願いましては…〈恵比寿編〉
あの【口癖】は、なんだろう?
(学生か?)
何度、口にせずに、突っ込んでいたことか…
恵比寿にあるオフィスの窓から、ガーデンヒルズが観える。
ビルから見下ろした真下の歩道には、行き交うOLさん達。
ランチの昼休み時。
眼鏡が白昼に光る。
「なんだかアリの行列みたいですね…」と女の子のような唇で、ミルクティーを片手に持ちながら、頬杖ついている一つ下の後輩(♂)
藝大卒だからのマイペースなんだと思いきや、普段こそ、ピントのずれたカメラみたいだけど、合った瞬間といったら、息を呑む。
それから、見た目が「可愛い=正義」だと思った。
そうだ【口癖】の話しだった。
「これって、どうすればいいんでしょうか?」
これだ…。
失敗を恐れているのか、優柔不断なのか、慎重派なだけか、いい加減にはっきりしてもらいたい。その度に、指示をすれば、資料もきっちりとまとめられる能力もあるのだから。一緒に組んで働くようになり、一年が過ぎても相変わらずのマイペースで、ちょっと浸食気味になっている。
たかが【口癖】されど…
甘いものは、女を狂わせる。
後輩が持って来たGODIVAのチョコを、こっそりと食べる至福な時間。
パソコンに向かう後輩の長い睫毛に気を取られながら…
ある取引先に納品する為に、その後輩も一緒に、現地に向かう車中。
運転する私と、助手席でスーツ姿の後輩。
居心地悪いのか、しきりに首元を気にしている。
『あれ、どうしたの?ネクタイきつい?』
いつにもなく、落ち着きのない様子に気づく。
信号機が黄色から、赤へと変わる。
「いえ…実は、付き合っている彼女とケンカして…どうしたらいいかわからなくて…」
『えっ?…(今?)』
(こっちガン見してるし)
「それから僕…先輩のことが気になってるんですけど………
この気持ちって、どうしたらいいんでしょうか?…」
(ええーーーーーっ!!
なに?このシチュエーションで言う?)
無駄にブレーキを踏み込んでしまう。
眼鏡越し、真っ直ぐな眼差しで、こちらをみている。
どうしよう…
でも…なんだか…悪くない…
①麻布テイラーの姿勢良いスーツ姿も、細マッチョで似合ってる。
②助手席に座る横顔も、実は盗み見していた。
③左手で前髪を撫でつけてから、眼鏡を押さえる仕草に、何気なく見惚れてた。
④引き出しにリップクリームを持っている。
⑤重いものを持った時の、腕の筋…
⑥カルバン・クラインの香水の匂い…
運転中だから、これ以上は、
ダメだ、可愛い…
今日は、仕事帰りに彼と会う約束している。
握ってたハンドルの間から、いきなり珠算の先生がニュウっと現れて、一言。
ご明算!!
再度、脳内で構えて、
女の目まぐるしい算段が、流れ出す。
(終)
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