デジタルツインコンピューティング
NTTが進めるIOWN構想は、次の3つの主要技術分野から構成されている構想です。
オールフォトニクス・ネットワーク(APN: All-Photonics Network)
<情報処理基盤のポテンシャルの大幅な向上>デジタルツインコンピューティング(DTC: Digital Twin Computing)
<サービス、アプリケーションの新しい世界>コグニティブ・ファウンデーション(CF: Cognitive Foundation®)
<すべてのICTリソースの最適な調和>
今回は、デジタルツインコンピューティングをご紹介します。
デジタルツインコンピューティングは、「現実とサイバーのツイン世界」です。現実の世界にあわせて、サイバー空間上にコピーをつくり、ツインで問題解決する構想です。サイバー世界でヒトの内面をも再現し、相互作用を実現することをめざす、さらに現実とサイバーを一部を交換したり、融合したりする挑戦です。
サイバー上に現実の世界のデータを入れて反映させていく「デジタルツイン」はすでに世界ではじまっています。
2021年11月17日、オーストラリアのスタートアップであるBlackshark.aiが、地球規模のデジタルツインである「デジタル地球」の開発と拡張のために、MicrosoftのベンチャーファンドM12とPoint72Venturesが主導する2,000万ドルの資金調達ラウンドを発表しました。blackshark.aiプラットフォームで実行されるアプリケーションには、政府、地理空間情報インテリジェンス、人道的救済、メタバース/ AR、自動運転と飛行のシミュレーション、森林破壊の監視、保険、スマートシティなどのユースケースが含まれます。
日本の国土交通省が2020年度からスタートした3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のプロジェクトPLATEAU(プラトー)では、2021年8月には、全国56都市の3D都市モデルのオープンデータ化を完了しています。
また省庁や自治体、研究機関や民間企業が所有する災害関連情報を共有するシステム「SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)」で集めた情報を使ったデジタルツイン「CPS4D: Cyber-Physical Synthesis for Disaster Resilience」の開発もスタートされ、2022年の完了を目指しています。バーチャル静岡の動画では伊豆半島の河津七滝ループ橋でレーザースキャナーをつかって点群データを採取しデジタル化する様子がみられます。
東急不動産では、現実空間の環境を再現(ツイン)し、高い精度のシミュレーションができるようにしています。これまで分譲マンションの販売では、モデルルームというリアルな場での物件見学が一般的であったが、コロナ禍を契機にオンライン上での商談が増加し、「オンライン上で物件見学をしたい」という要望も高まっているということです。
建設現場では、ビルの3Dモデルをベースに、センサーなどを活用して収集した風向きや風力などの気象情報、作業員の人数や配置情報、建設機械の稼働状況、工事の進捗状況などを反映してつくります。この技術を測量、設計、施工、保守といった各工程で取り入れ、作業の効率化や現場の安全性・生産性の向上に役立てようとしています。
2020年1月には、国内の大手総合建設会社が、大阪での建設事業の全工程においてデジタルツインを活用し、大型ビルを竣工しました。
デジタルツインとシミュレーションの大きな違いは ①リアルタイム性 ②現実世界との連動 の2点です。
リアルタイムが必要なので即時のデータ収集と反映がテーマとなります。
そして、NTTが進めるデジタルツインコンピューティングのテクノロジーやアーキテクチャの構築していくうえで、レイヤ構造の中間に「共通層」を設ける“砂時計”の構造を追加できるか、ということが重要になるそうです。
インターネットにおけるIP層のように、「共通層」に据えることで下部のネットワーク層と上部のアプリケーション層がうまく融合して機能することが可能となりますとのこと。
さらに、NTTでは、ヒトの意識や思考をデジタル表現する挑戦も進めています。