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UCL Match day 4 リバプール vs レバークーゼン 

昨季、ブンデスリーガを無敗で優勝し、ELでも決勝まで駆け上がったレバークーゼン。シャビ・アロンソ監督の手腕も高く評価されました。今季は勝ちきれない試合も多く、すでに敗戦も経験していますが、レバークーゼンの注目度は高く、好調リバプールとの試合は注目されていました。そして、シャビ・アロンソがアンフィールドへと帰還するということもあって、試合前の会見ではリバプールに関する質問も出ていたようです。しかし、シャビ・アロンソは選手・試合に注目しようと冷静にコメントしていました。

レバークーゼンの狙い

レバークーゼンの守備フェーズ

レバークーゼンはボール保持時は3-5-2、守備時は4-4-2という可変システムを採用してきました。具体的には、左WBのグリマルドを上下動させる形で5-3-2から4-4-2へと変化させ、アレクサンダー・アーノルドをフリーにさせないようにしていました。より正確には、パラシオスにはツィミカス、グリマルドにはアーノルドへのマークを任せ、リバプールの3トップに対して3バック+フリンポンの4人で数的優位を確保して守備をするというプランだったのではないでしょうか。この守備でリバプールのボール保持を阻害しつつ、守備ラインでは数的優位を確保して簡単には崩させないように設計していました。ただ、4-4-2で守備をすれば、必然的にアンカーポジションのフラーフェンベルフが浮いてしまいます。実際、CBにプレスに行ったもののフラーフェンベルフにパスをつけられて後退を強いられる場面も少なくありませんでした。しかし、その場合は潔く自陣に撤退して5-3-2で構えて守るプランへと移行していました。4-4-2でのハイプレス・ミドルプレス、5-3-2でのロープレスの二段構えの守備でリバプールの攻撃に対抗していきました。

レバークーゼンの攻撃フェーズ

そして、計画的なボール保持でリバプールを守勢に回らせようと試みていました。レバークーゼンは、3バックが広がり、ガルシア、ジャカの5人で後方でボールを保持しようとしていました。パラシオスも遊撃部隊として後方でのボール保持に参加させ、ボール保持でリバプールを上回ることに活路を見出しているようでした。そして、ボニフェイスを左に張り出させてフリンポンと2人で幅をとるタスクを担わせ、グリマルドとヴィルツが中盤に参加して中央で数的優位を作って中盤を支配しにかかりました。グアルディオラが監督を務めていた時期のバルセロナが得意としたメッシの0トップ戦術です。今回は、ヴィルツがメッシの役割を担っていたように思います。シャビ・アロンソ監督がヴィルツを信頼しているということでしょう。

さて、実際の試合はというと、リバプールが3トップをレバークーゼンの3バックにぶつけて時間とスペースを奪い取るハイプレスを仕掛けてきました。しかし、レバークーゼンは中盤で3vs5の数的優位を確保しているため、多少時間を奪われてもパスコースは確保されているためリバプールのハイプレスに対抗してボールを保持し続けることができました。レバークーゼンとしてはCFの位置から人を移動させているため、中盤でボールを保持した後、ゴールに向かって人とボールを動かすことができなかったことに課題があると言えます。中盤でボールを保持しつつ、敵陣ペナルティエリアに走り込むプレーを増やしたかったところでしょう。前半のボール保持を得点に結びつけられなかった点が悔やまれるところだと思います。

リバプールの得点を0に抑えながら、自分たちのボール保持から得点を取る。この辺りがレバークーゼンの狙いだったのではないでしょうか。実際、前半終了時点でのボール支配率はレバークーゼンが上回っており、レバークーゼンのプランはうまく行っていたと言えるでしょう。

リバプールの解答

前半はレバークーゼンの狙いがある程度ハマっていたと言えるでしょう。リバプールもチャンスは作っていましたが、レバークーゼンの守備ブロックを崩し切ることはできていませんでした。ボール保持率もレバークーゼンに譲り、ハイプレスがうまく機能していませんでした。そこで、スロット監督は主導権をリバプールが握ることができるよう、ハーフタイムに戦術変更を行ってきました。

それは、ボール保持時にアレクサンダー・アーノルドを後方に残すことでした。4-4-2でプレスをかけに来るレバークーゼンに対して、後方で3vs2の数的優位を確保してボール保持でリバプールが上回ることを意図したのでしょう。そして、前半苦しめられたレバークーゼンのボール保持の仕組みを、ボールをリバプール側が保持することで機能させないことを狙ったのだと思います。ボール保持が安定すれば、ポジションを整理して適切な配置で攻撃できます。もし、ボールを奪われてもボールの近くには選手が配置されているため、素早くプレスをかけて奪い返すこともできます。陣形をコンパクトに保つ、同じ車両で移動するなど、様々な表現が使われますが、適切な選手の配置を維持したままゲームを進めることは攻守がシームレスにつながっているフットボールというゲームにおいては本当に重要です。そして、適切な配置につくためには、時間が必要です。そのために、ボール保持がいかに重要か。ボールを保持している間は相手に攻撃されることはないため、ボールを保持している時間を自由に使うことができます。

さて、リバプールの得点の場面では、守備ラインと同じ位置まで下がってボールを受けたアレクサンダー・アーノルドへグリマルドが出て行くことができずにリバプールに時間を与えてしまいました。じっくりとレバークーゼンの守備の配置を見たアーノルドは、同じくレバークーゼンの守備の配置からライン間にスペースを見つけて中盤に降りてきたサラーに長い斜めのパスをつけました。この時点でほぼほぼ勝負ありです。サラーがライン間でパスを受けてターンした時、ルイス・ディアスはもうレバークーゼンの守備ラインの裏へと走り出していました。ブンデスリーガを代表するDFのターでも、サラーとディアスとの1vs2の守備では分が悪すぎました。その後は前がかりになったレバークーゼンを3トップのクオリティを全面に押し出した高速カウンターでひっくり返して2点目をもぎとり、試合を決定づけました。4-4-2の配置で守備をしてきたレバークーゼンに対して、3バックでボールを保持して時間を確保してきたリバプール。その先の解答をシャビ・アロンソが見つけられない中で先制点が入り、勝敗が決したように見えました。

タイトなスケジュールからか、各チームが対策を打っているからか、レバークーゼンが昨季ほどの強さを発揮できていない点は差し引いても、リバプールの強さを印象付けられた試合でした。今季のリバプールは、クロップ路線を引き継いで果敢に高速ハイプレスを仕掛けて相手を飲み込んでしまうようなスタイルなのかと思っていました。レバークーゼン戦でも、3トップのボールホルダーへの寄せは早く、3バックに3トップをぶつけてそのまま潰してしまおうという意図を感じました。しかし、レバークーゼンが中盤を厚くすることでハイプレスを掻い潜ってきました。すると、逆にボール保持で上回ってレバークーゼンの主たる狙いだったボール保持の仕組みをそもそも出させないという新たな一手を見せてきたリバプール。ハイプレスで圧殺するだけでなく、ボール保持でもチームとしてのクオリティの高さを見せ、高速カウンターの鋭さも見せつけてきました。ハイプレスに強みがある全方位型のチームとして、今季のCL優勝を狙えるレベルにあることを証明したのではないでしょうか。

プレミアリーグではアーセナル、シティが負傷者を抱えて勝ち点を取りこぼす中、独走状態に入りつつあります。今後の試合も注目したいところです。

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