壮大な文化祭にテレビのDNAはいらない #noteフェス レビュー 総括
その昔、私は『プロの高校生』になりたかった。
運動部に籍を置きつつも、文化祭の企画を掛け持ちして、友達の人生相談にも付き合って、勉強はまあほどほどに。充実していた高校生活だった。それだけに「こういう『毎日が文化祭』みたいな生活をして食うていくことは出来んのか」と思っていた。
「学生服の背中にコカコーラのロゴを入れてスポンサー収入を得ながら、一生、高校生を続けるのが夢」。半ば本気でそんな冗談を飛ばしていた。
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昨日、壮大な文化祭が終わった。
クリエーター向けソーシャルサービス『note』が自社スタジオで行う4日間のトーク・セッション祭り note CREATOR FESTIVAL 。内容も素晴らしかったのだが、このイベントの運営が極めて『文化祭』っぽくて、何だか少し羨ましかったのだ。プロの高校生になり損ねた一人の初老のおっさんとして。
noteで『ディレクター』と呼ばれるお仕事をしているなみきかずしさんがイベント終了直後に書いたこの記事なんかは、祭りの後の爽やかな脱力感がよく出ていると思う。若い社員の多い、若い会社の人たちが立ち上げたオンライン・イベント。無我夢中で自分たちの力で何とかやってみた。やれば出来るやん、俺たち。そんな充実感が画面を通じても伝わってきていた。
私は放送局に勤務していているので(番組を作ってるわけではないけれど)、「こういうイベントをするには、こういう設備と役割が必要なはずだ」的なことは何となく分かる。というか、どうしてもそういう目で見てしまう。
なので、直感的には素人っぽさみたいなところが散見されたのは確かなのだけれど、それ以上に感じたのは「これ、一見するとテレビと似てるけれど、ホントは根本的に違うものを作ってるんじゃないのか?」ということだった。
例えば台本。ADは台本をケツポッケしてスタジオフロアを走り回る、みたいなことはない(たぶん)。PCやタブレット、モニタでシェア。
例えばサブ(副調整室)。演者もディレクターもお客さんも、ありとあらゆる関係者が同じ部屋にいる(テレビ制作・中継の場合はスタジオサブという別部屋を必ず用意する。)
例えばカメラ。系統は5つ(かな)。でもカメラマンはいない。三脚固定の一眼レフデジカメ(たぶん)とPC数台のアウトプットをミックス/スイッチしてる。
例えば配信画面。チャットのタイムラインが縦に流れるようなサービスを配信インフラに使っていたりする。配信サービスも一つじゃない。
でも、画面は「テレビと同じ」と一般の方は思うんじゃないだろうか(ほら、そこのギョーカイ人「えー、全然違うー」とか細かいこと言うんじゃない!)。「報道ステーションみたいな映像を、noteさんは自分たちで作ってる!凄い!」と思うだろう。違うのかな。この辺は訊いてみないとわからないけど。
でも、テレビじゃないよ、これ。もっと新しいものだよ。
というか、多分テレビも最初の最初はこうだったんだと思う。で、いろいろな失敗を重ねて今のやり方になったんだけど、それはずいぶん昔の話だ。何十年もかけて築き上げたノウハウは素晴らしいのだけれど、凝り固まっていて新しい要素を取り入れる隙間がなくなっているんじゃないか。ふと、そんな風に思った。
だから、noteの皆さんは、テレビ屋のアドバイスは(あったとしても)なるべく耳を貸さない方がいい。耳を塞いだ方がいい、とすら私は思う。
いろいろと失敗を繰り返すだろうけど、その結果、今の時代の技術と価値観で新しいノウハウを作っていくべき。変な先入観なく、一から自分たちで作ったほうが、まったく違うものができて良くなるはず。テレビ屋のいうことを聞いて出来上がるのは、所詮はテレビのDNAを受け継いだ「テレビっぽい何か」だから。
とはいえ、映画やテレビの映像文法や制作手法は幾らかは継承されるだろう。それは仕方ない。今の時代ではそういう映像文化を経験しないで生きてきた人はほとんどいないのだから。パワーある媒体としてマスメディアと連携するのもアリじゃないかと思う。でも、今日ここで話すのはやめておく。
それは大人の世界の話だ。大人は文化祭なんかしない。
まずは文化祭を。次に学園祭を。やがて大人のイベントを。
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今回のイベントについては総合司会を務めたかねともさんもいろいろと感じている様子。スタッフの皆さんも含め、ほんとうにご苦労様でした。良いイベントに成長してくれると良いなあ。楽しいイベントをありがとうございました。
ひょっとすると、noteって会社は『プロの高校生』を体現している会社なのかもしれないなあ。祭りの後に夜明けまで余韻に浸るなんて。羨ましい。🍌
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【2020/9/15 追加】
このnote記事が縁で、ちゃんぽんさんの主催するインターネットラジオ「#noteフェスサポラジオ」に呼んでいただきました。楽しかったんですけど、テレビ局の人に文句言われるんじゃないかと思って緊張して話してました。
そのフェスサポラジオで聞き手に回っていただいたのがぷくしさん。収録を終えて、配信を聞いて、私の過去記事も読み込んだ上で書いていただいたセルフレビューがこちら。ぷくしさん、出演のお声がけ頂きありがとうございました。
単にイベントを視聴するお客さん側にいるだけでなくて、感想をアップして、知り合った者どうしでラジオ作って配信しちゃう。そういうノリが楽しい。そして作り手、しゃべり手がなかなか達者なのにも驚かされた。放送局の立場から話してる私の声が、PCに備え付けのマイクで一番品質が悪いのがなんとも情けない。こんなのラジオ局の人に聞かれたら絶対ミキサーさんに怒られそう。
ぷくしさん、ちゃんぽんさん、改めてありがとうございました。🍌