セリエA 第32節 カリアリ vs ユベントス 〜ペッレグリーニとクアドラード
カリアリとのアウェーゲームは先制を許しながらもシュートを撃ち続けたユベントスが2-1で逆転勝利。この試合を見て思ったことを書き残しておきます。
雑感
ユベントスのスタメンは、シュチェスニー、ダニーロ、デリフト、キエッリーニ、ペッレグリーニ、クアドラード、ザカリア、アルトゥール、ラビオ、ディバラ、ブラホビッチ。4-4-2と5-3-2の可変守備と3-1-5+ディバラのポジショナルな攻撃だ。
カリアリが5-3-2をベースにプレーしていたので、3-1のユベントスのビルドアップ隊は常に数的優位を保ってボール保持ができた。そのため、ユベントスはボールの前進に苦労することはなかった。ペッレグリーニの攻撃性能はやはり高く、左サイドの高い位置まで上がってカリアリの右WBを低い位置に押し留めることに成功した。クアドラードも右サイドでガンガン仕掛けていたので、カリアリは両サイドにボールを送ることができなかった。しかもブラホビッチだけでなくペッレグリーニまでペナルティエリアに侵入を試みる上、ディバラが下がるのを我慢してライン間にポジションをとることが多かった。ディフェンスラインは下がり、ライン間を閉めるために3センターも低い位置に下げられたカリアリは、デリフト、キエッリーニ、ダニーロ相手に2トップが単独で勝負しなければならないという無理ゲーを強いられた。見た感じジョアン・ペドロもパヴォレッティもフィジカルに秀でたタイプではない。対人守備に長けたデリフト、キエッリーニを相手にするのは相当キツかっただろう。こうして終始ユベントスが押し込んで試合が進んだ。しかし、完全に引いたカリアリを崩すのは容易ではなく、ミドルシュートかセットプレーからのシュートばかりだった。クロスを上げようにもペナルティエリアにはブラホビッチしかいない現象は改善できなかった。ザカリアやラビオがペナルティエリアに飛び込んでいけば引いた相手に対してもクロスが有効になると思うが…。例えば65分、クアドラードがペナルティエリアに侵入したシーン。ブラホビッチがディフェンスを引き連れて駆け上がった後ろのスペースにパスが出たが流れてしまった。ラビオが走り込んでいれば得点できていたであろうシーンだった。
ただ、アルトゥールが前に出て行く頻度が増していた。ドリブルで中盤のラインを越えたり、オフザボールの動きでブラホビッチを追い越したりと前線に顔を出していた。ザカリアの守備力を考えてもアルトゥールが前に出るのは理に適っており、ロカテッリが戻ってきた時にも、互いにバランスを取りながら攻撃参加できれば前に人数が足らなくなることは少なくなるだろう。アルトゥールのプレーバリエーションが増えたことは嬉しい限りだ。
苦労はしたが、セットプレーの流れからクアドラードがドリブル突破からペナルティエリアに侵入してデリフトに素晴らしいアシスト。さらにダニーロと入れ替わって低い位置でボールを受けたクアドラードからライン間に顔を出したディバラに縦パスが通って前を向いたディバラからブラホビッチにスルーパス。右に左に大車輪の活躍だったクアドラードのチャンスメイクから2点取ることができた。ディバラもライン間でボールを受ける機会が増え、チャンスに絡んでいた。そしてなんだかんだでシュートに持ち込み、決めてしまうあたりは流石はブラホビッチといったところか。
失点のシーンは、ボール保持の場面で中盤まで下がってきたディバラがボールロストしたところからスタートしたショートカウンターだった。不用意に下がってボールを受けて強めのプレスを受けてボールを失ってカウンター発動を呼び込んでしまう。ディバラの悪いところが全部出てしまったようなシーンだった。まあ、しょうがないだろうし、ジョアン・ペドロのシュートも素晴らしかった。
ペッレグリーニについて
ペッレグリーニの攻撃性能はゲームの質を変えてしまうだけのインパクトがある。ペッレグリーニが出た試合では、軒並みユベントスが押し込んで試合を進める時間が多くなっている。左サイドで高い位置を取り、ドリブル、クロスで相手の右サイドの選手を守備のために下げさせることができる。結果として相手はサイドを起点にカウンターを打つことが難しくなり、ユベントスがカウンターをストップしてボール保持を継続する可能性が高くなり、ユベントスが相手を押し込む時間が増える。ラビオが攻撃時も下がり気味のポジションを取るなら、なおのことペッレグリーニを使ってガンガン攻撃参加させればモラタもペナルティエリアに入る機会が増えるだろう。一方、守備については改善の余地がある。簡単にボールを取りに行ってかわされたりするなど軽い守備が散見される。ここはアッレグリの指導によって守備の改善を促してほしい。
確かに今季、ペッレグリーニは主に格下のチーム相手に起用されることが多かった。そのことも相まって押し込んだ試合が多かったのは間違いない。しかし、ミランやインテルを相手に起用してみても面白い人材だと思う。少なくとも、守備を軽んじるようなプレーはしていない。我慢強くチャンスを与えて守備を向上させれば、高い攻撃性能を備えたワールドクラスのSBになれる逸材だと思う。絶対に手放してはならない選手の1人だし、成長させてほしい選手である。ユベントスの今後のスケジュールを考えれば、セリエAでは強豪との試合は残されていない。どの試合も警戒すべきではあるが、ユベントスが守備をする時間が長くなる可能性があるのはラツィオとフィオレンティーナくらいだろう。ペッレグリーニの起用が増えることを期待している。
クアドラードのタイミング
クアドラードが右サイドでボールを持ち、クロスを上げられるだろうというタイミングでブラホビッチがディフェンスの裏を目がけて走り込んだシーン。クアドラードは速いクロスをGKとディフェンスの間に放てばチャンスになると思った。実際にはクアドラードは切り返してクロスを上げなかった。自然な流れならクロスを上げても良かったと思う。もしかしたらブラホビッチが先に触って得点に繋がったかもしれない。ただ、プレーしているのは選手だ。クアドラードは敢えてクロスを上げずにブラホビッチが走り込んだ後のスペースを使おうとしたのだろうと思う。クアドラードは観戦している人間からしたらクロスを上げるだろうと思うタイミングでクロスを上げないことがある。どこを見て、どんな意図でプレーを選択しているのか、誰かインタビューで訊いてくれないものだろうか。