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2019-20シーズン ブンデスリーガ第28節 RBライプツィヒvsヘルタベルリン マッチレビュー~時間泥棒に成れたのは~

 ブンデスリーガのマッチレビューは3回目。ここまで続けられてるのが自分でもビックリである。
 ということで今回は、ライプツィヒvsヘルタベルリンの試合について振り返っていく。

 ライプツィヒは前節、エースヴェルナーのハットトリックもあり、マインツに5-0で快勝を収めた。前々節のフライブルク戦とは違い、トランジションの速さで相手を圧倒。自分たちの思い通りに試合を運んでいたように見えた。
 今節はバイエルン以外の上位陣が勝ち星を落とす結果となっている。数少ない優勝争いに望みを繋げるために是が非でも勝ち点3が欲しいところだ。

(ライプツィヒの前々節のレビューはコチラから)

 一方のヘルタは、ウニオンとの「ベルリンダービー」を4-0で勝利。ポジションの概念に捕らわれない可変型システムと、相手に考える時間を与えさせないプレッシングでイニチアシブを握り続けていた。
 指揮官ブルーノ・ラッバディアが就任したのは今年の4月。中断期間という難しい時期からチーム作りを任されているものの、ここ2試合で7得点かつ無失点は上出来だと言える。この勢いで強豪ライプツィヒを倒すことは出来るのだろうか。

(ヘルタの前節のレビューはコチラから)

では行こう!

両チームのスタメン

 ライプツィヒは前節と同じ4-4-2のフォーメーション。前節の試合で怪我を負ったポウルセンに代わりパトリック・シックがスタメン。また、ケヴィン・カンプルが筋肉のトラブルで急遽スタメンから外れた。これにより、アダムスがSBで起用。ライマーがCHの位置で出場した。

 対するヘルタは前節と同じメンバーで臨む。ヘルタは前節から中4日というアドバンテージがある。それが試合に影響されたのだろうか。

先に狙いを見せたのは

 この両チームと言えば「オーバーロード」と「アイソレーション」を使って攻めるパターンが多いのが特徴である。
 

 ヘルタは、前節同様にCBが大きく開いてボールを保持するところから試合に入る。密集地帯で崩せそうな素早く縦にパスを供給。ダメなら、逆サイドの広大なスペースにボールを放り込み、スピードがあるSHに1on1で勝負させるという感じだ。
 それに対し、ライプツィヒは4-2-3-1のブロックを作った。中を絞ってパスコースを作らせないことで、相手を外に誘導するような形でゲームに入る。前節の試合で素晴らしい楔を供給していたトルナリガがボールを持った際は、シックが縦に蓋。一方のボヤタがボールを持った際は、中を固めるというスタートだった。

 そして、ライプツィヒのビルドアップは

 2CBと左SBがビルドアップ隊となり、右SBのアダムスが高い位置を取った可変型システムを採用。そして、右SHのオルモがハーフスペースに入るような形になった。これは、前節のマインツ戦同様、右サイドでオーバーロードを作って、左サイドがアイソレーションになる布陣だ。
 前節は、左SBのハステンブルクが高い位置を取っていたが、この試合では、エンクンクが大外に余るシーンが多く見られた。

 しかし、これに対するヘルタの組織的な守備もお見事だった。

 これは前半4分のシーン。
 大外のアダムスにボールが入った際、SBが出るのでは無くCHのシェルブレッドが対応。これにより、SBのブラッテンハルトが、チャンネルとハーフスペースを空けずに最終ラインへ戻ることが可能となった。
 そして、ボールを受けに来たザービッツァに対してはCHのグルイッチとSHのクーニャが素早く囲んでボールを奪いきったのだ。ヘルタの特徴としては両SHのクーニャとルケバキオが攻守に渡ってハードワークしている。彼ら2人のプレスバックが終始効いていたため、ライプツィヒはここの攻略に苦しんでいた。

 そして、前半開始9分にブラッテンハルトのコーナーキックにグルイッチが合わせてアウェイのヘルタが先制に成功する。そのコーナーキックを獲得した流れに、ヘルタの意図が見えた。

 GKのゴールキックから始まり、左サイドでオーバーロードを作る。そして、ザービッツァのクリアボールを拾ったクーニャが大きなサイドチェンジで局面を変えたのだ。これには左SBのハステンブルクが出なければ行けないのだが、推進力のあるルケバキオはクロスにまで持って行った。
 このようにまずは前線にボールを当ててから空いているスペースを使っていくような攻撃パターンは度々見られた。先にこの試合での狙いを見せたヘルタが先制。さて、ライプツィヒはどう出たのか。

プレッシングによる穴

 先制点が入った直後に、アシストを記録した左SBのプラッテンハルトが自ら「交代して欲しい」とベンチにアピール。その前のプレーで頭部への接触プレーがあり、これが原因でベンチに退いた。代わりにミッテルシュタットがピッチに入った。
 ミッテルシュタットのサイドは、ライプツィヒのオーバーロードは構築される場所。そのため、忙しくなることが予想されていた。ただ、彼もそれなりに能力の高い選手だ。素早い読みからのボールカットでライプツィヒの攻撃を押さえ込みチャンスを作らせずないですんなりとゲームに入れていた。

 さぁ、いよいよ攻め手が無いライプツィヒ。それでも、ある時間帯から立て続けに同じようなスペースを起点にチャンスを構築した。

 ヘルタの守備の特徴は、選手間は常に近いところにある。誰かが剥がされても別の選手がカバーに入ってボール奪取や足止めをするのだ。足止めした場合は、別の選手が戻って囲い込む。この組織立ったプレッシングが今のヘルタの魅力とも言えるだろう。
 しかし、裏を返せば選手たちが自分たちのポジションを離れてまで次々に前へと出て行くことになる。そのため、何処かしらに広大なスペースを背負いながら守ることになるのだ。

 このシーンでは、前線の選手たちが群がってプレスをしかけた。その結果、中盤とDFの間に大きなスペースが生まれヴェルナーにフリーでボールが渡ってしまったのだ。本来なら、上記で書いたように誰かが持ち場を離れてアプローチに行くのだが、距離があったことと、誰かが出ることで、アダムスとシックをフリーにさせてしまうため、後退しながらの守備となってしまった。
 そして、この流れで得たコーナーキックをクロスターマンに決められ1-1の同点。さらに、この直後にも、ヴェルナーがDFラインと中盤の間でボールを受けカウンターの起点を作られていた。

 このプレッシングにより生まれた穴を見つけたライプツィヒが一気に反撃!かと思われたが、やはりヘルタのプレッシングは健在。穴を作ることなく、強度の高いプレッシングを続けてライプツィヒに得点を奪わせず前半を終えた。

重なるアンラッキーの連続

 後半に入り、ライプツィヒ側が戦い方を変えてきそうと思っていたが、蓋を開けてみたら前半同様の道を選んでいた。すると、後半13分にオルモを下げてルックマンを投入。あくまで「人」を変える策に出たのだ。しかし、悠長なことを言ってられない展開となってしまう。同18分、クーニャの突破にハステンブルクがたまらずファウル。この日2枚目のイエローカードを提示され退場となってしまった。

 これにより精神、人数、数と全ての条件で優位に立ったヘルタが試合を進めていくだろうと思ったが、ここでもアンラッキーが起こる。後半23分、トランジション勝負でライマーにボールを奪われると、最後はシックがシュートを打つ。これをGKヤシュティンがキャッチしたと思ったが、まさかのファンブル。ボールはゴールに吸い込まれ逆転を許した。

 思わぬ形で逆転に成功した、ライプツィヒはヴォルフとオルバンを投入。ライマーをアンカーに残し、3-1-4-1の布陣を採用した。守備時は、両WBが下がって5バックを形勢した5-3-1で守る。完全にゴール前を堅め1点を逃げ切る策をナーゲルスマンは選んだ。

 しかし、まだ試合は終わらない。後半36分。大外でボールを受けたクーニャがボックス内に侵入すると、ルックマンに倒されPKを獲得。これを途中出場ピョンテクが決めて再び試合は振り出しに戻る。

 最後は、人数の多いヘルタがボールを保持し3点目を奪いに行くがゴールが奪えず2-2のドローで決着。後半は大きなミスの数々が試合結果に反映されてしまう終わり方となった。

総評

 中4日で試合に臨んだヘルタに対し、ライプツィヒは中2日という短さ。ここが、ライプツィヒにとって試合を難しくさせてしまった要因だと感じた。その理由として、トランジション勝負でライプツィヒが勝てなかった部分がある。特に攻→守への切り替えがマインツ戦に比べたらかなり遅いように感じてしまった。

 サッカーは時間の奪い合いでもある。どれだけ、相手に時間を与えないかが勝負を分ける可能性が高いと言っても過言では無い。ボール保持やトランジションの速さで相手を圧倒するライプツィヒは、まさしく「時間泥棒」といった感じだ。だが、この日の「時間泥棒」はヘルタの方だった。

 ヘルタはトランジション勝負でもライプツィヒを圧倒し、確率されたボール保持で時間を進めることが出来ていた。そんな中で、ミスから逆転を許したことが痛手だったと言える。それを除けばこの試合は間違い無くヘルタの試合となっていただろう。


 ここからは両チームの総括。まずはホームライプツィヒからだ。
 筆者的には、ナーゲルスマンが前半と後半で戦い方を変えなかった原因は何処にあるのかが気になった。もし、期間の短さが準備を怠らせたとするならば、「準備期間の少なさが、手数の少なさ」と言っても良いと筆者は汲み取ったが、ここは試合を見た人にとって意見が分かれる部分だろう。
 それと、ここに来てチームの核となる選手を怪我で失ったのは大きい。前節のマインツ戦と比べるとポウルセン、カンプルの偉大さに気付かされた(スパーズはその2人抜きで完膚なきまでにやられたが....。)

 一方のヘルタは本当に良いチームである。ブルーノ・ラッバディア就任から3試合で9得点2失点はかなり上出来だと言える。失点はセットプレーと、ライマーのインターセプトからシュートまで運ばれた2失点だけ。その他は圧倒的な集中力で組織的なプレッシングが行えていた。前節シュートを16本打った相手を7本にまで抑えたのは素晴らしいのでは無いだろうか。

 それでも油断は禁物だ。このチームは1試合におけるハードワークがかなり大きい。そんな中、次の試合は中2日で行なわれる。1試合に溜まる疲労も相当大きい中で、どれだけリフレッシュして臨めるかが鍵となりそうだ。
 正直に言えば、いまのヘルタの生命戦はCHとSHである。彼らが攻守に渡って走り続けることでチームが上手く循環しているのだ。そのため、彼らのパフォーマンスが落ちれば自ずとチームの勢いも落ちていくだろう。そしてこの試合では、ルケバキオ、シェルブレッドは途中で退いたが、退場とPKを誘発したクーニャと先制点を挙げたグルイッチはフル出場している。
 次の試合も彼らに任せるのか。それとも、ターンオーバーを敷くのか。ここは、ブルーノ・ラッバディアの手腕が試される。

ライプツィヒ2-2ヘルタベルリン

得点者
(ヘルタ)
前半9分 15グルイッチ
後半37分 7ピョンテク(PK)

(ライプツィヒ)
前半24分 16クロスターマン
後半21分 21シック

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