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Fishmans 宇宙 日本 東京@東京ガーデンシアター(@新宿109プレミアム)

実はこのライヴがあることを知ったときにはガーデンシアターのチケットがソールドアウトしていました。スゲエ。なので、サテライトライヴヴューイングで観たのですが、それでも十分に感動できる体験でした。
Fishmansが6000人キャパのガーデンシアターを満員のソールドアウトにしたというのは、やっぱり胸アツな事件と言えます。佐藤伸治が亡くなって26年もたっているにもかかわらず。この事実は、日本における現代音楽があの頃の自分たちの予想を超えて系譜として育っていることを証明しています。

日本で本格的にダブを演奏したバンドはMUTE BEATであることは間違いないのですが、その後も日本でダブを本格的に演奏するバンドはなく、数面遅れてFishmansが登場しました。MUTE BEATよりもさらに間口が広かったのもあったため、その後の日本における日本語でのレゲエ/ダブのジャンルにおいては始祖ともいえる存在。そして、傑作アルバム「空中キャンプ」「宇宙 日本 世田谷」は、リリース直後よりも10年20年経過してそのアルバムの持つ重要な意味が音楽ファンに理解されていった、という経緯があります。

有明に行っていないのでわからないですが、シアターに来ていた人たちも、その当時のファンよりも、後付けで彼らの音楽に触れた人たちの方が割合が高かった気がします。純粋に音楽を楽しむという動機とともに、あの時から今に至るまで日本語でダブを歌い続けている彼らに対する尊厳を味わいに来ている、というような雰囲気がありました。そしてそれは決して不純な動機ではなく、当日出演した華々しいゲストも同じような感覚を持っていたと思います。

今回のゲストは、ハナレグミ、君島大空、UA、そしてマヒトゥ・ザ・ピーポーという、ある意味実に豪華なメンツ。そして、実に本質的なゲスト構成。原田郁子さんはもはやコーラスに徹している役割。君島君(マジでこの人面白い)のギターが衝撃的なほど上手でちょっと度肝を抜かれました(自分のライヴではこんなすごい演奏してない)が、ゲストのだれもが佐藤伸治というよりは、Fishmansというよりは、日本語で紡がれるダブミュージックの尊厳に対するリスペクトとして召喚され、アクトしていたようにみえました。それはとても美しい所作です。

オレ自身はダブをそれほど愛している人間ではないですが、多分自分のギターエフェクトにおいてディレイのエフェクトが無駄に長いのは、何か自分の中でも拾っているところがあるのだと思います。昨日有明と全国のシアターに集まった人間たちのなかで、自ら音楽を奏でる人生を続けている人たちは多くはないかもしれませんが、たぶんMUTE BEAT/Fishmansが日本に紹介したダブの何かしらのエッセンスを拾って、そして自分の毎日につなげているのだろう、とじんわりしながら帰路につきました。

なんか、ダブの持つ余韻って、最近のモダンサウナの「ととのい」の感覚にも似ている気がします。全国のサウナ―の誰かさんも今「宇宙 日本 世田谷」聴きながら休みについているかもしれません。

それ自体が意図となってしまうとむしろダサいのですが、結果として、時間の経過の中で自然に拾ってくれる人がたくさんいるのって素敵ですね。


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