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M-1グランプリ2024 感想

今年もやります、個人的な感想まとめ。
素人のプロになれるように日々M-1という特殊な4分間の競技漫才を研究し尽くしたいのである。
しっかし今年は面白かった。過去最高レベルではないか?


令和ロマン「名字」 92点

またかまたかと令和ロマンがトップバッターを務めた。
恐らく昨年同様、トップバッターならトップバッター用に用意したであろう、しゃべくり漫才であった。
ただ、令和ロマンのしゃべくりは実はボケとツッコミという構成としては大それた話はしていない。しゃべくりという大枠の中でも「共感」というあるあるネタで戦っている故、少し他と土俵が違う。はっきりと他と差別化になっている。
演者と客の距離感をグッと近づけるこの手法は「M-1」という競技漫才において非常に新しい戦法で画期的。私自身、1年経ってやっと気づいた。
ただ、それだけだと去年と同じだが、令和ロマンはしっかりと修正をしている。
去年の場合、途中「先代に向かってすしざんまい」など、ところどころくるまのボケがハマってなかったが、今回は途中に「齋藤は刀Yですと言ってくる」などあるあるネタでも何個か展開を作ったことで一切失速することなくずっと盛り上がった。
その上でたたみ方も秀逸な作り。王者の貫禄であった。
ただ、終始あるあるネタだけで、客に寄せすぎて自分の好みとしては冷めた部分もあったかな。かつて松本人志審査員が「笑いは遠近感」と言っていたように、今年の令和ロマンは自分としては近すぎた。もっと舞台に引き込んで欲しいなという思いもあったので92に抑えた。

ヤーレンズ「おにぎり屋」 91点

小ボケに要所で秀逸なボケを潜ませていて良いネタだったが中盤以降テンポが崩れたイメージ。
あと手数のバリエーションが足りなかったかな。
去年はストレートこそ130キロくらいだけどテンポ良く投げ込んでくるし、時折110キロのカーブを混ぜてくるからその緩急にやられたが、今年はカーブが少なかったし、去年見ている分、目が慣れてしまった。
笑い待ちする箇所、拍手笑いの場面など構成そのものがいまひとつ。そうなると令和ロマンと見劣りしてしまう。目に見えて令和ロマンという基準の下の点数になってしまった。

真空ジェシカ「商店街」 95点

商店街はある程度の漫才ファンなら知っているであろう、真空ジェシカの名作。
2022「一日市長」ネタに近い、というかほぼ同じ形。しかし設定に入るときのやり取りなど、大喜利のボケツッコミだけでなく、二人のかけ合いも入れられていて、漫才としての進化を感じる。その上で、2023年に大吉審査員も仰っていたように「大喜利漫才としての頂点」を今年も真正面から食らわせてくる、凄い漫才だった。
なおかつ、ガクがどういうワードでツッコむのだろう?というグッと舞台に寄せ付ける、引き込む強さも随所にあった。遠近感、ワードセンス、外さないボケ。抜群。95点。

マユリカ「同窓会」 90点

今回のマユリカのネタも昨年と同じ、割とファンタジー寄り。尚且つ「同窓会で起こったら面白い出来事大喜利漫才」で戦っていた印象。そうなると直前が真空ジェシカの「商店街で起こったら面白い出来事大喜利漫才」なので明らかに見劣りしてしまう。同じ大喜利漫才として見比べられてしまう不運さ。さすがに点数も笑いも伸びてこなかった。
マユリカの真骨頂は阪本の不可思議なワードよりも、中谷の女コントの異様な上手さだと思うので、そこの演技力やマイムの力で、ファンタジー寄りというよりリアルに寄せて中谷をボロクソにする形の方が自分は好みだなあ、と感じたし、その方が他と差別化ができて点数も伸びる気がする。

ダイタク「ヒーローインタビュー」 89点

題材が良かった割には思ったよりボケ数、展開が少なかった印象。
双子漫才師というのが武器というより枷になってしまってるようにも思ってしまった。
本人らにはもっとやりたいネタはあるだろうけど、初登場ということもあるしそんな中で双子ということに触れないネタは出来ないという部分。
かけ合いとかはさすがに見事なテンポだし、2人の空気感はとても良い。
もっともっと、露出が増えていけばいくほど面白くなるんじゃないかと思うし、ネタ時間も長い方が合うかな。
THE SECONDの最有力候補だと思う。
次のステージに期待したい。

ジョックロック「医療ドラマ」 90点

最初の「やっぱりマイナンバーカード作るの怖いな」がとても良かった。長い振り相応の笑いが返ってきていたし、一つ目のツッコミとしては素晴らしいスタート。こちらの予想も斜め上を行く切り口で良かった。それだけにそこからがあまり跳ねなかった。パープルの振りからの「カラーコーディネーター」あたりもだいたいは予想がついてしまっていたし、長い振りに対するツッコミの良い角度の切り口がもっと必要。理由としてはこの手の漫才のボケはツッコミのワードで回収するので、ツッコミひとつでボケとツッコミ2つ分の笑いを回収する必要があるため。先述したマイナンバーカードの部分のような切り口を量産してくる、あるいはボケ単体を強くすれば優勝は全然狙える。今後が楽しみ。

バッテリィズ「偉人の名言」 96点

去年の準決勝で初めて見て「ああ、これは決勝ハマるだろうな」という漫才。バカならではの切り口で、一般人が普通に受け入れていた物事にツッコミを入れていく構図はとても秀逸で、新しい形。フォーマットそのものがハマる気がした。
そして今回はそのフォーマットに磨きがかかっていた。まさに初見殺しのネタ。
「偉人の名言」というテーマなのにまず「偉人の名前」に引っかかってしまうところはさすがに笑ってしまう。まさに不意打ちを食らったという漫才であった。会場の爆発力も文句なし、今日最高点。

ママタルト「銭湯」 88点

バッテリィズであんなに跳ねた後だとどうしてもウケにくいんだな。ハマってなかった印象。まあでもボケ数が少なかったかな。
檜原の特徴的な長文ツッコミを生かし切れない結果。
全体的なネタの出来は去年の敗者復活戦の方が遥かに良かった。
むしろこっちのネタが去年上がって来れなかったのに今年上がれたのがちょっと謎すぎる。
去年の「キャンプ」のネタ、落ちて泥まみれになった麻婆豆腐たべて、「辛!」と言ったボケに対し「まずくないとは!?!?辛いとは!」のツッコミ、非常に秀逸で面白かったな。。。
このまま終わって欲しくないので、来年以降の逆襲を期待。後で単体で観ると記憶で思ってるより面白かった。最下位で良いネタではないな。

エバース「桜の木の下」 97点

しゃべくり、二人のかけ合いの最高峰だった。
元々このタイプの漫才は好きなのでいろいろ観て把握していた。
しかし、ことM-1においては、キャラやテンションで勝負するタイプじゃないエバースの漫才は、それ故に、前半に明確な笑いどころがなく、爆笑のエンジンがかかるのが遅くなってしまう心配をしていた。
その心配をかき消した「さすがに末締めだろ。」
さすがに痺れた、正直。
クオリティとしてはチュート、オズワルド、さや香、かまいたちクラスの域に感じる。
ただ、冷静にネタを見比べると彼らと唯一異なる点がある。
サイコパス要素の有無。
先述した4組はボケが割とサイコ寄りで突拍子もない発言から巻き込んでいく漫才であるが、エバースの漫才はツッコミのワードチョイスとトーン、かけ合いのみで戦うしゃべくり漫才。
それで勝ち上がって、M-1で戦える漫才に仕上げているのがとにかく凄い。
また、サイコ要素がないため、見ている側として不自然な部分や、しんどいな、フィクション寄りだなという冷め切ってしまう展開にもならず、非常に見やすかった。芸術点含め完璧に近い、97点。

2回目観て気づいたこと付け足し。
わかりやすすぎて特に気にならなかったけど、1階,2階,3階、そして丘と高さだったりそのやり取りで複雑になりそうなところを最低限の身振り手振りでものすごくわかりやすい漫才になってる。
さりげないところだけど本当に凄い。

トム・ブラウン「肝臓を守りたい」 95点

めちゃくちゃ面白かった。
笑いは人それぞれ、自分は面白かった、真空ジェシカと同じくらい笑ったので95点。
「面白かったけど、お茶の間の人には刺さらない人もいるかもしれないから点数は低めです」とか言って自分の採点の責任を視聴者側に押しつけるなよ、審査員。
審査員を、殺します!(きゃー!)
強いて言えば大吉審査員が仰っていたように去年の方が面白かったかな、去年のネタとウケなら98点だった。

最終決戦

真空ジェシカ「アンジェラ・アキ」

衝撃的だった。
2本目のネタなのに、1本目のどの組のネタよりも笑った。面白かった。
まず大前提、真空ジェシカの漫才の形である、「大喜利漫才」
このフォーマットを使わずに勝負してくるとは思いもしなかった。
でっかいピアノを弾くアンジェラ・アキという一本軸のコント漫才。
2本目、最終決戦にして新しい形の漫才で勝負するのは恐れ入った。
ツッコミのワードで笑わす形が多い中、ボケの川北の、ボケの強さだけで笑いを取っていく姿は爽快だった。
そしてなんと言っても、無言のマイム。
あんな長い無言の時間は
2018の和牛「オレオレ詐欺」以来かな。
決勝であれやる度胸もえぐいが、
あの狂気アンジェラをやることで、なんで「ピアノが大きすぎることを指摘できなかったか」という部分の説得力が増す。
実際それだけで十分面白いけど、更に隣の長渕がうっすら聞こえてくるという本ボケが後から登場してくる始末。
序盤のガクの神様のマイムのややうけの後に「それは信じる神にも寄るけど」というあまりウケないことを見越して、一つのくだりをウケ切るまでやるという用意周到さ。
隙が無く、一撃一撃のパンチが重い、衝撃的な漫才だった。

歌手の「アンジェラ・アキ」
漫才タイトルの「アンジェラ・アキ」
どっちも同じなのに、中身の意味がこんなに変わってくるのも凄いよね。

令和ロマン「タイムスリップ」

去年同様、しゃべくり→コント漫才だった。
これは今後、トップバッターの定石になり得るスタイルかもしれない。
まあ、その選択肢を準備できる漫才師がどれだけいるのか、というレベルの話ではあるが。
構成が圧巻だった。
終わった後の今田司会者が壮大だった、と言ったように起承転結がはっきりしたコント漫才。
要所に「爺やの知ったか見てられない」など強烈なパンチもあった。
くるまの表現力が凄かった。7人くらい演じていたのかな?
そしてその中でもケムリはあくまでケムリとして鎮座している。
そもそもコントに乗り気ではなかったわけだし。
もうこの構図で既に面白くしやすくなっている。
だからこそ、そんなケムリを最後、このコントに入れ込む為のトリガーに坊やの涙という出来事を入れたのは良かった。
この構成は若干名探偵津田にも似ているところ。
起承転結の強さ、構成でいったら去年を上回っていた。
優勝してんのに去年より更に出来の良いネタ持ってくるってなんやねんこいつら。

バッテリィズ「世界遺産」

あまり跳ねなかった印象。
これはフォーマットがバレたからではない。
いや、厳密に言えばバレた上で不意打ちが少なかったから。
1本目の強さは、バカは「偉人の名言」というテーマなのにまず「偉人の名前」に引っかかってしまうという部分だったと俺は思う。
しかし2本目は「世界遺産」というテーマに対して「世界遺産」そのものに引っかかってしまうという、まあ予想の範疇でのかけ合いだった。単純に1本目よりネタが弱かった。
「世界遺産」のテーマなのに「世界遺産の名前、地名」に引っかかってしまうくらいの不意打ち、瞬発力があれば1本目の勢いで優勝してたんじゃないかなと思う。

私の最終投票。

総合的に見て、自分の好みは
今までに無い新しい漫才を「2本目」でみせてくれた衝撃的なネタ
「アンジェラ・アキ」の真空ジェシカだった。

まさか1票しか入らないとは。。。笑

総評と来年の予想


前年王者令和ロマンの参戦でどうなることかと思ったが、
結果としてはそのおかげでレベルが上がり、歴代最高レベルの大会になった印象。
特に最終決戦のレベルはあまりにも高かった。
20周年という節目に、素晴らしい大会をみせてもらったすべての漫才師に感謝。
これを無料で観ることが出来て最高


...て町田が言ってました。

さて、最後に2025年M-1最速予想をして終わります。

・エバース
・真空ジェシカ
・ダンビラムーチョ
・バッテリィズ
・スタミナパン
・ひつじねいり
・カラタチ
・豪快キャプテン
・20世紀

大本命
・エバース
対抗
・20世紀
爪痕
・スタミナパン

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