7人でいると勇気が湧いてくる【On7/『BITE』VOL.3(2015年)掲載】
BITEーPプレオープンを記念して、雑誌『BITE』に掲載された過去インタビューからいくつかの記事をご紹介! このテキスト及び写真は2015年発行の『BITE』VOL.3より転載しています。末尾にOn7最新情報も掲載しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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青年座、文学座、俳優座、演劇集団円、テアトル・エコーという、歴史ある新劇の劇団に所属する女優7人による演劇ユニット“On7”。第2回公演『その頬、熱線に焼かれ』では、広島の原爆乙女たちを熱演し、評判を呼んだ。公演ごとに「今、面白い」と思える脚本家や演出家に声をかけて舞台を創造している彼女たちは、とにかくアクティブ。7人で話し合いながら、公演の企画から宣伝、制作まですべて自分たちで行っている。インタビューでは、尾身美詞、小暮智美、渋谷はるかが、On7の舞台にかける想いを熱心に、賑やかに語ってくれた。
渋谷はるか しぶやはるか(写真左)○1982年生まれ、神奈川県出身。文学座所属。On7、文学座の公演のほか、劇団チョコレートケーキ、青☆組、サスペンデッズなどの外部舞台にも出演。テレビドラマやCM、ラジオドラマ、声の出演など、幅広く活動している。
尾身美詞 おみみのり(写真中)○1984年生まれ、東京都出身。青年座所属。On7、青年座の公演のほか、外部舞台にも出演。近年の出演舞台に劇団桟敷童子『オバケの太陽』などがある。その他、『踊る!さんま御殿!』『ものまね紅白歌合戦』などのバラエティー番組の出演や声の出演も多数。
小暮智美 こぐれともみ(写真右)○1983年生まれ、福島県出身。青年座所属。On7、青年座の公演のほか、外部舞台にも出演。近年の公演にアトリエ・センターフォワード『あられもない貴婦人』。その他、映像や声の出演も多数。高校演劇の審査員や、会津弁方言指導(『超高速 参勤交代』『八重の桜』)などの活動も行っている。
On7『その頬、熱線に焼かれ』2015/9/10~20◎こまばアゴラ劇場 [作]古川健(劇団チョコレートケーキ) [演出]日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)[出演]安藤瞳(青年座) 尾身美詞(青年座) 渋谷はるか(文学座) 吉田久美(演劇集団円) 小暮智美(青年座) 宮山知衣(テアトル・エコー) 保亜美(俳優座) [公演情報/2015年]
[ストーリー]広島の原爆で肌を焼かれ、顔や体にケロイドを負った女性たち。そのなかから25人が“原爆乙女”に選ばれ、ケロイドの治療のため渡米した。手術が進むなか、智子(安藤瞳)が術後に原因不明で急死してしまい、皆の間に動揺が広がる。手術を怖がる敏子(尾身美詞)、敏子を批判する弘子(渋谷はるか)、皆をなだめる信江(小暮智美)。病院の面会室に集まった6人は、それぞれの境遇や思いを赤裸々に語り合う──。
▼計り知れない力が働いた公演▼
──原爆乙女を題材にした作品で、皆さんは顔や手足にケロイドを負った被爆者の女性を熱演されました。一人ひとりの女性の持つ切実さ、強さがすごく胸に迫ってきました。評判もとてもよかったですよね。
渋谷 ありがたいことに、楽日が近づくにつれじわじわ集客が伸びていって。新聞の劇評にも取り上げていただき、評判を聞いて足を運んでくださった方も多かったみたいです。公演期間が11日間と長かったので、お客さんの反応を見ながらやっていくなかでいろいろな発見がありましたね。
尾身 そうだね。アゴラ劇場での公演だったこともあり、On7の名前は知っていたけど実際に観たことはなかったというお客さんもたくさん来てくださって。新しいお客さんに観ていただき、声をかけていただいたことは、とても収穫になりました。
小暮 リピーターのお客さんも多かったよね。何度も来てくださって、そのたびにTwitterなどで熱のこもった感想をつぶやいていただいて。観てくださったお客さんのその熱が、また新たなお客さんを劇場に呼んでくれたのかなと思います。それは私たちの力だけではない、なにか計り知れない力でしたね。
▼体験者への取材で得られた“実感”▼
──実在した“原爆乙女”を演じるのは、いろいろ難しい部分も多かったと思います。
尾身 実際に体験された方々がまだご存命なので、やるのは勇気が要るなと思いました。でも、7人で広島へ取材旅行に行ったときに実体験された方々のお話を伺って、私たちが演劇でできることがあるんじゃないかと思えました。この作品を上演する機会を与えていただいたことはとても幸せだなと思います。
小暮 お話を伺った方たちは、ご高齢なのにすごくパワフルで。形式ばって話を聞くという感じじゃなくて、気がついたら渋谷マークシティのライオンで一緒に呑んでた、みたいな(笑)。
尾身 ほんと、自分のおばあちゃんとかお友達という感じになれて。「私ね、こうだったんだよ」と気さくにいろいろ話してくださったので、すごく身近な話だと思えました。
渋谷 教科書に書かれていることじゃない、現実に生きている方たちのお話だからね。でも同時に、私たちがいくら想像しても、実際に被爆された方の体験には追い付けないと思うんです。演じることで「あの方たちの気持ちを体現しました」なんて絶対に言えない。たぶんできてないし。でも、拙くても足りなくても、自分なりに想像して伝えようとすることは、大きな意義があると思います。
──日澤雄介さんの演出はいかがでしたか?
小暮 わがままな7人に最後まで寄り添ってくださいました(笑)。稽古では私たちのやることを受け止めつつも、やりすぎると「これはいらない」とどんどんそ削ぎ落としていって。
渋谷 「説明をしないでほしい」とすごく言われたよね。私たちはケロイドを負っていて辛いんです、と説明するのではなく、“実感”を持ってやってほしいと。
尾身 過剰にやると嘘に見えてしまうからと。相手の目を見て感じられることや、その場で生まれる空気を大切にして作っていきました。
小暮 本番でも日澤さんに言われたことを信じてやり続けました。そうしたら、作品にどんどん血が入り肉が入り、熟成していくのを体感しましたね。
▼すべてを曝け出せる仲間▼
──ところで、On7の皆さんは、普段どんな感じなのですか?
尾身 「女が7人もいたら仲が悪いんじゃない?」とよく言われるんですけど、そんなことなくて、すっごく仲が良いんですよ。稽古でも全部曝け出せるんです。うまくいかないと、「わからないよ、みんなで一緒に考えてよ!」みたいな(笑)。
渋谷 うん。私、大人になってからこういう友達ができて良かったって思います(笑)。
小暮 わかる、わかる。あと、それぞれ所属劇団の舞台に出たり、外部の仕事をしているので、On7で集まると「みんな外でいろいろ経験してきたな」と刺激になります。切磋琢磨できますね。
尾身 そうだね。みんな普段から密に連絡を取って、次の公演のことなどを話し合っています。7人で分散して話題の舞台を観に行って、面白いものがあったら「これ観て!」とほかの人たちに連絡して。それであれこれ感想を言い合いながら、「次回はこの演出家さんとやってみたいね」とか話します。
渋谷 次回は谷賢一さんとご一緒させていただくんですが、安藤(瞳)が最初に谷さんの舞台を観て、すごく面白かったと言って。「どうしても谷さんと一緒にやりたい。私、連絡とる!」と(笑)。
小暮 谷さんと相談しているうちに「On7と谷さんが知り合う、みたいな目的でワークショップをやりましょう」という話になり、7人全員で参加させて頂きました。お芝居を一緒にやっていく上ではやっぱり相性も大事なので、お見合いのような感じで(笑)。
尾身 On7だから、とりあえず7回は公演を続けようねって言っていて。7回やるならどんな作品をやろうか、いつまでにどの劇場でやろうかと、みんなで夢を語っています(笑)。何回公演までに本多劇場に行けたらいいねとか。
小暮 誰か本多さんの知り合いいない? みたいな(笑)。
渋谷 自分たちの宣伝はかなり積極的にしてるよね。面識のない演出家の方にも手紙を書いていきなりDMを送りつけたり(笑)。
小暮 みんなで集まって、勢いで「書いちゃえ書いちゃえ!」みたいな。1人だったらそこまではできないですね。
尾身 うん。尾身美詞個人として「私こういう者です」とアピールしたりはできないですけど、On7というものを背負っただけでなんか勇気が湧いてくる。On7を始めてから、出会いが広がりましたね。
渋谷 そうだよね。みんなで積極的に動くと、どんどんつながっていって、なんとなく良い方向に行くような気がする。
小暮 On7での活動が、個人の仕事にも結びついたり。
尾身 いろんな方に助けていただいてます。On7ってほんとに運が良いよね。
[文]渡辺敏恵
[撮影]岩田えり(人物) 飯嶋康二(舞台)
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On7 第5回公演 『七祭 〜ナナフェス〜 この夏、胸アツ! 演劇2本に映画だ、わっしょい!』 2021/7/2〜11◎シアター711 演劇[作・演出]土田英生(MONO) 早船聡(サスペンデッズ) 映画[脚本・監督]田中聡 [出演]安藤瞳(青年座) 尾身美詞(青年座) 渋谷はるか(文学座) 吉田久美(演劇集団円) 小暮智美(青年座) 宮山知衣(テアトル・エコー放送映画部) 保亜美(俳優座)