がムーブ状態で場に出てしまい妨害用のコストが足りなくなるパターンです。
こうならないように、領土デッキの半分は「デッキトップを確認できる領土」になっています。次のターンに『沼地』がめくれる可能性があるのかは常に意識しておきましょう。『鉄檻』が無くてコストに余裕がある時は、あえて『沼地』がめくれるように調整するのも一つのプレイング。
また『冬への備え』は最大2枚までなら使用できるので、手札枚数が不安なら迷わず使いましょう。ループする前に負けては元も子もありません。
その際、自分のデッキをシャッフルできるカードは『設計図』2枚だけなので、『設計図』をプレイしない限り『冬への備え』で下に送ったカードはそのままの順番で残ることに注意しましょう。
(例えば『渦巻くキリン』を戻す4枚の一番上に置くことで、終盤キリンを引いた時に、戻したカードをまとめて捨てて即座にデッキを0枚にできます。)
とにかく、ループを開始できるようになるまで何とかして生き残ることが重要です。
基本のループ
無事にデッキが0枚になったら、ループ開始です。
基本的な動き方は下記の通り。
⓪自分のデッキを0枚にします。
①『冬への備え』をプレイします。この時コストとして墓地の4枚を好きな順番でデッキの下に戻すことができるので、『孤毒鍋』『冬への備え』『氷の反射』『森の中へ』をこの順番で戻します。
②優先権を渡さずに『氷の反射』を自分の『冬への備え』にプレイします。解決すると『氷の反射』の効果でカードを一枚引きます(『孤毒鍋』)。
③『孤毒鍋』をプレイします。2枚引きます。
④ ①~②と同じ手順で、『冬への備え』を『氷の反射』で妨害します。1ドローで『森の中へ』を手札に加えます。
⑤相手にターンを回し、準備フェイズに『森の中へ』をプレイします。そのターン中のダメージは軽減されます。
⑥自分のターン開始時のドローで『孤毒鍋』を引きます。あとは毎ターン③~⑤を繰り返します。
……伝わったでしょうか?
手元にプロキシがある人は、回してみてください。通常ドロー込みで毎ターン『森の中へ』を撃てるのが分かると思います。
ちなみに、常にデッキトップのドローから起動できるので、相手からの『夜襲』を通してもループは継続します。
基本の動きからは外れますが、自分の手札を増やしたい場合は『孤毒鍋』を『森からの贈り物』にすることで、ドロー枚数を増やすことができます。妨害札を持ちたかったり、『淘汰』をプレイしたかったり……手札を増やしたい状況は多いです。
この場合、1サイクルごとにデッキ枚数が変化していくので、状況に応じてデッキに戻す順番を入れ替えながらLOしないように調整します(少し慣れが必要な部分です)。合計で4回『森からの贈り物』をプレイすれば、デッキ枚数が元に戻るはずなので、そこからは通常のループに戻っても構いません。
5. 代表的な環境デッキに対する立ち回り
レオストーム
相性 : 有利
マスカン : 『ライオンの嵐』『獅子王』『今生の獅子』『復活』『後世に残る犠牲』
予備デッキからの入れ替え : 特になし
このデッキに勝つために生まれてきたデッキなので、勝てなくては話になりません。基本のループで完封できます。
メインデッキから『熱傷』を採用している型は存在しないと予想してますが、念のため妨害カードを2~3枚持っておくとより安全です。勝手にLOに向かってくれるので、時間切れで引き分けになる心配も少なく、非常にやりやすい相手。
予備デッキ入れ替え後も基本の動きで大丈夫ですが、予備デッキから『熱傷』『夜襲』が追加されていることが予想されます。ループ中でも妨害は常に2枚以上抱えておき、余裕があれば手札を増やすループをはさんで、『夜襲』や『淘汰』でリスクを取り除けるとより安心です。
赤バーン系(フルバーン / 狸ウィニー / 赤緑象)
相性 : 不利 ~ 五分
マスカン : 『狐火』『大炎上』『火達磨』『不知火』『大噴火』
※(後1~先2限定で)『猟犬』『火付け狸』
予備デッキからの入れ替え : 『貯め瓶』『設計図』『森の中へ』『殴打』
これらのデッキは、こちらのターン中にも火力を飛ばしてダメージを稼いできます。『森の中へ』をループするだけでは不十分なので、以下の手順で『森の中へ』と『貯め瓶』を同時に起動し、ダメージカットと4点回復を繰り返します。
⓪『妖狐の巻物』を事前に設置しておく
①『森からの贈り物』『貯め瓶』『冬への備え』『氷の反射』をこの順番で戻して『冬への備え』をプレイし、『氷の反射』で妨害する。
②『森からの贈り物』をプレイして3枚引き、『貯め瓶』をプレイ
③『冬への備え』で『森の中へ』『貯め瓶』『冬への備え』『氷の反射』を戻し、『氷の反射』で妨害。『森の中へ』を引く(『貯め瓶』カウンター2個。ここまで9コスト使用)
④相手のターンに『森の中へ』をプレイする(『貯め瓶』カウンター3個)
⑤自分のターンで『貯め瓶』をドローし、プレイ。2つ目の『貯め瓶』プレイ時に、1つ目の『貯め瓶』が起動して4点回復+1枚ドロー。『妖狐の巻物』に妖狐カウンターが4個乗る
⑥『妖狐の巻物』を起動し、カードを1枚引く。『冬への備え』で『森からの贈り物』『冬への備え』『氷の反射』『森の中へ』を戻し、『氷の反射』で妨害
⑦『森からの贈り物』でカードを引き、デッキが0枚の状態でターンを返す。
⑧相手のターン中に『森の中へ』。(『貯め瓶』カウンター2個)
⑨自分のターンの準備フェイズに、『冬への備え』と『氷の反射』。ここで『貯め瓶』に4個乗って誘発……
(以下略)
……伝わってます?
ループになっていないので非常に難解ですが、おそらく毎ターン4点回復+ダメージカットができるはず。
(正直自分でも、このループが最適解なのか分かってません……)。
『貯め瓶』のおかげで『妖狐の巻物』にドローに必要なカウンターが貯まるので、これを上手に使って手札管理してください。
ループの説明だけ読むと完封できていない感じもしますが、実際にはこちらが4点回復している間に『猟犬』や『熱風』、『陽炎』といった『森の中へ』を突破できないカードを引いてくれるはずなので、ループが完成すればある程度余裕ができます。どちらかといえば、ループ前に焼かれるケースの方が怖い。
【赤単バーン】に採用されている火力のうち、出力が4点以上かつ相手ターン中にプレイできるのは『不知火』『大炎上』『火達磨』『大噴火』。これらは『森の中へ』で防ぐことができないので、最優先で妨害します。また『狐火』がいるとライフ管理が難しくなるので、これも優先的に処理しましょう。
逆に、3点以下の火力はすべて通してOKです(ライフが0になるまでは)。マスカン対象が多すぎるので妨害の無駄撃ちは厳禁。
赤単の中でも、特に【赤単フルバーン】は採用されている火力の種類も多く基本的に不利なので、できるだけ当たりたくない相手です。赤単が多いと予想するなら、メインデッキの『貯め瓶』や『設計図』の枚数を追加しておきたいですね。
クロックパーミッション・コントロール(青緑象 / 冬眠コン)
相性 : 五分~有利
マスカン : 『妖狐の巻物』『森からの贈り物』各種妨害札
予備デッキからの入れ替え : 『孤毒鍋』
対戦相手にも妨害札が採用されているため、何も考えずにループを組むと負けてしまう難しい相手。
ループ自体は、『森の中へ』を『夜襲』に変えた基本ループで良いのですが、ループに入る前に一工夫必要です。
・ループの入り方
⓪手札に『森からの贈り物』『夜襲』『冬への備え』を持ち、残りは手札上限ギリギリまで妨害札を持つ
①自分のデッキが残り数枚になったタイミングで、『冬への備え』を使い妨害札を2枚と『氷の反射』1枚、『冬への備え』1枚をデッキの底に置く。
②通常ドローでデッキ底に置いた妨害を引いたタイミング(手札が『森からの贈り物』『夜襲』妨害5枚)の状態で『夜襲』をプレイする。この時、相手は持っている妨害をプレイするはずなので、妨害合戦を行って『夜襲』を通す。
③『夜襲』で相手の手札を確認した後、『森からの贈り物』をプレイし、手札を増やす(デッキ0枚)
④妨害合戦でコストは使い切っているはずなので、次の自分のターンの準備フェイズ(通常ドローの前)に『冬への備え』+『氷の反射』でループを組む。あとは毎ターン『夜襲』を撃つことで、ループに妨害を撃てなくなるので勝ち
……もう対戦相手がいること前提なので、文章だと何も伝わっていないかもしれませんね。
肝要なのは、②の『夜襲』を通す動きです。
妨害を持っている側の心理として、『夜襲』を通すことは基本的にメリットがありません。手札を見られた上に1枚捨てられてしまうのであれば、持っている妨害を撃った方が断然強いためです。つまり、『夜襲』を撃つことによって相手に妨害合戦を強要できるわけですね。
そして、手札をしっかり調整していれば、手札枚数が1枚多いターンプレイヤーが妨害合戦に負けるはずがありません。(正確には1枚は『森からの贈り物』なので妨害合戦自体には負けうるのですが、目的は相手の妨害を0枚にして『森からの贈り物』を通すことなので問題なし。)
そして、③の『森からの贈り物』で3枚引くとき、引くのは①で仕込んでおいたループパーツ2種と残りの妨害札1枚です。これによって、次のターンの相手トップがドローソースや妨害札であったとしても、こちらの妨害札で対応しながらループに突入できます。
あとは自分の準備フェイズに『冬への備え』+『氷の反射』でデッキトップ4枚を固定し、『孤毒鍋』『冬への備え』『氷の反射』『夜襲』を順番にプレイするだけです。
……ここまで、妨害を持っている相手へのループの通し方を説明しましたが、実際はここまで"ガチガチ"にプレイすることはないです。
『冬』をバウンスすれば、相手の手札の内1枚が透けているわけですし、そもそも相手の手札が6枚もないパターンもあります。
要するに、「相手の手札の妨害札の枚数が、こちらの手札の妨害札の枚数よりも少ない」タイミングでループを仕掛けることを徹底するということです。
また、「『夜襲』ループ」と呼んでいますが、正確には「『夜襲』or『環境不適正』or『淘汰』ループ」です。
・相手がドローしたカードをプレイした場合 : 『環境不適正』で妨害
・相手がドローしたカードを温存した場合 : 『夜襲』でハンデス
・相手が生物を手札に貯めこんだ場合 : 出てきたタイミングで『淘汰』で一掃
この3パターンで対応できない相手は存在しません。理論上はすべての相手に通用するループルートですが、ループに入るためには相手の手札を枯渇させないといけないこと、準備が難しく早いデッキ相手に成立しにくいことから、対コントロール用のループとなっています。
また、この対面は『妖狐の巻物』の有無が非常に重要となってきます。こちらが巻物を設置できていればループの準備も楽になるし、逆に相手に巻物を置かれている場合は、手札が枯渇しないので『夜襲』ループは成功しません。どんな状況でも『妖狐の巻物』だけは妨害するようにし、設置されてしまったらドローされる前にバウンスしましょう。
予備デッキからは『孤毒鍋』を増やして手札の安定感を高めます。
クロックパーミッション相手であれば、『鉄檻』にアクセスしやすくするために『設計図』を増やしてもいいかもしれません。
対クロックパーミッションは、五分か微有利といったところでしょうか。ビートダウンとしては遅い部類なので、『鉄檻』でしっかり戦闘制限できればループまで耐えきれるはずですが、逆に中盤の妨害合戦に負けて『鉄檻』を壊されるとそのまま押し切られてしまいます。
一般的な【冬眠コントロール】に対してはかなり有利だと考えていますが、本質はコントロールミラーなので練度次第で普通に負ける可能性もあります。コントロールデッキの基本をちゃんと抑えて、妨害の撃ち先やドロソのタイミングを間違えないことが重要です。
おわりに
自分の大好きなデッキについて語っていたら、とんでもなく長い文章になってしまいました。オタク君はすぐ早口になるから……。
本当は対戦レポとかも入れたかったのですが、それは別の記事になりそうですね。
※追記:2024/10/28 対戦レポも書きました~
こんな文章を最後まで読んでくださった皆様に、深くお礼申し上げます。
この記事が、謎のデッキ【蔵馬ループ】を理解する一助になれば幸いです。
……ところで、次のAGC大会の開催が決まったようです。
もしこの大会が、LOまみれのヤバい環境になったら、自分のせいになるのでしょうか……? 今から不安でいっぱいです。
そうならないように、【蔵馬ループ】を突破する新たなデッキの誕生を切に願っております。いや本当に。よろしくお願いします。