悲願のプレミア昇格。ヴェルディユースと共に歩んだ2024。
2024年12月8日12時53分、広島の地で涙があふれた。ヴェルディユースが11年ぶりに国内1部リーグであるプレミアリーグに返り咲いたのだ。
昨年末、僕はインスタグラムで「来年はユースの昇格、トップのタイトル獲得が目標!」と投稿した。後者は達成できなかったものの、今年1年の絶対的な目標としてきた「ユースのプレミア昇格」を達成できた(選手達が達成してくれた)ことに21年間の人生で経験したことのない喜びを感じた。
東京都クラブユース選手権連覇、Jユースカップ優勝、プレミア昇格。結果としては華々しい1年であったがその背景には忘れられない悔しい出来事も多々あった。そんな1年間で感じたことや起きたことを残しておきたいと同時にひとりでも多くのひとに共有したいと思い、この文章を書くことにした。
序章:ユース応援のきっかけと転換点
今年1年のことを綴る文章ではあるが、そもそもなんでユースを見に行くようになったのかを初めに記そうと思う。
初めて見に行ったのは2019年
元々2019年のクラブユース選手権やヴェルディグラウンド(以下、ランド)でやるダービーなどに数試合行ったことはあったものの、先輩についていく感覚で熱量はあまりなかった。2020年以降はコロナや自分自身の大学受験もありしばらくユースには行けず、本格的にみるようになったのは2023年の夏ごろだった。
屈辱の2023年のアウェイ浦和ユース戦
ユースも声出し応援が解禁され、2023年の夏ごろから現地に行き応援するようになった。先輩からも応援の主導を任せてもらって同期の仲間と一緒にやり始めた。これがユースに頻繁に行くようになったきっかけにあたると思う。そして数試合経った2023年9月18日、アウェイでやった浦和ユースとの試合。この日が僕たちのユース応援の大きな転換点となった。この試合、プレミア参入戦に出場するためには絶対に負けられない大事な試合だった。しかしこの日の僕達の応援はなかなかに酷く、終始雰囲気を作れずに試合も負けてしまった。応援が良かったら勝てるとは限らないけれど、痛い敗戦と自分たちの酷い応援が重なったことは事実だった。試合後にも何人かの先輩から厳しい言葉を言われた。「そんなの応援じゃなくて観戦だ。」「応援のせいで負けた。」と。それもそのはずで、その日の応援には愛が足りなかったと振り返ってみて思う。選手コールは全員捻りのないリズムで苗字呼びがほとんど。チャントを入れるタイミングも酷かった。大人数で応援するトップなら「覚えやすさ」や「新規の巻き込み」を考えて簡単なコールにするメリットも多くあるものの、少人数で応援し、思いがダイレクトに伝わりやすいユースにおいては良い手段では無かった。
僕たちはこの試合を機に自分たちのユースに対する向き合い方を深く反省し、翌日にビッグボーイでチャントを入れるタイミングの反省会と全員分の選手コールの見直しを行った。
幸いなことにも1週間後にもすぐ試合があったのでここで挽回するしかないと思った。この試合、自分たちの応援が良くなってたのかは正直自分達で判断することはできないけれど結果としては試合に勝ててホッとした。先輩からも「今日の応援良かった」と言ってもらえた。これで少し自信がついた。結局、2023シーズンは行けなかったアウェイ帝京戦を最後に参入戦出場を逃したのだが、悔しい思いと共にやるせなさを感じた。でも、本気で悔しいと思えたということはほんとにプレミアに行きたいと思えてるってことなんだなって思った。ここで自分のヴェルディユースへの気持ちが強くなっていくのを感じ、来年は絶対にプレミアに行きたいと思った。
第1章:始動と東京王座死守。
2023年末、プレミア昇格を目標に新チームが始動した。この章では、リーグ戦開幕前の2023年末〜2024年2月にかけての新チーム始動から東京都クラブユース選手権の連覇までの流れについて記す。
東京ユースカップ2023で始動
このカップ戦は毎年末に短期間で開催されるカップ戦で、3年生が引退した後の1.2年生が翌年に向けて始動する最初の大会である。会場は都内の高校の校庭等が多く、声出し応援はほぼ実施できないが新チームの雰囲気や特徴を掴みたくて25日〜28日の4日間、すべての試合に行った。結果はPK戦で負け4位に終わったものの新チームの選手個人個人の特徴を少し理解できた。
東京都クラブユース選手権
このカップ戦はいわゆる新人戦で、新チームになって初めて本気で勝ちにこだわる大会である。ヴェルディユースは昨年も優勝しており、東京の王座を死守することを目標に戦った。僕たちも高い温度感で選手を後押ししようと、決勝だけでなく予選から全試合応援に行った。勝てば決勝という痺れる状況で町田ゼルビアユースとやった試合は今でも覚えている。この試合、1-1で迎えた後半に川村楽人がゴールを決め、勝ち越し。そのまま僕たちの所に来てくれた。応援してた気持ちが伝わってきたのかなと思えて嬉しかった。
決勝戦前にはみんなで一部選手の個人チャントも作り、集客にも力を入れて周りに呼びかけた。決勝戦は無事1-0で勝ち都内1番の座を守ることに成功。集客もまずまずで良いスタートを切れた。
第2章:広報の強化
ユースに関してずっと感じていた問題点があった。それは、色々な大会があって仕組みが複雑な上にクラブからの告知が少なすぎて行きたくても試合日程を把握していない人が多い。どの試合が大事な試合なのか分からない。どんな温度感で観に行けば分からない。というもので、まずはこの課題を解決させることがヴェルディユースの注目度上昇、すわなち価値上昇に繋がると思った。注目度を上げて多くの人が来てくれればより多くの観客がいる状況で選手達はプレーできるし、それが少しでも選手達のパワーになればいいなと思った。
クラブへの直接の訴え
Xで文句ばっかり言っていても仕方ないと思ったのでラウンドテーブルの場で実際に社長に伝えた。この場で伝えることで社長に伝えるだけでなく、その場にいる他のサポーターにもこの意識を伝えられると共にクラブもやらざるを得なくなると思った。
これが効いたと言っては自意識過剰に聞こえてしまうかもしれないが、結果として最近のクラブ公式SNSにおけるユース発信はだいぶ盛んになったと思う。勇気を出して言って良かった。
Xアカウント「若武者応援団」の創設
クラブに広報の強化を求めると同時に、クラブがキャパシティ的に厳しいのなら自分達でやればいいとも思った。最初は自分自身のアカウントで試合告知等をやればいいとも思ったが、それでは自分を良く思わない人はユースの情報を得られなくなってしまうと思い、アカウントを新しく作り、複数人で運営することにした。アカウント名もだいぶ迷った。公式と誤解されてはいけないので公式っぽくない名前、調子に乗った新団体だと思われないように団体っぽくない名前、ヴェルディユースでしかつけられない名前を考えた時に「若武者応援団」がちょうどいいと思った。発信の目的としては大きく2つ(①試合の日程を告知すること②試合の重要度を告知すること)であった。これが解決されればユースを見にいく人はもっと増えると思っていたからだ。
このアカウントはありがたいことに多くの人に支持され、嬉しい反響をいただけた。一時のものにせず、継続して行きたい。
第3章:プリンス開幕〜クラブユース選手権で味わった2度目の屈辱
東京都の王座を死守し、広報を強化していよいよ4月からプレミア昇格を目指すリーグ戦が始まった。
プリンスリーグ開幕
リーグ戦の開幕は順調にスタートした。開幕5連勝で首位で迎えたアウェイ帝京戦。昨年の最後に参入戦出場を絶たれた対戦カードと会場で思い入れは強かったが結果は2-2のドロー。それでも、逆転されても最後に追いつく強さを見せてくれた。帝京に再び勝てなかったのでホームでやる時のリベンジを誓った。その後もマリノスユースや浦和ユースにも勝ち、前半戦を8勝1分で切り抜けた。帝京にこそ勝てなかったものの、圧倒的な成績で前半戦を終え確かな自信を持って夏のクラブユース選手権に挑んだ。2部のプリンスリーグ所属ではあるものの、日本一を本気で目指せると思った。
2度目の屈辱。全日本クラブユース選手権2024
夏のクラブユース選手権、会場は山口だった。僕と後輩の2人で現地に行き応援した。同じグループには愛媛、湘南、名古屋のアカデミーチームがいた。この4チームで1番になって決勝トーナメントに行くことが一先ずの目標。第1戦の相手は愛媛。0-1で負けた。リーグ戦でほぼ勝ちしか見ていない状況だったので前半に点が入らず後半に失点してから応援も焦ってしまいほぼ何もできずに完封された。正直うちか名古屋が決勝トーナメントに進むと思っていたので衝撃だった。でも多分この甘えた感情が良くなかった。勝てると思っていることの1番良くないことは、うまくいかなかった時に焦ってしまう点にあるとこの時思った。プレミア昇格するには一発勝負での強さを身につけなければならない。それなのにこんな感情で挑んでしまった自分を恥じた。
2日後、第2戦の湘南戦こそ勝利をと思って挑んだがこの試合も先制したものの追いつかれて1-1でドロー。何もできないまま、グループリーグ敗退がほぼ決定してしまった。リーグ戦で上手くいっていてもこのような舞台で勝てるようにしていかないといけない。そうしなければ参入戦で勝つことはできない。そのことにこのタイミングで気づけて良かったと今になっては思うけれど、正直この時は放心状態だった。
この日の帰り道、1時間に1本しか走っていない山口の電車の中でアカデミーヘッドコーチの中村忠さんに話しかけていただき、初めてお話をさせてもらった。
チームを僕よりもずっと近くで見てくれている方からの前向きな言葉で、僕も切り替えることができた。今年の1番の目標は参入戦で勝つことで、参入戦で勝てるようにこの大会での悔しい経験を活かせばいいんだと心から思えたのはこの時からだった。
あとこれはクラブユース選手権に関する個人的な話だが、この時は大学の試験直前でテスト勉強をしなきゃいけない上に宿はカプセルホテル、シャワーは共用で湯船に浸かれない。しかも連泊なのに昼間は中に居られないという最悪な環境だった。飲食店もお金もほとんどなくてご飯はほぼ全部ローソンの割引弁当。帰り道は15時間の夜行バス。そういった意味でも精神的にきつかった笑
結果はもちらん、遠征としてもきついクラブユース選手権だったので来年はリベンジしたい。
あと、現地に応援に行けたのが2人(声出して応援できる自分の身内が2人という意味で)というのも個人的に悔しかった。その前に福岡でトップの試合があったから、本来ならもっと行けたはず。トップの福岡からユースの山口にそのまま行くという流れをもっと作りたかった。自分の先導力の無さを感じたし、参入戦に出たとして、また2人になっては絶対にダメだなと思った。参入戦はとにかく早い時期から多くの仲間に声をかけて1人でも多くの人と現地で声を出したいと思った。
夏のクラブユース選手権、灼熱の山口。2024年最初の集大成であったが、プレーする選手と応援をする僕たちで性質は異なるものの、共に悔しさを味わった。お互いに成長して参入戦で絶対勝とうと誓った。
第4章:プリンスリーグ再開
夏に山口で味わった屈辱を噛み締めながらも9月になってリーグ戦が再開した。目指すは参入戦での勝利。そのためにもまず、参入戦出場とプリンスリーグ優勝を確定させる必要があった。
9/1のアウェイ鹿島学園戦に1-0で勝つと(この試合はトップ翌日の午前アウェイで体力的にきつかった)次のランドで開催される試合は集客をかけた。トップの試合がない週だったからである。
この試合は比較的大人数で応援ができて、選手たちへの期待感と激励の感情を少しは伝えられた気がする。リーグ戦再開後、良い流れで迎えた9/30のアウェイ桐蔭戦は2-0で勝利し、この試合をもって第1目標である「プレミア参入戦出場」を確定させた。
そして10/6、この日は味スタでトップの試合もあったが準備は仲間に任せてランドに行かせてもらった。この試合の対戦相手は因縁の帝京で、しかも勝てば優勝という大事な試合だった。カント(8番 井上寛都)のゴールで先制するも追いつかれる展開で苦しい試合だったが、52分にガクトのゴールで勝ち越し。勝ち越しゴール後、選手みんなが僕たちの方に来てくれた。このまま勝ち切って優勝。帝京に勝って優勝という最高の形をとれたことで昨年の悔しさの1部は晴らせたと思ったと同時に、選手との距離がまた少し縮まったようにも感じた。一方で、「何かがかかった試合」は簡単じゃないなとも思った。
こうしてクラブユース選手権後、ヴェルディユースは6勝1分無敗と再び勝負強さと自信を取り戻し、Jユースカップによる中断期間に入った。
第5章:Jユースカップ、28年振りの制覇
東京都クラブユース選手権、クラブユース選手権、プリンスリーグの他にも重要な大会がもう1つある。それがJユースカップだ。Jリーグのユースチームが日本一をかけて戦う大会で、主催がJリーグのため運営やライブ配信のクオリティが高い。出場する選手は1.2年生が中心となっており、普段出場機会が少ない選手がスポットライトを浴びるチャンスでもある。ここでも大きな経験をした。
準々決勝はいわきで開催され、厳しい試合ながらも終盤のトモ(20番寺村智晴)と獅恩(21番仲山獅恩)のゴールで勝利。
準決勝はAGFフィールドでの開催だったため、ユースをいつもより多くの人に見てもらえるチャンス。相手は川崎フロンターレU-18であったため相手の観客も多かった。この試合は先制後すぐに追いつかれるもののすぐに勝ち越してそれを守りきり1点差勝利。プレミア昇格を目指すチームとして、1.2年中心とはいえ勝負強くなってきたことに逞しさを感じた。
そしていよいよタイトルがかかった決勝戦。ヨドコウで広島ユースとの試合という、最高の舞台。みんなで多少無理してでも大阪に集った。
キャプテンが退場する苦しい展開ながらも1点差を守り切って優勝。本当によく粘った。勝利への執念、それがヒナタ(27番相原陽向)やソウシロウ(23番中村宗士朗)ら普段リーグ戦で試合に出ていなかった選手から伝わってきたのが余計に嬉しかった。後は試合後に選手のお父さんから「みんなの応援のおかげです」と抱きつかれたのが嬉しかった。その時、そのお父さんは酔っ払っていたので覚えているかはわからないけどあの時のお父さんから漂うビールの匂いは一生忘れられない。嬉しかった。
1.2年生の活躍で得た28年ぶりの栄冠。獅恩や健人(16番今井健人)を欠いた中でもパッション全開でオーバーエイジの3年生をも擁した広島ユースに勝ち切った姿に心を打たれた。
第6章:プリンスリーグ終盤
Jユースカップを制し、いよいよ待ち構えるのは最大の目標であるプレミア参入戦。それに向けたリーグ戦最後の2試合について記す。
11/23 アウェイ浦和ユース戦
最初に記した通り個人的に思い入れの強い会場であったこともあるが、久々のリーグ戦で参入戦2週間前の試合という意味ですごく大事な試合だと思っていた。なので、キックオフ3時間前から会場に行き、かなりの量の横断幕を貼った。
観客もだいぶ前から呼びかけて、結構多くの人数を集めることができた。しかし、結果は0-1。攻撃がうまくハマらず、浦和に完封されてしまった。時期もあったし、リーグ戦無敗が途絶えて正直めちゃくちゃショックだったけど、参入戦直前にこの経験ができたことをプラスに捉えた。サッカーだし負けることくらいある。今でよかったって思うことにした。やはり、良いことがあった(Jユースカップ優勝)次は難しいなと学んだし、幕を沢山張っただけで満足しちゃダメだと改めて気付かされた。1番大事なのは試合中の声援による空気作りなんだと。
12/1 リーグ最終戦
いよいよリーグ最終戦、参入戦に向かう選手たちを1人でも多くのヴェルディサポーターで送り届けたいと思った。前日にトップのホーム最終戦があったのでトラメガやコンコースでの呼びかけも行った。
試合後には参入戦に向けてユース全員の個人チャントと3年生の個人幕の文言を考えた。この日は朝からコレオ準備があってみんな疲れていたけど一緒にやってくれた。そして、最終戦当日も早めに幕張りを始めて、できる限り参入戦に向かうメンバーへの後押しになれば良いと思った。試合は6-0でしっかり勝利し、参入戦に向けて良い勢いをつけられたと思った。
第7章:プレミア参入戦
そして迎えたプレミア参入戦。「プレミアにあがることだけを考えて1年間やってきた」と選手達が言うように本当にこの参入戦の重みは桁違いであった。そして感じたことない緊張感だった。
前日入りして準決勝、決勝と現地で見て感じたことを記せるだけ記しておこうと思う。
移動前日のランド見送り
11/23の浦和戦後、佐伯コーチと沖田GKコーチに相談をした。「参入戦前最後の練習に行かせてくれ」と。逆にプレッシャーを与えることにならないかなと思った瞬間もあったが、今年の選手を1年間見てきて、こういう場を楽しんでくれる選手達だから後押しすることが絶対にプラスになると判断して行かせてもらった。そして12/4(水)、17時半からランドで幕を張り、練習をしている選手達を待った。
みんな、すごく良い表情だった。このメンバーなら絶対にいけると改めて思った。
準決勝VS日章学園
僕は前日の昼に広島に入った。最大限体と精神を安定させるため、温泉付きの宿をかなり前から抑えておいた。ずっとそわそわしていた。周りを落ち着かせたくてインスタのストーリーをあげた気になっていたけど、本当は自分を落ち着かせるためにストーリーをあげていたんだと思う。仲間に風呂で言われた「自信持って楽しんでこい」って言葉がありがたかった。結局1時半くらいには寝れた。正直、負けたらこのメンバーで見れる試合が最後になっちゃうんだよなとかも思った。それは絶対に嫌だった。
いよいよ当日。結局5時くらいに目が覚めて朝風呂に行った。すっきりした状態でスタジアムへ。緊張していた。
8時30分頃に会場に着いたが開門は9時30分とのこと。しかし9時30分になっても門は開かず、スタッフに言ったらやっと開いた。
参入戦はアップから応援したいと思っていたので幕張りに要せる時間はもともと限られていた。
しかし中々終わらないので戻ろうとした時、前日に励ましてくれた仲間が幕張っとくから行ってきて良いよと言ってくれたのでスタンドに戻った。後から来た先輩達も幕を張ってくれていて、おかげでこっちは用意してきた選手チャントを歌うことができた。
選手の親御さんも、何か手伝えることありませんかと言ってくれて助けられた。
そしていよいよ選手入場、東京から持ってきたビッグフラッグの掲出は、親御さんにも協力してもらい上手くできたと思う。参入戦という特別な場所に連れてきてくれた選手への感謝に少しでもなっていればいいなと思った。
キックオフ。いつも通り若武者チャントでスタート。ベテランサポーターの方も何人か駆けつけてくれたのでいつもより図太い声が出ていると思った。開始早々にカントのゴールで先制すると、立て続けにサクト(7番 半場朔人)のスーパーゴールで追加点。相手はサウサンプトン内定の高岡を中心に攻撃を仕掛けてくるが、キャプテンのゆづ(5番 坂巻悠月)、コウダイ(15番 坂井倖大)を軸とした気合いの入った守備で簡単にはゴールに近づかせない。試合後のコメントでも「立ち上がりを大事にした」とあったように、浦和ユース戦などでの反省が活かされてると思った。2点をリードしたハーフタイムでもまだ油断はできない。歯を見せず、空気を緩めないように意識した。失点しないことも大事だが、1失点した後に立て続けに失点しないことの方がもっと大事。後半は相手の果敢な攻撃を受けるも失点を1に抑えてそのまま勝利。この日は安堵の感情が強かった。ラインダンス後の若武者チャントは過去最大の音量が出た気がする。また、クラブユース選手権の時は現地観戦の少なさに嘆いたもののこの日は多くの仲間と応援ができたことも嬉しかった。
朝から緊張で何も喉を通らなかったのでホテルに戻ってやっとご飯。ホテルの温泉に入ってこの日はゆっくり過ごした。
決勝VSカターレ富山U-18
準決勝と決勝の間に1日空き日があった。この日は朝ゆっくり起きて昼から仲間と一緒にマックでJ1昇格プレーオフとJ2昇格プレーオフを見た。富山が劇的な形で昇格を決めていて、翌日のユースも勢い付くだろうなと思って少し嫌だった。イケイケでくるだろうから立ち上がり大事だねなんて話もした。この日の夜はヴェルディユースを長年支えてくださっているチョコさんとご飯を食べに行った。決勝前日なので早めに終わりましょうと言っていたものの、話していると楽しくなってしまい結局3時間くらい経っていた。この地でこの日にチョコさんとゆっくり話せて良かったなと思っている。ホテルに帰ると、明日でこのチームが最後だということを強く実感した。そういった意味でも絶対に勝って終わりたかった。
いよいよ決勝当日。5時くらいに目が覚めて6時くらいに朝食を食べに行った。そしたら中村忠さんがいて、「いよいよだね」なんて話をしてくれた。タメ語で話しかけてくれたのがすごく嬉しかった。7時半ごろにホテルを出発し、仲間が予約してくれたレンタカーで夜行バス組を拾って会場に向かった。会場に着くと1969ナンバーの車が止まっていたのでまさかと思ったが、中からヴェルディサポーターの方が出てきた。島根県から来られたらしい。この日は早くもバックスタンドが開放されていたため、早くから幕の準備を始めることができた。
親御さんが協力してくれたこともあって幕の準備は早く終わり、いよいよアップ開始。全員分の選手チャントを歌うことができた。この日、親御さんも「一緒に応援したい」と言ってくれたので近くで一緒に応援した。さらなる一体感を感じることができて良かった。アップが終わったくらいのタイミングでユース3年生の浅岡祐輝から連絡があった。「僕も今会場に向かってます!一緒に応援させてください!」めちゃくちゃ嬉しかった。彼はメンバーに入れなかったけれど自分で広島まで来てチームメイトの応援をしに来た。こういうところからも良いチームなんだろうなって思えた。
いよいよ最後の90分がキックオフ。立ち上がりこそ攻めたり攻められたりの攻防が続いたものの徐々に押し込まれ始めると流れを持っていかれ、クロスから失点。その後もポスト直撃や翼(1番 佐藤翼)のナイスセーブで失点を1に留めるものの、攻撃は中々形にならずなんとか0-1でハーフタイムに突入した。まずいと思った。ハーフタイム突入時は正直かなり焦ったし動揺もしていた。前半の最後の方は多分、応援もあまり良くなかったと思う。ただ、このまま終わらせてしまってはクラブユース選手権の愛媛戦やリーグ戦の浦和戦から何も成長していない。その時、「大丈夫だ、いける。」「楽しんでくれば選手に伝わる」という先輩から参入戦前に言われた言葉を思い出した。そう、僕達は途中から焦っていて楽しめていなかった。楽しまなきゃと。楽しいってなんだろう?って思った時にパッと思いついたのが「テトリス」だった。10人にも満たない人数だったけど、みんなで肩を組んで飛んだ。選手がロッカーから出てき始めてから円陣を組むまでやり続けた。これで、気持ちが切り替えられた気がする。選手達の表情も明るかった。きっとハーフタイムのロッカールームで何か起きたんだろうなと思ったけど、キャプテンゆづの「ここで焦っても何にもならない。愛媛FC U-18戦と似ている。そこから成長しているところを見せるぞ!」(ゲキサカのコメントより)の発言が大きかったのだと後から知った。僕らも楽しめてるし選手達も切り替えてる。これは行けると思った。
後半キックオフに際してケン(2番 小林健)と獅恩(21番 仲山獅恩)が投入された。すると後半開始早々、若武者チャントを歌っている間に獅恩→ケン→カントの流れで1点を返す。カントがこっちを煽る。こうなったらもう完全にヴェルディペース。パスは面白いように繋がりセカンドボールも拾えるようになり過剰攻撃が続く。すると相手最終ラインにプレスをかけていた獅恩がボールを奪うとハーフェイライン辺りから放ったロングシュートがそのままゴールに吸い込まれた。みんなの思いを乗せたこのシュートの軌道はすごくゆっくりに見えたし、とんでもなく美しく見えた。逆転に成功した後も攻撃の手を緩めないヴェルディ。ハルキ(14番 粕谷晴輝)の精度の高いコーナーキックからゆづがボレーで合わせたり、カウンターからガクトが強烈なシュートを放ったりと相手ゴールに迫り続ける。相手も人数をかけた攻撃を仕掛けて来るが、ダイキ(6番 渡邊大貴)、ゆづ、コウダイ、ケンを筆頭とした守備陣が進軍を許さない。途中から突入されたカズヤ(4番 川口和也)は今年1年間の最終ラインを支え続けた絶対的な選手。怪我で参入戦のスタメン出場こそ逃したものの必殺仕事人として守りに入るチームの安定感を増した。獅恩やケントらの前線でのボールキープや巧みなボール運びで時間も使いながら時計は90分を回った。ロスタイムは3分。最後は若武者チャントで乗り切ろうと思った。そしていよいよ歓喜の瞬間。12月8日12時53分、主審の笛が鳴るとともにヴェルディユースの11年ぶりプレミアリーグ復帰は決定し、選手はその場に倒れ込んだ。同時に僕たちも喜び崩れた。選手達は泣いていた。親御さんも泣いていたし、僕の目からも涙が溢れた。こんなに泣いたことはないというくらい涙が溢れてきた。
選手達のことを日常から誰よりも支えてきた親御さん達と握手を交わした。ただ、正直この時は泣いていたのであまり覚えていない。。
物凄いプレッシャーだったと思う。僕も前半は本当にどうしようかと思った。でも、選手達はやってくれた。この大一番で90分内で完全に修正して逆転勝利を収めてくれた。
文字で表現することは出来ない感動だった。
試合後、ラインダンスをしに来る選手が遅いなと思っていたら、、、
ロッカールームにティシャツを取りに行っていた。このティシャツ、実は参入戦前最後のランドでの練習の時に選手に1人1枚サプライズで渡したものだった。まさか全員が広島まで持ってきてくれてて、それを試合後に着てくれるとは思っていなかったので嬉しかった。デザインしてくれたり選手分のティシャツを負担してくれた仲間のみんなには本当に感謝。
選手達の表情は凄く美しく、達成感に溢れていた。こっちにガッツポーズを突き出してくれる選手も多く、この瞬間のためにやってきたんだなって思えた。最後のラインダンスは親御さんと一緒に大ラインダンス。
ラインダンスを終えると親御さんと記念撮影をし、バスに乗る選手達が出て来るのを待った。
30分ほど経つと笑顔でまず3年生の選手達が出てきたので喜びを分かち合って「ありがとう」と伝えた。トップチームと違って3年生は絶対に引退するからみんな一旦離れ離れになるのはユースの宿命。寂しかったけど、最高の形で終われたので悔いはなかった。ガクトはトップチームで頑張って欲しい。他のメンバーも大学経由でプロになれることを心から願っているし、みんなの進学先も聞けたので試合に出れるようになったらまた見に行きたい。巡り合わせもあるけど、みんながプロになる時の選択肢にヴェルディがあったらこの上なく嬉しい。その時を待っている。
この後獅恩と健人が来た。2年生ながら常にスタメンで活躍し続けた健人、怪我の時期があったものの確実に結果を残し続けた獅恩、来年は2人がチームを引っ張って欲しい。プレミアリーグでの戦い、全ての試合が難しい試合になると思うけどJユースカップなどで見せてくれた勝負強さがあれば大丈夫。楽しんで行こう。トモ(20番 寺村智晴)、コウスケ(18番 今井宏亮)、マサ(9番 山田将弘)とは会えなかったけど来年も頼むぞ。
この後みんながバスに乗ったのでバスを見送ってスタジアムを去った。
この半日で起きたことを忘れることはないと思う。間違いなく人生最高の日になった。
この後僕は下宿先のある京都に移動した。ちょうど京都駅でトップの観戦を終えたヴェルディサポーターに何人か会ったが、色んな人が「ユースおめでとう」って言ってくれた。頑張ってくれたのは選手だし、皆さんもヴェルディサポとして「おめでとうございます」という気持ちだったが、みんながユースを気にかけてくれていたということが嬉しかった。プレミア昇格が決まった瞬間は、サンガスタジアムのアウェイ側もざわついたらしい。
今年のヴェルディユースの戦いっぷりは多くの人の心を動かし、多くの人を巻き込んだ。
それを象徴する出来事だったと思う。
終章:最後に
ヴェルディユースというチームそのものが好きになった
自分が最初にヴェルディユースを見に行ったのは、ヴェルディの下部組織としてトップに上がる選手を見たいとか、トップが強くなるためにユースも強くあって欲しいみたいな、トップのために応援に行くという意識が強かった。もちろんそれが間違っているとは思わないし今もその意識はもちろんある。でも、今年のユースの色んな大会を見ていく中で、この選手達と喜び合いたいとか、最後に笑って欲しいとか、みんなの努力が報われてほしいっていう感情がどんどん強くなっていった。毎試合毎試合ユースの試合を見にいくのがどんどん楽しみになって、華麗なプレーと勝利に拘る姿勢に魅了されていった。そうさせてくれた今年の選手達には本当に感謝したい。
ユースを応援する時に意識していること
僕がユースを応援している時に意識していることは大きく2つある。1つ目は「どんな時も支える」2つ目は「勝利に拘るが、それだけに固執しない」というものだ。ユース選手はそもそもプロサッカー選手ではないし僕達も彼らにお金を払って試合を見に行っているわけではない。プロならお金を払っている以上、そもそも存在しているだけでも少しは選手達にとってプラスの存在。何をしても許されるわけではないものの、多少のことは許されるかもしれないが、ユースはそうはいかない。ユースにおいてはマイナスな行動をしたらトップよりも簡単にマイナスな存在となってしまう。だから、常に選手にとってプラスの存在と思ってもらえるように意識した。また、結果だけを求めるのではなく、ユースは選手の成長が1番に求められる場所だということを大事にした。負けたとしても負けから学べるものがあれば良い。そういう意識を持った。
感謝
僕がここまでヴェルディユースに熱中することができたのも、最高の経験ができたのも1番は今年の選手達のおかげです。本当に感謝しています。ここまで連れてきてくれてありがとう。いつかまた一緒に緑のユニフォームで戦える日が来ることを心から待っています。
親御さんにはいつも温かい言葉をかけていただき、励みになっていました。皆さんの息子を親でもないのに勝手に応援してましたが、快く受け入れてくれて本当にありがとうございました。最後の参入戦でビッグフラッグを一緒にできたこと、ラインダンスを踊れたこと、歓喜の後に交わした握手は一生の思い出です。幕張りのお手伝いもいつもありがとうございました。
1年間、共にスタジアムに行ったり幕を作ったり発信をしたり画像や動画を作って応援を作ってくれた仲間もありがとう。自分1人では到底できないことを、みんなの得意なことで埋めてくれました。来季ももっともっと盛り上げていきましょう。
現地に来れなくても僕達を支えてくれた方やブログやX等で盛り上げてくれた方々もありがとうございました。
書ききれてないことのほうが多いと思うけど以上とします。長々と失礼しました。長年見てきたわけではなく、過去のことは聞いたことしか知らないけど、少なくとも今年のことは語れると思います。また食事の場でも飲みの場でも何でも聞いてください。