UCL Matchday3 ロカテッリの憂鬱
シュトゥットガルトとの一戦は攻守に圧倒され、倍近くのシュートを浴び、ペリンのセーブに何度助けられたことか。データからも、試合内容からも完敗と言っていい試合でした。後半途中までは。個人的には自滅、もしくはモッタの采配によって負けたと考えています。敗北から学び、改善していくことでチームは成長していきます。モッタも2回は見直したというこの試合を振り返っておきましょう。
マンツーマンハイプレスに苦戦
ドイツ勢との連戦となったCLリーグフェーズ。ユベントスのスタメンは、ペリン、サボーナ、カルル、ダニーロ、カバル、マッケニー、ファジョーリ、テュラム、コンセイソン、ブラホビッチ、ユルディズ。4-3-3の配置がベースとなっていたように思います。負傷者が続出して苦しい選手起用となっていますが、スカッドの薄さは覚悟の上。いるメンバーで戦うしかありません。(新監督になり、スカッドの薄さを下部組織の若手でカバーしながらここまで無敗を保っていたことは驚異的なことです。モッタの手腕は高く評価するべきでしょう。)
対するシュトゥットガルトは4-4-2をベースにオールコートマンツーマンでユベントスにプレスをかけ、高い位置で奪ってショートカウンターを仕掛けるプランだったと思います。そして、シュトゥットガルトのハイプレスがユベントスを苦しめました。ユベントスはアンカーポジションにファジョーリを置いてシュトゥットガルトの前2枚に対して2CB+ファジョーリで数的優位を取りに行く予定だったと思います。しかし、シュトゥットガルトはCHを上げてファジョーリにもマンマークでプレスをかけに来ました。ロカテッリやクロースであれば2CBの高さまで下がってどこまでマークに出てくるのかを見極めて駆け引きを仕掛けるだろうと思いますが、そのような位置どりは見られませんでした。そのため、シュトゥットガルトのハイプレスを正面から受ける形になってしまい、ビルドアップすらまともにできなくなってしまいました。高い位置に残ったマッケニーにもCBが前に出てマークについていたので、前線はブラホビッチが数的同数で待ち構えている状況でした。ブラホビッチをターゲットにロングボールという選択肢もあったはずです。昨季のブラホビッチであれば期待値としても悪くない勝負だったのではないかと思いますが、この選択肢も採用されず。とにかく、ユベントスが手をこまねいている間にシュトゥットガルトは狙い通りにハイプレスを仕掛けることに成功しました。マンマークで時間とスペースを奪われたユベントスは混乱に陥り自陣でのボールロストが増え、ショートカウンターから何度もチャンスをつくられました。
マンチェスター・シティで見られる、エデルソンのアシストからハーランドのゴール。ハイプレス・ハイラインの相手の裏を一発のロングボールで突いて得点を取っている証拠です。相手の出方によって、ショートパスで繋ぐのではなく、より効果的なロングボールを選択するのは理に適っていることであり、ボール保持を最優先事項としているシティでも相手を見てロングボールを蹴っています。ユベントスも相手の出方を見て柔軟に出し手を変える必要はあるでしょう。
ただ、そんな中でもユルディズだけはワンタッチで味方につけて動き直したり、ターンしてドリブルでプレスを剥がしたりとシュトゥットガルトのハイプレスに対抗できていました。さらにペリンのスーパーセーブもあってシュトゥットガルトも決定機を作り出すものの得点には結び付けられず、試合は0-0のまま進んで行きました。
ロカテッリの苦悩
そして後半10分、マッケニーに代わってロカテッリが投入されます。同時に右サイドもウェア、カンビアーゾのコンビにスイッチされました。早速、ロカテッリは4-4-2守備の急所となる2トップ脇に陣取って左サイドからチャンスメイク。ユベントスのボール保持の際にはCBの間、もしくはダニーロの左に落ちてシュトゥットガルトのハイプレスを牽制。結局、CBの位置まではシュトゥットガルトのCHもプレスには出てこなかったため、後方でのボール保持を安定させることに成功し、ユベントスがボールを保持する時間を確保できました。しかし、ロカテッリがCBの高さまで落ちてフリーになっているのにも関わらず、テュラムは明後日の方向を向いた身体の向きでプレーするため、後方での数的優位に気づいていないかのようなプレーを連発。右サイドで詰まって不用意なボールロストから危険なショートカウンターを浴びること数回。後方で数的優位を確保しているからこそ、中盤から前の選手はライン間や前線まで上がって攻撃に備えています。その状態で自陣でボールを失えば、即決定機です。ペリンのセーブや守備陣がシュートコースへ入ることで事なきを得ていましたが、早めに手を打つべきだったでしょう。ロカテッリと替えて下げるならマッケニーではなく、テュラムだったのではないかと思います。
とにかく、ボールを保持して押し込む時間帯を作ることに成功したユベントス。しかし、モッタ監督はここでブラホビッチを下げてアジッチを投入。ユルディズをトップに置いてアジッチが2列目に位置するようになりました。ユルディズは前を向いてドリブルを仕掛けるプレーに持ち味がある選手。下がってプレーすることが多くなり、ゴール前からユベントスの選手がいなくなり、クロスに間に合わないというシーンも出てきました。
さらに決定的だったのはダニーロの退場です。PKをペリンが止めてくれたのであれば、そのセーブを勝ち点に繋げたかったところです。退場した時間帯も遅かったので、勝ち点1を拾いに行っても良かったはず。ディフェンスをまとめていたダニーロが退場してしまったのですから、守備を統率できるガッティを入れてもよかったと思いますが、テュラムに替えてロウヒを投入。これで守備のベースポジションが混乱してしまいました。ユルディズとアジッチの2トップに、右サイドのウェア。中盤はロカテッリとファジョーリがカバーして、4バックで構えるのか?おそらく、誰も守備の時にどこにいればいいのかわかっていなかったのではないでしょうか。ロカテッリが必死に声をかけながら開いたスペースを埋めていきましたが、守備組織は瓦解してしまいました。6バック化し、ユルディズとアジッチとロカテッリが中盤の3センターのような形になり、ボールホルダーへ誰もプレスに行かないというカオスな守備をしていたユベントス。仕方なくロカテッリがボールホルダーに出たところで背後を使われ、誰もボールにプレーすることなく得点を奪われてしまいました。4-3-2でも、5-3-1でも、どんな形でもいいので守備のポジションを修正して、基準を示すべきだったでしょう。どれだけ必死に考えてプレーしても、着いてくることができない若手と着いてきてくれなかったベンチ。失点した際、ボールを思い切り蹴り上げようとしてやめたロカテッリ。そのやり切れない思いが見えたような気がしました。モッタはイタリアダービーと若手の出場機会のためにCLの勝ち点を捨てたようにも見えてしまいました。ここで獲れなかった勝ち点が後々響いてこないことを祈るしかありません。