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J1参入プレーオフ 2回戦 横浜FCvs東京V 緑の名門と待っていたドラマ

 J1へ行けるイスは残り一つ。前回、1人退場者を出しながらも5位の大宮アルディージャに勝利し、6位からの下克上を狙う東京ヴェルディ。相手は引き分け以上で入れ替え戦の権利が与えられる横浜FCとの対決。
 序盤から激しい守備を繰り広げ手堅い展開が続いたゲームだったが、試合終盤、我々の想像を超えるシナリオが待っていた。

両チームのスターティングメンバー

 横浜FCは、司令塔であるレアンドロ・ドミンゲスが怪我により負傷離脱。その代わりに野村直輝が出場。佐藤謙介をアンカーに置いた、3-1-4-1-1のような布陣となった。
 一方のアウェイで戦う東京ヴェルディは、3-4-2-1のフォーメーション。泉澤仁、藤本寛也というスピードを持つ攻撃陣が怪我で離脱する中、内田達也までが出場停止。その代わりに21歳の井上潮音が入った。
 ヴェルディの狙い所としては、佐藤謙介の両脇。5レーンの構造について話すなら「ハーフスペース」をいかに付けるかが攻撃の鍵となる。そして、アウトサイドレーンでは1対1の攻防が繰り広げられる。ここが勝負所となった。

△円陣を組む横浜FCのイレブン

手堅い前半好機を作ったのは

 試合展開としては、ヴェルディがボールを握り横浜FCがDFラインを高く保ちながら5-3-2のブロックを組み、待ち構える構図となった。
 スペイン人指揮官、ロティーナの下「ポジショナルプレー」を意識した戦い方をするヴェルディ。しかし、前半だけを見れば「ポジショナルプレー」の原則とも言える「数的優位」や「3人目の動き」が少なかった。常にマンツーマンのような守備になる横浜FCは守りやすかったに違いない。現に、球際での強さが、横浜FCの方には見受けられた。そこで奪いきってからのロングカウンターというシーンが多かった印象だ。
 この試合のファーストシュートは、前半開始してから20分後。エリア内でボールを拾った横浜FCの齋藤がクロスを入れ、ファーサイドに居た永田拓也がヘディングシュート。これは大きく枠を外れる。これもロングカンターから始まったシーンだった。さらに28分。再びチャンスを作り右のCBを務める川﨑がダイレクトでアーリークロスを入れると、最後はイバが下がりながら頭で合わせる。しかし、これはポストに阻まれゴールならず。
 その後も横浜FCがチャンスを作るシーンが続くが、シュートを枠に飛ばすことができなかった。前半のスタッツもヴェルディがシュート2本に対し、横浜FCのシュートは6本。しかし、枠内は0本という数字を記録した。

交代から生まれたヴェルディのポジショナルプレー

 前半、ヴェルディのアタッキングサードは中央が一番高い数字だった。本来ならサイドのどちらかが高く出なければいけなかったのだが、サイドを経由して攻撃できるシーンが少なかったことが分かる。これは、前述で述べた「数的優位」の形を作れていなかったからだ。この数字が、試合終了後には大きく変化していた。

 ロティーナ監督は同じメンバーを後半に送り込んだ。だが49分に2枚代えを決意。井上潮音を下げてスピードが有り、展開力を持っている梶川諒太を起用。さらにリヨンジを下げてレアンドロを投入した。レアンドロが頂点に立ち、林がシャドーへとポジションを変更。そして、そのわずか1分後にその効果が得られた。

 左サイドからのスローインで右へとボールを展開。田村のクサビを受けた林が、ヨンアピンを引きつけることに成功。そのヨンアピンが空けてしまったスペースに渡辺皓太が走り込む。これで局面が大きく代わり、ヴェルディはゴール前まで侵入することに成功した。
 赤い枠の中は3vs3の状況が生まれている。それに渡辺が関与することで4vs3の数的優位が作れたのが分かるだろうか。さらに、林のキープが1人目の動きと仮定し、田村のパスが2人目の動きとする。そうなると、渡辺のオフ・ザ・ボールの動きはポジショナルプレーの規則でもある「3人目の動き」になるのだ。後半は、このような形が多く作れていた。前半、手詰まりだったヴェルディの攻撃はここから機能し始める。
 それは数字を見ても明確となっていた。後半のヴェルディのアタッキングゾーンは、中央が29%にまで減少。右が39%で左が32%となった。左右を上手く使いながら組み立てられていたことが分かる。

 また、68分のシーンでは

 先ほどと同じく、林、奈良輪、田村で三角形となり「数的優位」の局面を作った場面。再びヨンアピンが釣れてできた裏のスペースに今度は梶川が走り込んでいた。冒頭で述べたように、アンカーに位置する佐藤謙介の両脇を使おうとした良いシーンだった。
 しかし、最後の精度が物足りない。このシーンも梶川にパスが通ることなく終わってしまった。逆に横浜FCは奪ってからのロングカウンターが光る。瀬沼優司と齋藤功介のインサイドハーフがドリブルで駆け上がりフィニッシュまで持って行く場面が続く。71分には、瀬沼から大外を経由し、インナーラップで駆け上がってきた北爪がボールを受け、フィニッシュまで持って行くが上福元がビックセーブ。74分に、ヴェルディはドウグラス・ヴィエイラを投入してシステムを4-4-2に変更。だが、試合の流れは再び横浜FCへと傾き、後半のアディショナルタイムに突入をする。

劇的な幕引き。「チャンスを活かす」重要性

 後半に表示された追加時間は「7分」。小競り合いや選手の負傷による治療もあったため、普段よりも多くの時間が残されていた。横浜FCはこのまま終わることができれば、磐田とのJ1入れ替え戦に臨める。対するヴェルディは1点を奪わなければいけない厳しい状況だった。 
 そんな中最初に決定機を迎えたのは、横浜FCだった。90+4分。井林がクリアを誤り、ボールを拾った途中出場の戸島がGKと1対1になる。戸島はシュートを放つが決めきることができず。そして迎えた90+6分。コーナーキックのチャンスを得たヴェルディは、GK上福元までもが上がってくる。佐藤優平の蹴ったボールをフリーになっていた上福元がヘディングシュート。GKが弾いたところをドウグラス・ヴィエイラが押し込みヴェルディが土壇場で先制に成功した。

△ドウグラス・ヴィエイラのゴールに沸く選手とサポーター

 試合はこのまま終了。1-0でヴェルディが勝利し、磐田との入れ替え戦に臨む形となった。

 試合を振り返ってみても、決定的なチャンスを作っていたのが明らかに横浜FCの方だった。横浜FCのシュート数は15本。それに対してヴェルディは9本だった。「決めきるところで、決めきらなければいけない」というサッカーで起こりがちな現象を、横浜FCの選手たちは改めて感じた試合となったに違いない。

△試合後ピッチを眺めるイバと三浦知良選手。

△決勝ゴールを決めたドウグラス・ヴィエイラ選手

△この試合MVP級の活躍を見せた上福元

6位からの下克上。目指すは名門復活

 歓喜の渦へと包まれたヴェルディサイド。決戦は、明日の14時から行なわれる。ジュビロ磐田のホームに乗り込んでの大事な一戦。これまで二度のホームアドバンテージを覆し、下克上を成し遂げてきたヴェルディにとっては、もう恐れるモノは無いだろう。2008年以来となるJ1の舞台へ。準備は整った。

 ここで、明日の試合の注目ポイントを上げてみることにする。それは「セットプレー」だ。磐田は、今シーズンセットプレーからの失点が、全体の35.4%を占めている。一方のヴェルディはセットプレーからの得点が全体の25%と一番高い数値を叩き出している。大宮、横浜FCと共にセットプレーからゴールを奪っている東京ヴェルディ。この試合もセットプレーから奇跡を呼び起こすことができるか。

最後に

 今回、ステキなお写真をご提供いただいた友人には本当に感謝しています。本当にありがとうございました!

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