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UCL GS第2節 ユベントス vs チェルシー

UCLで昨季王者を撃破。ユベントスとチェルシーの試合について、試合の進行とともにアッレグリとトゥヘルの動きなどを中心に考えてみたことをまとめておきます。

アッレグリとトゥヘルの思惑

ユベントス陣営は、直前のサンプドリア戦でディバラとモラタが負傷。ここまで主力として前線に置いてきた二枚看板が使えない状況になった。しかし、見方によってはこれはキエーザをトップで使えるということでもあり、彼の絶対的なスピードを活かした質の高いカウンターの刃をチェルシーの喉元に突きつけることができる。ディバラを欠く以上、ポゼッションに固執する必要は無くなった。今季のボール保持からの攻撃はディバラのフリーロールがキモだったからだ。未だクリーンシートがない守備に焦点を当て、得点はキエーザを中心としたカウンターで狙う。ホームだが、チーム事情から考えれば0-0の引き分けも悪くない。守備へのスピリットを見せ、チェルシーを0に抑えることができれば先につながる。アッレグリの考はこのようなところではないだろうか。

一方のチェルシー。チームの心臓とも言えるカンテに加えて、マウントとリース・ジェームズも欠場とこちらも主力を欠くことになった。ただ、モラタ、ディバラを欠くというユベントスの状況を見ても、ユベントスがボール保持に注力する可能性は低い。チェルシーがボールを保持して攻撃し、ユベントスが守る展開が予想される。そうなると、カンテがいない以上はボール保持に力を傾けてユベントスの守備と勝負することに力点を置いた方が良さそうだ。しかし、相手はユベントスでしかもアウェー。一定程度守備のことも考えておく方がいいだろう。ジェームズの代わりにハドソン・オドイではなくアスピリクエタを、CBにクリステンセンを起用して攻守のバランスをとる。その上でハイプレス、カウンタープレスは積極的にかけて出来るだけ守備の時間を減らしたい。この辺りがトゥヘルが考えていたことではないだろうか。

チェルシーがボールを保持してユベントスが守る。この展開は両チームがあらかじめ受け入れていたものだったように思える。

ユベントスのプラン

ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ダニーロ、ボヌッチ、デリフト、サンドロ、ロカテッリ、ベンタンクール、ラビオ、クアドラード、キエーザ、ベルナルデスキ。4-1-2-3もしくは4-1-4-1の布陣を敷いてきた。

ユベントスは守備から試合に入ったように見えた。この布陣も守備のためだったはずだ。具体的には、クアドラード、キエーザ、ベルナルデスキはチェルシーの3バックにそれぞれマークにつく。さらにラビオとベンタンクールはそれぞれチェルシーの2CHについてチェルシーのビルドアップに制限をかけて前進を阻み、出来ることなら高い位置でボールを奪ってショートカウンターを仕掛けたい。一方でロカテッリをアンカーポジションで固定して主に2CBの前をプロテクトさせる。最も危険なバイタルエリアを中心に、危険なスペースを潰しに行くいわば遊撃隊として機能させる。必要であればディフェンスラインに下りてゴール前の守備にも参加させる。

ボールを持ったら、まずは縦にボールを入れてベルナルデスキ、キエーザを走らせる。特にキエーザのスピードはヨーロッパでもトップクラスだ。活用しない手はない。縦が無理なら、ボールを保持する。その時はボヌッチ、デリフトに加えてサンドロも3バック気味に残って、その前にロカテッリを置く。この4人プラスシュチェスニーでボールを回しながらボールを前進させる。チェルシーがハイプレスに出たら、前線の選手も中盤まで下りてきてサポートする。それでもボール保持が難しいなら迷わずロングボールを蹴る。ショートカウンターを喰らわないように徹底したリスク管理を行う。

試合開始当初のアッレグリのプランはこんなところだったのではないか。


チェルシーのプラン

チェルシーのスタメンは、メンディ、アスピリクエタ、クリステンセン、チアゴ・シウバ、リュディガー、マルコス・アロンソ、ジョルジーニョ、コバチッチ、ハヴァーツ、ジエク、ルカク。5-2-3をベースに攻撃時はWBが高い位置まで進出して幅を取り、ポジショナルな攻撃を仕掛ける。ジエクとハヴァーツはハーフスペースを起点に動き回ってマークを撹乱し、コバチッチがさらに前線まで飛び出して攻撃に厚みを加える。チェルシーがボールを保持し、かつユベントスが引いてくることがほぼ間違いない状況で、ベルナーは選択肢に入らなかったはずだ。

ボールを失ったら即時奪回を狙ってハイプレスをかける。ボールに近い選手から順番にマンマークで嵌めていく。相手のボール保持に対しては、アンカーのロカテッリをハヴァーツかジエクが抑えつつルカクと余ったもう1人のシャドーの選手がCBまでプレスに出る。その際、ボールをどちらかのサイドに誘導するために片側サイドのサイドバックへのパスコースを遮断しつつプレスに出る。そして、誘導したサイドのサイドバックには同サイドのWBを上げてマークにつき、逆サイドの選手は捨てる。そうすることで最終ラインで数的優位を確保しつつ、その他のところはマンマークでついて潰してしまう。

ボール保持による攻撃で敵陣まで押し込み、カウンタープレスとハイプレスをベースにそのままユベントス陣内でゲームを進める。その上で3CBを後方に残してユベントスのカウンターにも目を光らせる。

アッレグリのプラン変更

試合開始早々、ユベントスはチェルシーにボールを自陣深くまで運ばれ、両サイドからほぼフリーでクロスを上げられる。ロカテッリを含めて中を固めてあったため何とか難を逃れるが、アッレグリの修正は素早かった。

まずは6分過ぎ。コーナーキックからルカクが左足でグラウンダーのシュートを打った場面の後、クアドラードとキエーザを入れ替えている。それまで、クリステンセンを起点にパスを回されてボールを運ばれたことに起因していると考えられる。ズバリ、キエーザの守備に難があると見たのだろう。実際、キエーザはクリステンセンにプレスに行くがインサイドの切り返しでアッサリとかわされてドリブルでボールを運ばれている。さらには今度は引きすぎて全くマークにつけない場面もあり、クリステンセンはフリーでボールを捌いている。これはアカンということでクアドラードとキエーザの位置を入れ替えてみるが、今度はリュディガーを起点にやっぱりボールを運ばれてしまう。おそらく、この辺りでアッレグリは当初のプランを捨てたはずだ。

10分。自陣でダニーロがファウルを受けたとき、「フェデ!!」と大声でベルナルデスキとキエーザに指示。その後、ベルナルデスキはCBまでプレスに行かずにジョルジーニョを消すように動くようになる。この時点でCBへのプレスを放棄してジョルジーニョを消すプランへの変更を決断したのだろう。11分、ロカテッリがファウルを受けて試合が止まるとベルナルデスキにサムズアップ。ベルナルデスキがプラン変更に従って動いたことに対して「それでいい」とフィードバックしている。

そして13分。ボールが外に出た際におそらくロカテッリに向かって右手で「4」のサイン。ロカテッリがアンカーを外れて中盤のラインに参加し、4-4-1-1へとシステムが変更された。そしてジョルジーニョを主にベルナルデスキがマンマーク気味について試合から追い出し、CBへのハイプレスは放棄。自陣に構えての守備を徹底してチェルシーを迎え撃つようになる。さらにクアドラードはアロンソが深くまで侵入してきた時には守備ラインまで下りて右WBのように振る舞って擬似的に5バック化することで5レーンを埋めるチェルシーの攻撃に対抗。コバチッチの攻撃参加にはCHがついていって6バックになることも厭わない。ディフェンシブサードでは徹底して守備ブロックに穴を作らない守備で試合を落ち着かせることに成功した。

この後は攻めるチェルシー、守るユベントスといった構図がハッキリしたが、決定機はむしろユベントスの方に訪れた。ハーフウェーライン付近でコバチッチの不用意なバックパスを掻っ攫ったキエーザによる単独のロングカウンターがその際たるものだ。チェルシーは前半10分過ぎまでのユベントスの守備がうまくいっていない間に点をとっておけたら楽に試合を進められただろう。だがそうはならなかった。前線の守備はうまくいかなかったとしても、ボヌッチ、デリフトに加えてロカテッリをアンカーに残しておいたアッレグリの保険が効いていたということだろう。前半10分以降はユベントスがチェルシーにボールを持たせて守備で試合を支配した。

なお、チェルシーもロカテッリを消しにかかっていた。しかし、ダニーロを残した3バック気味のユベントスに対して2人の数的不利のままのハイプレスは機能していたとは言い難い。その数的優位によって、ユベントスも比較的自陣でボールを保持できていたこともユベントスが試合をコントロールする一因になったことは付け加えておきたい。

後半① 〜「捨てる」ポイントの違い

後半、チェルシーはアロンソに替えてチルウェルを投入。左WB同士の交代だが、チルウェルはアロンソよりもドリブルに長けている選手だ。サイドからのハイクロスはルカクといえどボヌッチ、デリフトを中心としたユベントスの守備相手では得点に繋がりにくいと判断したのではないか。クロスを上げる前に一工夫するための人選だったように思う。後述するが、ハイプレスにも手を入れてユベントスにより圧力をかけるプランも授けていた。

しかし、試合は思わぬ展開を見せる。キックオフからボヌッチが左サイドにロングボールを蹴るとアスピリクエタと競り合ったラビオがヘディングでライン間に侵入したベルナルデスキに落とす。ベルナルデスキは胸トラップから反転、左足でボールをコントロールするや左足アウトサイドでディフェンスライン裏に走り込むキエーザにスルーパス。キエーザがリュディガーのスライディングより先にニアサイドを抜いてゴールを決めた。アスピリクエタとラビオの高さのミスマッチを突いたユベントスが企図したサインプレーだが、こうもうまく行くとはアッレグリも、プレーしていた選手すら思っていなかったのではないだろうか。この時にアッレグリは渋い顔をして何か考えているようだった。どのように試合を進めていくか、今後の展開に合わせて複数のプランを頭の中でシュミレーションしていたはずだ。

思わぬパンチをもらってしまったチェルシー。とはいえ、後半開始10秒の失点だ。ハーフタイムで確認したプラン通りに試合を進めていくしかない。トゥヘルは得点をとって勝ち切るためのプランをチームに授けていたはずで、その通りに動けば少なくとも同点には追いつける。時間も50分近く残っている。流石はヨーロッパ王者。焦るような様子は見せず、淡々とプレーを再開した姿には凄みを感じた。

チェルシーはハイプレスのやり方を変更。ボール保持ではダニーロを残してデリフト、ボヌッチと3バック気味に構えるユベントスに対して3トップをユベントスの3バックにぶつける。ロカテッリにはジョルジーニョをあげて対応。下がってくるラビオやベンタンクールにはコバチッチ、CBを上げてマークにつかせる。敵陣深くまでマンマークでついてユベントスから時間とスペースを奪って認知・判断をアバウトにさせて素早いボールを奪回を狙う。そして、WBはそれぞれクアドラードとサンドロにボールが出たら素早く寄せられる距離をキープしつつ、前線へロングボールが蹴られたらディフェンスラインに参加してカバーに入れる中間ポジションをとる。サイドへのパス、前線へのロングボールへ両対応しつつ後方の数的優位を確実に維持する。

チェルシーは積極的にハイプレスに出る一方で、巧みにどちらかのサイドのユベントスの選手を「捨てる」ことで後方の数的優位を確保していた。この辺りの匙加減が絶妙だ。それを実現できるチェルシーの選手たちと、チームに徹底させられるトゥヘルの手腕には感服するしかない。

この守備によってチェルシーのボールを保持する時間がさらに増したように思う。攻撃の際も3CBの位置をより高く設定して攻撃でも圧力を強めてきた。しかし、ユベントスの守備を崩すまでには至らない。

それは何故か。

ユベントスもまた、ジョルジーニョより後ろのスペース及び選手を「捨てている」からだ。3CBとジョルジーニョに対してキエーザとベルナルデスキが守備に当たる。つまり、GKを除くチェルシーの残り6人に対してユベントスは8人のフィールドプレーヤーで守れることになる。2人分の数的優位を確保しているため、チェルシーの攻撃を受け切ることができる。チェルシーとしてはCBの攻撃参加など攻撃の人数を増やしたいが、絶対的なスピードを持つキエーザの存在がそれを許さない。ベルナルデスキもカウンターの起点になる選手で、ジョルジーニョをマークしつつ、ポジティブトランジションの際はスッとジョルジーニョより高い位置に顔を出してくる。結果としてボールを奪ってはいるが、CBの前でボールを受けて前を向いてくるベルナルデスキはチェルシーの守備陣からすると無視はできない存在だったはずだ。となると、チェルシーとしてはカウンターのケアのために3CBを後方に残しておかなければならない。2失点目は避けなければならないからだ。

結局、チェルシーの圧力を強めたハイプレスによってさらにチェルシーが押し込む展開になるが、ユベントスが分厚い守備で跳ね返し、試合は膠着状態が続いた。

後半② 〜トゥヘルとアッレグリの応手

そして、トゥヘルが動く。62分に3枚替えを敢行。ジエク、ジョルジーニョ、アスピリクエタを下げ、ハドソン・オドイ、ロフタスチーク、チャロバーを投入。チャロバー、ロフタスチーク、コバチッチを3CHとして、5-3-2へ変更。ハドソン・オドイは右WBに置かれた。5-3-2で守る時間が多くなっているユベントスに対して中盤を厚くすることでユベントスの中盤を中央に引きつけ、交代で入った両WBに仕掛けさせたかったのではないだろうか。また、攻守において狙われたジョルジーニョを下げることでユベントスの守備プランへの揺さぶりをかける意図もあっただろう。特にハドソン・オドイはクロスの質、ドリブルの仕掛けで右からチャンスを演出しており、トゥヘルの狙いも一定程度機能したように思う。

しかし、ユベントスは動じない。ベルナルデスキに代えてクルゼフスキを投入して、中盤3枚の前に配置。アンカーポジションに入ったチャロバーを監視しつつチェルシーのボール回しをサイドに誘導して5-3ブロックの中にボールを入れさせない。チェルシーはユベントスの守備ブロックの外でのボール回しを強いられ、なかなか効果的な攻撃をすることができなかった。

75分にはクリステンセンに代えてバークリーを投入して交代カードを使い切った。チャロバーを右CBに下げ、アンカーをコバチッチに任せる。バークリーを左CHに置いて攻撃的なキャラクターの選手を多く起用した。バークリーは左からのスルーパスでルカクの決定機を演出したが、見せ場はあまりなかった。

ユベントスはラビオ、キエーザを下げ、マッケニーとケーンを投入。疲れが見える選手を替え、守備の強度の維持に努める。ただ、交代するごとに戦術理解が低い選手が出てくるのがユベントスの苦しいところ。特にケーンの守備はかなり怪しいもので、最後の最後でやらかしてくれている。

83分にベンタンクールに代えてキエッリーニを投入。5-4-1へと移行して1点を守り切る態勢を整える。炎のストッパーといったところか。終盤に出てきてボール保持を強化して試合を締めていたバルサ最後のシーズンのシャビを思い出した。キエッリーニを投入して試合を締めにくるのはいかにもユベントスらしい。

しかし、セットプレーからチェルシーがチャンスを作る。ハヴァーツが2度、ゴール前でヘディングシュートを放つがいずれもゴール上に外れた。特にラストプレーとなったコーナーキックからのヘディングは決まっていてもおかしくなかった。その前にケーンの中へのパスコースを切れない不味いポジショニングから右サイドを崩して取ったコーナーキックだったこともあって、チェルシーにとってはいい流れが来ていたように思う。それでもフリーになったハドソン・オドイのクロスをストップして雄叫びを上げていたのはキエッリーニだったわけだが…。

後半はさらにチェルシーが押し込んで試合を進めたが、結果的にはユベントスが0-1で逃げ切った。

総括

ユベントスは望外の先制点を得て守り切った。作り出したチャンスの質で言えば互角の戦いだったように思う。そもそもお互いにユベントスが守り、チェルシーが攻めるという構図は了解済みで臨んだ試合だった。

ユベントスが提示したのは、チェルシーから勝ち点を奪う方法だった。チェルシーにボールを持たせてカウンター狙いは悪くないプランだということだ。前節のゼニトはルカクの一発にやられてしまったが、ルカクを封じ込めることができれば最低でも勝ち点1は計算できる。ボヌッチとデリフトはそれをやってのけた。しかも、ホームで平気で守備重視の戦術を採用してくるあたり、いかにもアッレグリのユベントスらしい太々しさを感じる。いよいよ、ユベントスの守備の文化が復活してきているように思う。
また、キエーザのスピードはヨーロッパでも脅威になることが証明された。モラタ、ディバラが帰ってきた時、キエーザをどう活用するか、新たな課題に挑戦しなければならない。これは嬉しい悩みと言えるだろう。ただし、この試合でもわずか開始5分でアッレグリが諦めたようにキエーザの守備はまだ発展途上だ。キエーザを起用するなら攻守のバランスをどのように保つかはかなりの難題になりそうだ。

一方のチェルシー。カンテ、マウント、ジェームズという主力の欠場が響いてしまった。特にこの展開なら積極的にライン間でボールを受けるマウントの不在は痛かった。堅い守備からカウンターを狙うプランで無類の強さを発揮することは昨季以来証明されている。今度はボールを持たされた時に勝ち切れるか?カウンター型のチームがぶつかる壁に挑むことになる。

次に両チームがぶつかるのは第5節。今度はチェルシーのホーム、スタンフォードブリッジだ。ユベントスは躊躇いもなく守備を固めてくるだろう。チェルシーがどう挑むのか?もしくはアッレグリが奇策を打ってくるのか?再戦が楽しみである。


最後に、ロフタスチークについて。

昨季フラムを追いかけていた身としては、ロフタスチークがUCLの舞台に立っていることに深い感動を覚えた。降格の憂き目にあったフラムからレンタルバックで欧州最高の舞台に立っている。不思議な感覚だった。

ロフタスチークはフィジカルとテクニックを両立させた選手であるというところに特徴があると思っている。一方、ボールを持ちすぎる傾向があり、判断という点については今後改善すべき点が多い。トゥヘルはおそらく、ライン間でボールを受けてそのフィジカルでキープしてマークを引きつけ、ユベントスの守備陣形を混乱させる狙いでロフタスチークをピッチに送り出したのではないかと推測する。しかし、ユベントスの守備ブロックは恐ろしくコンパクトでロフタスチークが入り込むスペースはなかった。ブロックの外でボールを受ける機会がほとんどで、ロフタスチークのドリブルがユベントスに守備陣形を整えてスライドする時間を与えてしまっていた。トゥヘルの狙いが実行できたのは、最後の最後でケーンがポジショニングを誤ってくれたシーンだけだった。その時にはライン間でボールを受け、ドリブルでサンドロを引きつけてハドソン・オドイをフリーにできた。

ボールを持ちすぎる傾向があるロフタスチークは後方に構えてビルドアップに参加するタスクには向いていない。ボール回しに時間がかかってしまい、その時間が相手の守備を整える時間になってしまうからだ。しかし、ボールを受ける側なら話は別だ。前線でボールを受け、奪われなければマークを引きつけて周りの選手に時間とスペースをプレゼントできる。しかも、足元のテクニックもありながらフィジカルに優れて高さも兼備しているという珍しいタイプの選手だ。トゥヘルはマウントやハヴァーツと競わせる、もしくは使い分けるつもりなのではないだろうか。ロフタスチークはどちらかというとチャンスメイクする側の選手だ。ルカクという絶対的ストライカーがいることはプラスになるはずだ。フィジカルとテクニックを活かしてライン間でボールを受け、キープして捌く。もしかしたら、チェルシーで活躍するロフタスチークの姿がもっと見られるかもしれない。

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