セリエA 第28節 ユベントス vs スペツィア 〜ジェネラル・ロカテッリ
下位のスペツィアに辛勝。特に後半はスペツィアのハイプレスに押し込まれてしまって何もできなかったと言ってもいいでしょう。しかし、ロカテッリがさらにステージを上げたプレーを見せ始めています。この試合を見た感想を残しておきます。
ロカテッリの覚醒
ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、クアドラード、ダニーロ、デリフト、ルガーニ、ペッレグリーニ、ロカテッリ、アルトゥール、ラビオ、ブラホビッチ、モラタ。5-3-2が基本的な布陣となり、攻撃時にはWBが高い位置まで上がって幅を取る。前半はスペツィアを押し込んでユベントスがボールを保持して攻撃を続けることができた。
その中でロカテッリが素晴らしいプレーを見せつけてくれた。ここ最近は、中盤にケガ人が続出していることからアルトゥールと同時に先発起用され続けている。アルトゥールのアンカー起用に伴って、ロカテッリはインサイドハーフとしてプレーしている。前半戦よりも高い位置で「ボールを受ける」プレーを求められている。前半戦でロカテッリが見せていたのは、後方のビルドアップに参加しながら、中央からサイドの深い位置へ送るロングパスやパス回しの中から不意にワンタッチで繰り出す鋭い縦パスで局面を変える、いわば「ボールを出す」プレーだった。しかし、最近ではライン間にポジションを取って、後方からのボールを受けて崩しのフェーズに関与することが多くなっている。しかも、ポジションをとるタイミング、ボールを受ける体の向きやステップ、ボールを扱う技術、味方にスペースを与えるオフザボールの動きなど、攻撃的なプレーが凄みを増してきている。
スペツィアは4-4-2をベースに守備をしてきた。ライン間を効果的に使うことが4-4-2の守備ブロックを崩す重要なファクターとなる。ロカテッリはアルトゥールと連携しながら、基本的には前に上がってライン間にポジションをとり、相手中盤の守備ラインの選手の間に顔を出して後方からのパスコースを常に確保していた。例えば、クアドラードが右サイドをドリブルで突破して送ったマイナスのクロスをアルトゥールがシュートしたが、あろうことかロカテッリがブロックしてしまったシーン。ルガーニからライン間でボールを受けてスペツィアの選手を引きつけ、クアドラードに1vs1を仕掛ける時間とスペースを提供したのはロカテッリだった。他にも、ブラホビッチには届かなかったが、ライン間でボールを受けて浮き球のスルーパスを出すなど、ユベントスが今季なかなか実現できなかったライン間を使った攻撃を一手に引き受けていた。
ただ、ロカテッリにもさらに改善していくべき点はある。ミドルシュートの精度とインサイドハーフとしての守備だ。ライン間でボールを受けてからのパスの精度、選択は素晴らしい。ここにミドルシュートという選択肢が入ってくるとさらに危険な選手になる。また、後半ギャシがニアサイドから抜け出してシュチェスニーがシュートを防いだシーン。ロカテッリが右サイドの守備に出て、ロカテッリの後ろに潜り込んだ選手へと斜めのパスが通ったところから始まっている。マークを受け渡しながら3、4歩下がったポジションを取っていれば、ロカテッリがパスカットできたはずだ。アンカーの位置でディフェンスラインの前をプロテクトするポジショニングや体を張った守備は身につけている。中盤の守備ラインの一員として振る舞って、1試合を通して相手にチャンスを与えないこと。これができるようになれば、中盤のどの位置でもプレーできるユベントスの中盤に君臨する選手になれるだろう。
もともとロカテッリはフィジカルに優れた選手ではない。技術と頭で今の地位まで昇り詰めてきたのだろう。フィジカルはいずれ衰えていくが、技術と戦術理解を武器にする選手は長くプレーできる。息の長い選手になってほしい。
ブラホビッチがディフェンスラインを押し下げ、広がったライン間をロカテッリが使う。さらにモラタもライン間を狙う。クアドラードとペッレグリーニが幅を取ってくれていれば、中と外を使い分けた魅力的な攻撃を展開できるだろう。おそらく、この攻撃は再現可能だろう。問題はサンドロとディバラを使った時にどうなるか。サンドロはペッレグリーニと同じくらい上がってくるのか。ディバラに与えるタスクをどうするのか…。
ハイプレスに対抗せよ
後半はスペツィアが猛烈なハイプレスをかけてきたことでボール保持が安定せず、スペツィアが試合を支配した。ギャシを上げて3トップ気味にして前からマンツーマンでハメてきた。ベルナルデスキを入れて4バックに変更してプレスの噛み合わせを外そうと試みたが、あまり効果的ではなかったかも知れない。
前からマンツーマンでハイプレスにくる相手に対して、中盤から前の選手が下がって受けるだけでは、勢いよく前に出てくる相手の選手に捕まってしまう。ワンタッチで相手の裏をかいてターンしたり、反転して裏を狙ったり、ダイレクトパスでプレスをいなしてボールを受け直したりすることでプレスを外していかなければならない。しかし、ユベントスはプレスをかけられているCBとその他の選手の意思疎通がうまくいっていないように思う。背中からプレスをかけられている選手に預けた後、その選手からボールを受けるためのポジションにつく選手がいないことが多い。個人でプレスを剥がせる選手がいないなら、複数の選手がパス交換しながらコンビネーションでプレスを回避する方法を用意しておく必要があるだろう。
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