飛車角落ちのスパーズが堅守を破った2つのプラン
チームの大黒柱である絶対的エース、ハリーケインを怪我で欠くスパーズ。さらにイングランド代表のアリもハムストリングを負傷。飛車角落ちの状態に加え、この冬も夏に続いて選手の補強は無かった。満身創痍となっているチームの台所事情だが、ここ数試合は苦しみながらも勝ち星を積み上げ、現在3位につけることができている。
そんな中迎えた今節のゲームは、前回の試合で2位のマンチェスターシティに勝利したニューカッスルと対戦。スパーズは中2日のランチタイムゲームという、コンディション面が不安視される中で2つのプランを用意してきた。
両チームのスターティングメンバー
スパーズは前節から3人メンバーを変更。フォーメーションも3バックから4バックにシフトし、4-2-1-3のような布陣をとった。対するニューカッスルはシティを倒した時と同様に5バック。1トップのサロモン・ロンドンにボールを当てて、2列目とサイドバックが追い越しボールを受ける。そして最後は、再びロンドンに仕留める攻撃パターンが特徴だ。
スパーズ前半のプラン
スパーズの前半のプランは、左右非対称の配置によるビルドアップだ。白のスペースが定位置だと考えると多くの選手が流動的に動いているのが分かる。
特に特徴的なのは、シソコを右SBに位置に置き、サイドバックのトリッピアーを押し上げる部分だ。これは、エバートンとのアウェイゲームでも見られた配置だ。
その際ラメラは、ハーフスペースへと移動。右のアウトレーンは常にトリッピアーが相手の左SBに入るリッチーと勝負する形を作る。その際、エリクセン、ラメラ、シソコがボールに関わり、人数をかけて崩す。いわゆる「オーバーロード」のような形だ。
一方の左サイドは、フェルトンゲンがハーフスペースに入りアウトレーンではソンフンミンがプレー。ソンフンミンがアタッキングサードに入った時は縦に勝負をするシーンが多く見られた。
また、ソンフンミンがハーフスペースに入った時は、フェルトンゲンがアウトレーンへと移る。そして、フェルトンゲンがアタッキングサードへと侵入した際は、クロスを供給していた。
ウィンクスを軸として、右がダメならウィンクスを経由して左へと攻撃。逆に左がダメなら右へと移る。このようにしてニューカッスルの強固なブロックに揺さぶりをかけるも得点を奪うことは出来なかった。
その理由としてはニューカッスルのマークの受け渡しが上手かったからだろう。自分の担当するスペースに入った選手には必ず付いていく。そして、自分の持ち場から相手選手が離れれば仲間へとマークを受け渡す。
このシーンではラメラをマークしていたアツが、ボールを保持したシソコにアプローチする。その後シソコはリッチーの背中を取る動きをしたが、アツはルジュールへとマークを引き渡した。このようなマークの受け渡しでスパーズの攻撃を耐えた。
後半のプラン
流れを変えたいスパーズは、60分にルーカスに変えて高さがあるジョレンテを投入。これにより、ラフにロングボールを放り込むシーンが増えた。
ボールサイドと遠い位置で待ち構えジョレンテに放り込む。これは71分の決定機だったが、得点に結びつくことが出来なかった。この後もジョレンテにボールを当てるシーンは多々あった。その際、ラメラとソンフンミンがセカンドボールを回収するために、ジョレンテと近い位置でプレー。両SBは、幅を取るために横に開くのだ。
78分。ラメラを下げてローズを投入。アルデルヴァイレルト、フェルトンゲン、サンチェスのスリーバック。トリッピアーとローズをWBにして、トップ下にはエリクセンを配置した。
そして、83分ついに試合が動いた。
トリッピアーからのリターンパスを受けたアルデルヴァイレルトがジョレンテへロングパス。ポストプレーからボールを受けたソンフンミンがDFを交わし放ったシュートは、GKドゥブラフカの脇をすり抜けネットを揺らした。一見ソンフンミンの素晴らしい「個」の力にも見えたが、ゴール前にバスを置くような守りをしていたニューカッスルDFは手薄となり、明らかに後手を踏んでいた。
まず、右サイドに幅を作っていたトリッピアーに対しリッチーがついていく。これにより5バックにズレが生じた。シソコが下がったことで、ルジュールはリッチーへとマークを引き渡す。そして、ラッセルズとシェアも、リッチーが空けたスペースを埋めるためにスライドをする。そのため、シェアとジョレンテの1対1の局面が生まれたのだ。
ソンフンミンがボールを受けた際、ロングスタッフとルジュールが慌てて寄せに行くが、この時点で後手を踏んでいた。そのため深い切り返しでなんなく交わされ、シュートコースが生まれたのだ。
アジアカップから戻ってきて中2日で試合に出場しフル出場した前節。さらに今節も中2日での試合。疲労が溜まっている中でのこのゴールはお見事以外の言葉が出なかった。
だが、チームとして組織が成り立ったから生まれたゴールとも言える。ソンフンミンにフォーカスされがちなシーンだが、スパーズの選手の配置が功を奏したと言っても過言では無い。二大エースが不在の中魅せたポチェッティーノの手腕も評価に値するのではないだろうか。
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【ヘッダーと写真】トッテナム公式Twitterから引用
【図面】Football Tactics