UCL FINAL 〜マドリーの貫禄勝ち
ELの決勝はパーカーのフラムで奮戦していたルックマンがまさかのハットトリックをぶちかまして今季世界を席巻したアロンソのレバークーゼンを撃破。とにかく「あの」ルックマンが大舞台で躍動している姿に思わず涙してしまい、それ以上のことは書けないため、CL決勝の方を書いておきます。
セミファイナルのデジャヴ
率直な感想は、準決勝マドリーvsバイエルンの1stレグ後半を90分に引き延ばした感じの試合でした。後半からボランチを削って5レーンを埋める攻撃を展開し、マドリーの4-4-2に対してライン間を活用して得点したバイエルン。4-5-1へと変化してライン間を閉めて受け切ってカウンターを仕掛けたマドリー。セミファイナル1stレグの後半で見られた戦術的な駆け引きを90分を通して行い、バイエルンと違って得点できなかったドルトムントに対してマドリーがセットプレーで決着をつけた試合でした。
ドルトムントはまるでバイエルン(トゥヘル)が示したマドリーの4-4-2対策をそのままトレースするような形で前半はマドリーを圧倒しました。4-3-3をベースに3トップと2CHが5レーンを埋め、4バックとジャンが数的優位を確保してボールを保持。マートセンのいわゆる偽サイドバック戦術も駆使して後方でポゼッションを確立して押し込み、ライン間や裏のスペースを狙ったロングレンジのパスで次々とチャンスを作り出しました。特にアデイェミのスピードは段違いでフンメルスのスルーパスに抜け出し、はたまたカルバハルに走り勝ち、2度決定機に絡んでいました。しかし、ここでゴールを決められないのは、ブンデスリーガ5位のチームだからなのか…。バイエルンと違ってリードする展開を作れなかったことが悔やまれます。
マドリーの油断
ハッキリ言ってマドリーがドルトムントをナメていた部分はあると思います。ヴィニシウス、ロドリゴ、ベリンガムの守備強度の低さ。前線でプレスがかかっていないにも関わらず維持されたハイライン。テキトーにやってても大丈夫だろうという緩んだ雰囲気が出ていたように思います。まあ、ブンデスリーガ5位のチームが相手ですから、その雰囲気もわからなくはないですが…。実際、アンチェロッティはハーフタイムで選手に怒ってしまったとコメントしていました。ドルトムントはこの前半にゴールを決めておかなければいけなかったでしょう。試合後、クロースが「僕たちに勝つならゴールを決めないとね」と言っていたようですが、まさしくその通りです。
一応、ドルトムントがゴールを決められなかったことについて戦術的な分析をしておくと、マドリーから2点を取ったバイエルンと比較してウイングの利き足が挙げられます。バイエルンは利き足と逆サイドにウイングを配置していました。具体的には左利きのザネを右サイドに、右利きのムシアラを左サイドに配置。ザネはフリーでボールを受けてカットインから左足を振り抜いてゴールを決めています。アデイェミの位置にサンチョ、もしくはロイスがいれば、もしかしたらシュートの角度も広がってクルトワを破れていたかもしれません。ただ、アデイェミのスピードによる優位性があってこその決定機ですので、今回の準優勝をバネにしてアデイェミの今後の成長に期待というしかないでしょう。
ロイスとクロース
ドルトムントが勝つには、先行逃げ切りか、PKまでもつれ込ませるしかなかったと思います。その意味で、前半のプランが予想以上にハマった時にゴールを取りたかった。この試合を最後に退団するロイスをどこで使うかがドルトムントにとって最も重要なファクターになると思っていました。後半早い時間からアデイェミと交代で入ってきましたが、その時にはマドリーが4-5-1へと変化し、ドルトムントのペースは封じられてしまっていました。ロイスの見せ場はセットプレーのキックくらいしかなく、最後の舞台としては寂しい限りのプレーになってしまいました。マドリーの出方もわからなかったため、攻守に走れるアデイェミを先発で使うのはよくわかります。ただ、やっぱりドルトムントのペースで進んだ前半にロイスのプレーを見たかったと思ってしまいます。結果論でしかありませんが、ドルトムントは前半のプランに自信があったのなら、ロイスを先発させてみても面白かったかもしれません。
一方のクロースも、ザビッツァーの前に出る守備に手こずり消えている時間が長かったように思います。しかし、セットプレーでは性格無比なキックを邪魔されることはなく、フリーキックやコーナーキックでチャンスを演出。カルバハルの決勝点をアシストしてマドリーでのラストゲームを締め括りました。
2004のユーロでロシツキーのプレーに魅せられ、ヨーロッパのフットボールに魅了されるようになった身としては、ロシツキーに憧れ、ドルトムントに全てを捧げたロイスにどうしても肩入れしてしまいます。
ウイングとセンターハーフとポジションの違いがあり、より高いアスリート能力を求められるウイングとしてプレーするロイスのプレータイムが短くなることは仕方ありません。しかし、クロースと同じだけのプレータイムがロイスにも与えられていたら…?前半のドルトムントでロイスのプレーが見られていたら…?
そんなことを思った今年のチャンピオンズリーグファイナルでした。