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UCL Matchday2 ユベントスはなぜ逆転できたのか?

今更ながら、ユベントスとライプツィヒの試合を簡単に振り返っておきたいと思います。

vs 4-4-2

ユベントスのスタメンはディグレゴリオ、サボーナ、ブレーメル、カルル、カンビアーゾ、ファジョーリ、マッケニー、ニコ・ゴンザレス、コープマイナース、ユルディズ、ブラホビッチ。4-2-3-1と表記して問題ない配置だと思います。対するライプツィヒは4-4-2をベースに守備をしつつ、シャビ・シモンズを中心にテクニックを備えた選手がテンポ良くボールを動かして縦に速く攻撃を仕掛けるスタイル。積極的にハイプレスもかけてきて、高い位置でのボール奪取も試みていました。

しかし、ユベントスは4-4-2を貫くライプツィヒに対して明確な解答を用意していました。コープマイナースも中盤に参加して4-3の7枚によるビルドアップです。ウイングが高い位置を取ってライプツィヒのSBを引きつけ、ハイプレスをかけに来る4-2の6枚に対して7枚でビルドアップを行うという数的優位を確保できました。特にアンカーの位置に入ったファジョーリは6人の真ん中に位置することになるため、マークにつきにくくフリーの場面が多くなりました。ライプツィヒの選手たちはハイプレスへと走るコースを調整して背後のファジョーリを消そうとしていました。しかし、マークにつくべき目の前の選手と背後のファジョーリを同一視することはできません。ファジョーリはボールホルダーにプレスに行く選手が自分を見ていない時間にその選手が走っているコースから外れるように横に動くことでパスラインを確保してフリーでボールを受け取っていました。ボールホルダーとなった選手もマークに来る選手を近くまで引き付けて、ファジョーリがパスラインを確保する時間を作っていました。数的優位を確保しつつ、ハイプレスに出ながら背後を見られない点をついたパス回しはモッタ監督による指導とファジョーリのクオリティの高さによるものでしょう。ライプツィヒもユベントスのCBやSBがボールを持っているところにプレスをかけに行って追い詰めているようにも見えましたが、悉くファジョーリが横や斜めに走ってパスを引き取ってハイプレスを剥がしてしまいました。

そして、ユベントスが1人少なくなってからもライプツィヒが4-4-2を維持したハイプレスを変化させませんでした。そのため、後方でユベントスが数的優位を確保し、アンカーポジションに入ったファジョーリがフリーになるというこの構造は継続することになりました。2-1とリードされ、1人少なくなったユベントスがボールを保持して前に出ることができた要因はここにあります。

ファジョーリを経由してボールを前進させた後は、コープマイナース、マッケニーに加えてSBも前線に駆け上がって、3-2-5や3-1-6と表記できるような配置へと変化して数的優位を確保した上で攻撃を仕掛けるという4バック対策のお手本ともいうべき攻撃を展開。得点にこそ結びつかず、カウンターから失点するという前半でしたが、試合自体はユベントスの狙い通り進んでいたように思います。実際、ファジョーリ→マッケニー→コープマイナースと繋いでポストを叩いたり、アウトサイドを駆け上がってフリーになったカンビアーゾからのクロスでブラホビッチが同点ゴールを決めたようにユベントスの攻撃はうまく回っていました。

ディグレゴリオの退場

そして、この試合を動かす決定的なエピソードが起こります。ディグレゴリオの退場です。ハイプレスに出たところをライプツィヒに華麗にワンタッチパスを繋がれてハイプレスを剥がされ、手薄になった守備を切り裂かれました。ペナルティエリアを飛び出して対応したディグレゴリオがハンドで1発レッド。キーパーと1vs1の状況だったので、レッドカードの判断は致し方ないところです。そしてそのFKでドウグラス・ルイスがハンドを取られてPK。2-1とリードを許す展開になりました。ただ、モッタがマッケニーをSBに回し、ドウグラス・ルイスを入れる交代をしたことで、上記のビルドアップ時に7vs6の数的優位を維持できました。このことによって、1人少なくなったとはいえボールを保持できたことはとても大きかったと思います。

さらにユベントスが1人少ない状況でも果敢にハイプレスに出たことがライプツィヒを困惑させたように見えました。1人少ない状況でハイプレスに出れば、後ろの人数が足りなくなってしまいます。通常であれば、そんな戦術は採らないでしょう。ライプツィヒの選手もそう考えていたのではないでしょうか。ユベントスは後方に構えて守備をしてくるだろうと予測していたとしたら、大きなリスクを背負ってハイプレスに出たユベントスに面食らったとしても不思議はありません。単純にロングボールを前線に送り込んでしまえば最低でも数的同数、状況次第では数的優位で攻撃を仕掛けられます。しかし、ライプツィヒはショートパスを繋いできました。そして、ユベントスのハイプレスにハマってしまいました。自陣左サイドで繋ごうとしたところをユベントスに掻っ攫われてブラホビッチ得意のペナルティエリア外右45度からシュートを撃たせてしまいました。ユベントス側から見ると、ライプツィヒがユベントスのハイプレスに戸惑っている時間帯に最高の形でブラホビッチにボールが溢れたことはラッキーだったと言えます。

その後はライプツィヒもユベントスのハイプレスに対応して数的優位を活かして何度となくユベントス陣内のペナルティエリアまで攻め込みますが、ポストに弾かれたり、ギリギリのところでユベントスの守備が踏ん張って得点には至りませんでした。そして、ライプツィヒのカウンターをマッケニーがスライディングで止め、返す刀でカルルが持ち上がってコンセイソンが逆転ゴールを決めました。ただ、ライプツィヒとしては簡単にコンセイソンをペナルティエリアに入れてしまっていて、守備が緩んでしまったのかもしれません。

逆にリードしてからはライプツィヒの猛攻を受けましたが、アッレグリ時代を彷彿とさせる自陣深くで構えて守ってギリギリのところで失点を防ぎ続けて3-2で試合は終了しました。この時間帯のガッティにはバルザーリもしくはキエッリーニが乗り移っているように見えました。身体を張ってボールを跳ね返し続けながら、チームメイトを鼓舞する姿は、ユベントスのディフェンスリーダーの姿そのものでした。

相性の問題?

総括すると、ユベントスが完璧な4-4-2対策となるビルドアップを構築していたこと、1人少ない状況でもモッタのフットボールを曲げなかったこと。コレに尽きると思います。

一方のライプツィヒ側に立つと、せめてユベントスに退場者が出てからはハイプレスのやり方を変えてファジョーリにもマンマークに着くなり、ユベントスのハイプレスに対してロングボールを蹴るなり違ったやり方ができれば、試合の展開も結果も違ったかもしれません。いわゆるプランBがあれば、2-1のまま試合を終わらせる、もしくはさらに得点を重ねて勝ち切ることもできた可能性は大いにあると思います。ただ、ライプツィヒというクラブの歴史を考えると、若い選手を中心に4-4-2をベースにしたハイプレスと縦に速い攻撃を徹底する点にこそクラブとしてのスタイルがあるように見えます。そうだとすると、ロングボールを蹴ったり、4-4-2ハイプレスとは異なる守備を行うことは難しかったでしょう。別の言い方をすると、退場者を出してもボール保持・ハイプレスを崩さなかったユベントスに対して的確な変化によってトドメを刺すことは、ライプツィヒというチームのスタイルからはできず、ユベントスはその間隙を突いて逆転できたと言えるのかもしれません。つまりは、モッタのスタイルを貫くことに全てを賭けたユベントスからしたらライプツィヒは相性が良かったということになるのではないでしょうか。

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