見出し画像

ピー助

最近は、暗い話ばかり書いてたから、今回はほのぼのホンワカする話を書きます。

犬が欲しくてたまらなかった小学生の時に出会った、ビーグル犬のコロに、まんまと、ふくらはぎを噛まれて逃げられた僕だったが、やはりペットは飼いたいという願望は日に日に強くなってた。

猫はいたんだが、ばあちゃんがほとんど世話をしてたし、山にも行って魚とかネズミも捕まえてるのも見てたし、ほとんど野良猫みたいな感じで僕のペットという感じではなかった。

猫の名前は毛が白いから「シロ」

僕が餌をあげる時だけ、甘えて来て撫でさせてくれてた。しかし、もっとペットらしいペットが欲しかった

コロに噛まれてからは犬は怖くなってたから、今度は噛まないジュウシマツ、小さな小鳥が欲しくなってた。人の手によって作られた鳥だ。だから野生にはいなくて、飛ぶ力が弱いから鳥かごの中で生きるしかない。

親に頼んで、街にジュウシマツを買いに行った。ペットショップの鳥かごの中でジュウシマツがピーピー鳴いてる。

「坊や、どうだい、この歌声。オイラの歌声は朝日を呼び起こし、夕方にはオネムにさせるよ〜」

それは普通の太陽の動きでは?と思ったが、僕はどうしても僕だけのペットがほしかった。

だから、この白いジュウシマツに決めた。今回はコロみたいにコッペパンで釣る必要はないのだ。金でどうにかなる。このジュウシマツがなんと言おうと、金で黙らせる。

まるで、銀座で愛人を探す政治家みたいなことしてるが、とにかくジュウシマツ一羽と、鳥かごを購入した。

ピーピー鳴くから名前は「ピー助」と名付けた。

ピー助は野生では生きれない鳥なのだ。

だから僕が守る!

僕しか守る人間はいないのだ!なんたって野生では生きていけないのだ。ならば誰が守る?

僕しかいないだろ!この剛腕で守る!

その時の小学生の僕の必殺技は確か、縄跳びの二重跳びだ。このスビードとリズミカルな動き、そして当たれば痛そうな縄の音!

ヒュンヒュン鳴ってる、響いてる。この技でピー助を守る!

それに、いざとなったら猫のシロもいる。

ムツゴロウさんの動物王国には負けるけど、ジョージの動物村ぐらいにはなる。

今日からピー助は僕とシロとファミリーだ。

僕は一生懸命にピー助の世話をした。餌やりはもちろんのこと、トイレの掃除、寝床の掃除、ピー助の為ならば全然苦じゃない。

ジュウシマツの平均寿命は約八年。確実に僕より早く死ぬ。

親の僕より早く死ぬなんて、本当に親不孝な奴だ。だが、その時まで精一杯世話をして、ピー助に僕とシロとのファミリーで本当に良かったと、このジュウシマツの生涯に一片の悔いなし!と思って旅立ってほしいのだ。

この鳥かごにいる限りは安全だ。ピー助の寿命を少しでも長く延ばして、ピー助と楽しい思い出をたくさん作る。

そんな思いと共に楽しい一週間が過ぎた。

そんなある日、シロがまた魚かネズミを捕まえて噛みついてるのを見つけた。

僕はシロの頭を撫でながら、こう褒めた。「本当にシロはワイルドだな、ピー助は野生では生きて行けないけど、シロは大丈夫だ。ピー助も少しは見習えよ、なぁ、ピー助……」

そう言って、鳥かごを見ると鳥かごの小さな扉が開いていた。

ピー助がいない!シロが噛みついてる白い物体…

僕は一瞬で悟った。

僕もシロもピー助も、熱い絆で結ばれたファミリーだと思ってた。でも、シロは違ったのだ。

ピー助はシロにとってはただの餌だった。これが野生の掟なのだ。

ピー助の一生は八年どころか、一年も経たずに終わった。もちろんシロを責めたりしない。

しかし、ファミリーだと思って陽気に口笛鳴らしながらシロに近付き、ガブリと噛まれたピー助の気持ちを思いやると…シロを撫でる手に涙がこぼれ落ちた。

ピー助フォーエバー、君を忘れない。

僕は心に誓った。こんな悲しい思いをするならば、もう二度とペットは飼わないと。

そう誓ったのに、僕は数年後、またペットを飼ってしまうのだ。

また悲しい思いを繰り返すのか?

ピー助亡き後、ハムスターの「ハム五郎」を飼った話は本当に悲しいので、これは胸に封印します。



いいなと思ったら応援しよう!